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2026.4.5.泣きながら見た樋口和貞選手の引退セレモニーのこと

 DDTプロレスリングの樋口和貞選手が、昨日、引退した。
 引退セレモニーが行われた後楽園ホール大会に、行くことは出来なかった。
 けれど、レッスルユニバースの配信で、リアルタイムで見届けた。

 第一試合前のダークマッチから、良い試合の連続。
 でも大会が進むにつれて、辛くなった。
 メインの試合を見たいのに、試合が始まってほしくない気持ち。
 試合も、試合前のVTRも、ものすごく楽しみ。だけど、始まったら、見てしまったら、終わってしまう。それが辛くて、苦しかった。


 試合前のVTRのナレーションは、この日の放送席ゲストの稲田徹さんだった。
 稲田さんの声を聴くと、ひらがなまっするが思い出されて。
 カッコ良くて強いのに、楽しい試合もたくさんあったことが、思い出されて。
 VTRの中で、ハリマオの面々がそれぞれに樋口さんへの思いを語っていた。
 樋口さん自身の言葉は、無かった。それがまた、樋口さんらしいと思った。

 入場。
 樋口さんの表情は、穏やかだった。菩薩像みたいだ、と思った。

 「樋口さん、大事な試合の時のガウンだ。」

 旗揚げの時からずっとDDTファンの夫が、ぽつりとつぶやいた。
 あとはもう、夫婦揃って、ほとんど泣きながら配信を見ていた。
 セコンドとして、身体を張って観客を守る樋口さん。
 自分に向けられたカメラに「試合を撮れ」と促す樋口さん。
 出場している6人全員にチョップを叩きこむ時に一瞬見せた、はにかんだような笑顔。
 最後、すべてを託すように、石田さんの手を握った時のまなざし。


 試合前のVTRで、樋口さんを泣かせると言っていたハリマオの3人が、試合後、顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
 樋口さんに、涙は無かった。


 試合終了後、バックステージに下がることなく、引退セレモニー。
 Tシャツを脱いだ樋口さんの姿があまりにも今までどおりで、だからこそ、悔しかった。
 でも、樋口さんの表情は、最後までずっと穏やかだった。
 ハリマオの面々。
 同期入団の選手たち。
 激闘を繰り広げてきた他団体の選手。
 DDTの仲間。そしてDDT所属だけれど今は別のリングでの戦いの中にいる、遠藤選手や竹下選手。
 ゆかりのある選手からの花束贈呈と、匿名希望の先輩からの手紙の後、リングに上がったのは、樋口さんがハリマオ結成前に所属していたユニット「Eruption(イラプション)」の仲間だった。
 引退後DDTのスタッフとなり、この日のゲスト解説もつとめていた、赤井沙希さん。
 同じく引退し、引退後はプロレス界とは距離を置くと言って一度も表に出ることの無かった、坂口征夫さん。
 そして、岡谷英樹選手。


 この場面で、号泣。
 嗚咽、ってホントにこうなるんだ、って自分でも引くくらい泣いた。
 私にティッシュを渡してくれた夫も、ぼろぼろ泣いていた。



 イラプションの4人がいなかったら、私は、こんなにもDDTのファンになってはいなかったかもしれない。
 そのくらい、この4選手の存在は、大きかった、
 過去の歴史とか各選手の経歴とか何も知らなくても、試合に引き込まれた。とにかくカッコ良くて、また見たいと思わせてくれた。それが、イラプションだった。


 テンカウントの後の全員での記念撮影には、青木真也選手の姿もあった。
 いつもなら、自分の試合が終わると眼鏡を光らせて自転車で走り去るはずの青木選手が、樋口選手の引退を見届けるために、最後まで後楽園ホールに残っていた。
 そして、どんなビッグマッチでも試合後の記念撮影やVTRに決して参加することのないヒールユニット・ダムネーションT.Aのポーさんやイルシオンが、最後の記念撮影でリングに上がってきた。
 樋口さんという存在が、どんなに特別で、どんなに大きなものだったか。
 最後の記念撮影にも、現れていた。


 最後のあいさつの中で、樋口さんは「リングに上がるすべてのレスラーに声援を送ってあげてください」と言った。
 DDTだけでなく、すべてのレスラーに、というところが、樋口さんらしいと思った。
 そして、髙山善廣さん、高梨将弘さんへのメッセージ。
 笑顔。


 樋口さんが愛したプロレスを、私はこれからも、応援し続けようと思う。
 応援することを楽しみながら、髙山さんや高梨さんが戻ってくる日を、待ち続けようと思う。



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