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人生設計を少し前倒ししてみた――老後の楽しみを先に始める――

休日の午後だった。

机の引き出しを整理していると、一冊の古い手帳が出てきた。ページをめくると、二十年近く前に書いた人生設計が残っている。

そこには実に立派な計画が並んでいた。できるかぎり長く会社で働き、年金をできるだけ多く受給し、退職後はその差額で生活を楽しむ――そんな優等生的な人生設計である。

なるほど。当時の私はなかなか真面目だったらしい。計画としては決して悪くないし、多くの人が目指す堅実な人生そのものだった。

ただ最近、その設計図を見ながら思うことがある。

本当にその順番でなければいけないのだろうか。

最近の私は、noteを書き、AIと会話し、音楽を作り、YouTubeに公開している。収益化にも挑戦しているが、今のところ見事なまでにゼロ円である。

本来なら退職後に始めるはずだったことを、なぜか今やっている。

人生設計はどこへ行ったのだろう。

そう思って少し笑ってしまった。

もちろん仕事が嫌になったわけではない。現職にも感謝しているし、長年働いてきたからこそ今の生活がある。

今すぐ仕事を辞めるつもりもない。具体的な時期が決まっているわけでもない。

ただ以前ほど、

「できるだけ長く働かなければならない」

とも思わなくなった。

本当にそこまで待つ必要があるのだろうか。

そんな疑問が頭をよぎるようになったのである。

若い頃の私は、時間は無限にあると思っていた。六十代など遥か先の話だったし、やりたいことは退職後にまとめてやればいいと考えていた。

ところが実際に六十代になってみると、時間の流れは驚くほど速い。

気が付けば一年が終わる。

気が付けば桜が散る。

気が付けばまた年末である。

人生は思っていた以上に短い。

だからと言って悲観しているわけではない。むしろ逆で、限りがあるからこそ面白いと思うようになった。

もし健康でいられる期間があと二十年しかないとしたら。

もし元気に旅行できる期間があと十五年しかないとしたら。

もし創作を楽しめる期間があと十年しかないとしたら。

それをすべて退職後まで先送りする理由は何だろう。

そう考えるようになった。

もちろん年金は大切だ。長年働いてきたのだから、受け取れるものは受け取りたい。

だが最近思うのである。

私は年金のために生きているのだろうか。

満額受給や受給額の上積みという数字に縛られ、人生そのものを後回しにしてはいないだろうか。

人生設計は本来、人生を自由にするためのものだったはずだ。

ところが気が付くと、その設計図に自分自身が縛られている。

それは少し違う気がした。

だから私は最近、人生設計そのものを見直し始めている。

仕事を辞める時期はまだ決めていない。だが創作や学び、誰かの役に立つ活動は、退職後まで取っておかなくてもいいのではないかと思うようになった。

人生は思ったより短い。

ならば、やりたいことを少しだけ前倒ししてもいいのではないか。

そんなことを考えるようになっている。

以前の人生設計は、

仕事。

仕事。

仕事。

そして退職後に趣味。

そんなイメージだった。

今は少し違う。

仕事をしながら創作をする。

学びながら発信をする。

誰かの役に立ちながら、自分も楽しむ。

仕事と人生をきれいに分けるのではなく、少しずつ混ぜていく。

そんな生き方もあるのではないかと思い始めている。

その小さな変化は、意外に大きかった。

毎日が少し面白くなったのである。

noteの記事を考え、AIと新しい遊び方を試し、曲を作り、動画を公開する。反応を見ては失敗し、また試してみる。

もちろん収益化への道のりはまだ遠い。

それでも以前より毎日が面白い。

考えてみると、人生を少しだけ自分の手に取り戻した感覚があるのかもしれない。

会社員として生きる。

それはもちろん大切な人生だ。

だが、それだけが人生ではない。

創作する自分もいる。

学ぶ自分もいる。

誰かに何かを伝えたい自分もいる。

その部分を老後まで眠らせておく必要はなかったのだ。

最近、同世代の人たちと話していると、

「退職したらやろうと思っている」

という言葉をよく聞く。

旅行。

写真。

絵画。

音楽。

執筆。

ボランティア。

どれも素敵な話だと思う。

だが私は最近こう思う。

退職後まで待たなくてもいいのではないか。

全部でなくてもいい。

少しだけ始めてみればいい。

月に一回でもいい。

週に一時間でもいい。

その時間は案外、人生を豊かにしてくれる。

私自身がそうだった。

本来なら退職後に始めるはずだったことを、少しだけ前倒ししてみた。

いや、正確に言えば、前倒ししようと考え始めたのである。

その結果として収益はまだゼロである。

だが人生は少し面白くなった。

だからこの人生設計の見直しは、案外悪くないのかもしれない。

六十代になって思う。

人生設計は、一度決めたら変えてはいけないものではない。

むしろ人生そのものが変わるのだから、設計図だって書き直していい。

そしてその設計図は、自分を縛るためではなく、自分を自由にするためにある。

私は最近、そんなことを考えている。

老後の楽しみを、少しだけ先に始める。

それは思っていたより、悪くない選択なのかもしれない。

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