市場へ行こう!――対面で買うからこそ、持ち帰れるものがある――
平日の朝。
ふと思い立ち、仕事を始める前に自転車で地元の市場へ向かった。
朝六時。
市場はすでに動き始めていた。
八百屋には朝露をまとった小松菜。
真っ赤なトマト。
泥のついた長ネギ。
魚屋には、その朝水揚げされた魚が氷の上に並び、威勢のいい声が飛び交っている。
スーパーとは違う。
市場には、市場の朝があった。
八百屋で小松菜を手に取る。
「それ、今朝入ったばかりだよ。」
店のおばちゃんが声をかけてくれた。
「茎が柔らかいから、おひたしがおすすめ。」
たったそれだけの会話なのに、その小松菜がおいしそうに見えてくる。
値段だけならスーパーと大きく変わらない。
それでも、この人から買いたいと思った。
市場をひと回りしたあと、市場食堂へ向かった。
朝七時前だというのに、店の前にはすでに行列ができている。
市場で働く人。
仕入れを終えた料理人。
近所の常連さん。
私は列の最後尾に並んだ。
効率だけ考えれば、並ぶ必要などない。
コンビニへ行けばすぐ食べられる。
宅配もある。
通販ミールもある。
食材なら宅配スーパーが家まで届けてくれる。
今の時代、人と話をしなくても、一日くらい何不自由なく暮らせてしまう。
それでも私は、ここへ来た。
ようやく順番が来て、海鮮丼を受け取る。
新鮮な魚は、期待どおりのおいしさだった。
でも、一番満たされたのは、お腹ではなかった。
市場を歩き、
店の人とひと言ふた言交わし、
行列に並び、
同じ朝を過ごす人たちの空気を感じる。
そんな時間そのものが、心を満たしてくれた。
私は普段、在宅で仕事をしている。
AIと対話し、
画面を見つめ、
一人で仕事を進める時間も嫌いではない。
便利な時代になったと思う。
でも、その便利さだけで暮らしていると、知らないうちに世界が小さくなってしまう気がする。
市場へ行かなければ、
「今日はこれが甘いよ。」
という一言は聞けなかった。
市場食堂へ並ばなければ、あの活気も味わえなかった。
家でクリックしているだけでは、得られなかった朝だった。
自ら動く。
自ら足を運ぶ。
ほんの少し手間をかける。
その先には、効率では測れない豊かさが待っている。
人生も、きっと同じなのだろう。
待っているだけでは、新しい景色には出会えない。
一歩踏み出した人だけが、思いがけない出会いや発見を持ち帰ることができる。
市場で買ったのは、小松菜やトマトだけではなかった。
また明日から少し頑張ろう。
そんな気持ちも、一緒に持ち帰ってきた。
今日の持ち帰り
自ら動いてこそ、得られるものがある。
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【60代から始めたもう一つの挑戦】
人生再点火の一環として、小説創作にも取り組んでいます。
現在、TALESにて童話を公開中です。
noteとは少し違う世界ですが、こちらも私の大切な創作活動です。
興味をお持ちいただけたら、ぜひご覧ください。
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