ショートショート「急性カーテンコール中毒」 ※毎週ショートショートnote10/5お題
今日も舞台の幕が降りる。
クライマックスの興奮冷めやらぬ中、万雷の拍手で役者が退場する。
しかし、その後、鳴りやまぬ拍手とアンコールに役者が呼び戻される。
いわゆるカーテンコール。
この瞬間こそ、私の至福の時だ。
私は、役者でも、エキストラでもない。
ただの観客だ。
だが、役者にも演出にも、舞台監督にすらもできないことを、私は仕事にしている。
役者を舞台に引き戻す。
舞台を簡単に終わらせない。
それが私の誇りだ。
無粋だと、そう断ずる観客もいるだろう。
実際に、何度も「もう終わらせてやってくれ」などと懇願された。
だけど、そんなものは私には関係ない。
「残念ですが、力及ばず、終幕です」
首を振る舞台監督。
泣き崩れる観客達。
ああ、また私の悪い癖が出る。
「私なら、ここから彼を呼び戻すことができる」
これも一種の病気かもしれない。
「馬鹿な…手の施しようがないだろう」
私は、舞台の終わりなど見たくもないのだ。
「私は、必ず役者を舞台に連れ戻す。彼をオペ室へ!」
幕が降りた舞台に、医療の奇跡という名のカーテンコール。
私は、役者が息を吹き返す瞬間がたまらなく好きだ。
舞台の余韻に浸る家族を、驚愕させる瞬間が好きだ。
もはやこれは、カーテンコール中毒とも呼べるかもしれない。
↓こちらの企画に参加させて頂きました。今回特に難しかった。
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