【#創作大賞感想】木原雅彦さん『漂流家族』:指先で躍る絵コンテ
漫画を読むとき、僕たちは何を動かしているだろうか?
普通ならコマからコマへ視線を動かす。
ページをめくり、既に紙面上に存在している次の場面へ進みます。
では、アニメならどうだろう?
木原雅彦さんの『漂流家族』は、その疑問に少しだけ答えてくれるような作品です。
本作は絵コンテを思わせるカットを、noteの記事上に縦に並べた作品です。
読者が画面をスクロールすると、過去のカットは上へ消え、画面下に隠れていた次のカットが少しずつ姿を現します。
ゆっくり動かせば溜めになる。
素早く送れば場面が加速する。
指を止めれば映像も止まり、上に戻せば巻き戻せる。
つまりこれは、完成した時間を受け取る動画ではありません。
読者がスクロールした分だけ時間が生まれる、手動再生型の記事です。
縦スクロール漫画自体は珍しくありません。
しかし、本作には「絵コンテ」という形式ならではの特別感があります。
絵コンテは通常、完成作品として観客に見せるものではなく、映像を作るための中間工程です。
その為、簡略化された人物や粗い線や動作を示す文章も、単なる未完成ではなく「完成映像へ向かう設計図」に見えてきます。
更に、カットを囲む太い黒枠が、漫画のコマというより映画フィルムの一コマを思わせます。
絵そのものは素朴であっても枠の内側に入ることで、何か大きな映像作品から切り出された画面のように感じられる。
作品そのものも、実に素晴らしいです。
名探偵じゃない方のコナン風の絵柄とデザインのキャラやメカが、ガチャガチャと動き回り、眺めるだけでも楽しい。
特に僕は木原さんの丸っこく、それでいてミリタリーなメカデザインに惚れました。
ストーリーも、毎話きちんと次の謎を残しながら、最後には「漂流していた二人」を、文字どおりの「漂流家族」へ着地させながら、軽妙なギャグの奥で謎の少女、二つの捜索隊、互いに身分を隠した男女という情報が、少しずつ開示される王道の物語です。
肩の力を抜いて楽しめて、タイトル回収もスッキリ綺麗✨
一つの良質なストーリーを軸にして、実際には描かれていない完成映像まで、読者が脳内で補えてしまう面白さ。
noteの「スクロールする」という日常的な操作を、絵コンテを動かすための再生機構に変えたこと。
本作の魅力は、そんなところにあります。
四コマ漫画では、コマ間を視線が跳ぶ。
この作品では、コマ間を指が運ぶ。
物語の内容だけでなく、自分の手がどのように時間を作っているのか。
その感覚に意識を向けながら読んでみてください。
これは「読む」というよりも、「自分の指で回す」一本のフィルムです。
