ショートショート「夜行性の黒板消し」※毎週ショートショートnote5/10お題
夜の静けさがそのまま降りてきたような少年だった。
細く白い身体を、モノトーンコーデで包んでいる。
星の明かりも見えない夜半の公園でベンチに座って、何も返さない夜を静かに見上げている。
「こんばんは」
私がため息混じりに声をかけると、少年はゆっくりと顔をこちらに向ける。
「ああ、お巡りさん。こんばんは」
少年はあどけない笑みを浮かべる。
目は笑っていない。
「君はほんとに夜行性だね」
「夜が好きなんですよ」
私も並んでベンチに腰掛ける。
「趣味とかないの?」
「うーん。学校で黒板消し係なんですけど、鏡面のように仕上げるのは好きですよ」
「変わってるね」
「そう?黒板て、完全な黒じゃなくて、深い緑をたたえていたり。とても表情豊かで美しいんですよ。夜みたい」
少年は目を輝かせて語る。
私は空を仰ぐ。
たしかに、闇色の中にも濃淡が感じられた。
「そうかもね。…そろそろ帰ろうか。今日こそ、汚れたままの黒板を綺麗にしよう」
「…」
少年の頬が強張る。
私の手も震えているだろう。
その、白い肌に痣が残る手を引いて、目の前の、窓ガラスが割れた家へと向かった。
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