見出し画像

ショートショート「メルトダウンする伯爵」 ※毎週ショートショートnote10/12お題


 私は、最初から吸血鬼だったわけではない。
 人であったときの記憶は、数千年の月日の中で、霧の中に掻き消えた。

 夜の街を見下ろし、獲物を探す。
 美しい女性を、吟味して頂くことにしている。
 きっかけは思い出せないが、それは私の美学だった。
 「!!」
 選んだのは、数km先にあるマンションの一室。
 跳躍し、音速に迫る速度で飛び、ベランダに到達する。
 そこに、ブロンドを腰まで伸ばした、豊満な裸の女性がいた。
 「失礼、お嬢さん。あなたを今宵の一皿に」
 女性は目を見開き、恐怖の声を上げようと口を開いた。

 「何だ。ドラキュラ伯爵ではないか。久しいな」
 その声に、私は心臓を鷲掴みにされた。
 「ああ………ああ!あなたは!」
 私は歓喜に震えた。
 魂が覚えていた。
 このお方を見たその時、全てが始まった。
 女性が妖艶な笑みを浮かべ、私の顎に手を伸ばす。
 「ふふ。そうか。そんなに私に」
 そして、女性の鋭い牙が、私の喉元に喰らいついた。
 涙が溢れ、喜びに打ち震える。
 視界が赤く染まる。
 このお方と一つになって、熱く、溶けていく。
 魂が、融解していく。







→こちらの企画に参加させてもらいました。


いいなと思ったら応援しよう!

蜃気楼 お気持ちをいただければ、より頑張ります!

この記事が参加している募集