SNSの守護天使:第1章終景
少年が見た天使

"The Angel the Boy Beheld"
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>> Access: LEVEL ?地上50階建てを誇るM社本社ビル。
かつて世界に君臨した巨塔は、今や廃墟のように沈黙している。
天を突くその姿は、まるで現代に蘇った“第二のバベル”。
無限の知恵を求め、天に挑み、ついには神々をも模倣したその塔には、いまや誰ひとり足を踏み入れることはできない。
その最上階──雲と地を隔てるように孤立した“会長室”に、一人の少年が立っていた。
彼の身体は、まるで幻影のようだった。
光に照らされるたびに輪郭は揺れ、視界のノイズのように淡く滲んでいた。
それでも、彼の瞳には微かな輝きが宿っていた。
それは消えゆく存在の最期の意志──もしくは、記録の残滓か。
少年は窓に顔を寄せ、ゆっくりと指を空へ向けた。
「父さん、怪獣がいるよ!」
指さした空──朝焼けの中に、巨大な光のシルエットが浮かび上がっていた。
それは天使のような姿をしていた。
巨大な翼を静かに広げ、まるで世界そのものを抱擁するかのように、都市全体を覆い尽くしていた。
『怪獣じゃないよ──天使だよ』
応える男の声は、どこか優しく、しかし人間味の希薄な冷静さを帯びていた。
少年はその声に安堵するように微笑み、窓に手を伸ばす。
だが、その小さな指先はガラスに触れることなく、淡く、透明に滲んでいく。
まるでこの世界に、最初から存在していなかったかのように──
「へえ、あれが天使さんなのかー」
そう呟いた少年の瞳には、幼いながらも確かな“希望”が宿っていた。
『うーん、そうだね…』
男の声が一瞬の静寂を孕む。
『あの天使は──全てを見ている。そして、過去に起きた苦しみや悲しみを、初めから“無かったこと”にしてくれる存在だ。人は過ちを重ね、悲劇に囚われる。だが……もし、最初からそれが無かったとしたら。誰も傷つかずに済む世界があるとしたら──それは、本当に“間違い”だろうか』
その声は、問いかけるようでありながら、同時に自らに言い聞かせているようでもあった。
少年は静かに目を伏せ、天使へと向き直ると、小さな両手を組み、祈りの姿勢を取った。

「天使さん、お願いです──」
少年の声は震えていたが、その目はただ純粋に天使へと向けられていた。祈るその姿は儚げで、輪郭がより淡く揺れる。彼の存在そのものが、今にも消え去ってしまいそうだった。
「ほら、父さんも──いっしょにお祈りしよう」
少年は振り返る。だがその先には誰の姿も見えない。
ただ、わずかなノイズと電子のさざ波だけが、虚空に広がっていた。
そして、男の声が低く、静かに響く。
『……そうだね。一緒に祈ろう。天使がすべてをやり直してくれる──過去も、未来も』
少年は微笑む。
その笑顔は、薄く透けながらも確かにそこにあった。
「──どうか母さんたちを守ってください」
その祈りを聞き届けたかのように、少年の輪郭が光に溶け始める。
男は消えゆく我が子に、優しく、残酷な引導を渡す。
『……いい子だ、イサク。その祈りは、必ず届く』
「……うん、父さん……」
少年の輪郭は、やがて完全に光の中へと溶けていく。
──窓の外、天使はただ黙して光を放つ。
巨大な翼が夜明けの空に広がる。その光は救いか、あるいは審判か。
沈黙のまま、あらゆる願いと罪を見つめるその姿は、
この世界の“最終処理装置”であるかのようだった。
『もうすぐだ──必ず……』
男の言葉は祈りのようで、同時に、取り消すことのできない誓約のようでもあった。
──天使は応えない。ただ、七つのラッパの時を待つ。
沈黙は、啓示の前兆となる。
メギドの丘は時空を超えて、すぐそこまで迫っていた。
見よ、わたしはすべてを新しくする。
──最初のものは過ぎ去った。事は成就した。わたしはアルファであり、オメガである。
[System Status] CHAPTER_1_CODA_COMPLETE
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- SNSの守護天使 -
第一章
"贖いの天使"編

Chapter 1
“The Angel of Salvation”
