ショートショート「節分の半分は優しさでできています」※毎週ショートショートnote2/1お題
きっと君は、底抜けのお人好しだったんだろうね。
誰もが嫌がる鬼役を、自ら引き受けて。
加減が分からない男子達から、傍目にも痛い豆を投げつけられて。
いや、あれは豆という名の悪意だったんだと、今なら分かるよ。
悪意に晒されながら、それでも君は笑っていた。
『君達の想いは、僕が受け止めて、外に運んでいくよ』
君の、晴れ渡る空のような笑顔を、私は今でも覚えている。
その悪意が、自分以外の誰かに向けられることに耐えられない君は、本当に全てを受け止めて、笑いながら寒空に駆けていった。
何で、今になって、そのことを思い出すのだろう。
パラパラパラと、私にとって悪意の象徴だった音が、瓦礫と炎の中に響いている。
この国は、あと少しで滅びる。
こんな思い出なんて、死に瀕した今では、何の役にも立たない。
「生きることを、諦めないで」
何で君は、私の手を引いて僅かな希望に縋るのか。
「生きていれば、福はきっとやってくるから」
そう言って君は、あの日と同じように、私に向けられた悪意を受け止めて、私を逃がしてくれた。
涙で見えない道なき道を、私はただ走った。
こちらの企画に参加させていただきました。
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