ショートショート「読書手術」 ※毎週ショートショートnote 8/24お題
「俺は、世界を救う勇者だ!」
「へー、そうなんですねー。すごいですねー。はい、麻酔しますねー」
暴れる患者をバンドで押さえつけ、呼吸器を無理矢理付けて麻酔する。
メスで開胸し、脈打つ心臓の横に、本の形の腫瘍を見つけ、慎重に切り出す。
近年、突如として世界に広がった『読書病』。
読書した者の一部が、その世界観から抜け出せなくなり、生活に支障をきたす奇病。
私としては、現実を見られない馬鹿な輩が罹るものだと思っているが。
患者は、心臓付近に本の形をした腫瘍ができる。
この腫瘍を摘出することで治療できることが分かった。
私は、医師として、『読書手術』と名付けたこの手術を確立させ、世界に治療法を広めた。
今週だけで、担当した患者は数十人を超えた。
私の噂を聞きつけて、病院に患者が殺到している。
ゴッドハンドとして、マスコミも持て囃すようになった。
しばらく家に帰れていないが、これも医師の宿命だ。
患者を救うため、私は今日も執刀する。
「だから私は、こんなところで寝ているわけにはいかないのだ。離したまえ」
「へー、そうなんですねー。そんな小説が流行ってますよねー。はい、麻酔していきますねー」
私の意識は、そこで途切れた。
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