野球解析で用いる物理モデル(揚力/マグヌス力編)+火の玉ストレートの実現性
自己紹介+注意事項
初めまして、Gozaと申します。
神戸大学に通う学部新4年生で、専攻は物理学です。大学の講義で学んだ
"流体力学"と呼ばれるものに興味を持ちまして、自由研究として
野球の投球シミュレーターの開発やボールの研究を行っています。
note初心者であり、数式をうまく入れられないので一度overleafでコンパイルしたものをスクショして載せます。
野球経験はほぼなく、ど素人なので技術・感覚的なことはわかりません。
また、あくまでも独学で行っていますので下記で紹介する物理モデルや考察には粗さがあるということを前提とした上で、ご一読ください。
以下にこれまでのポートフォリオ(研究記録)を載せておきます。
noteで書いている物理モデルのイメージ図やそれらを実装した投球シミュレーターを導入しています。
野球ボールにかかる力について
野球ボールにかかる力について、現在4つの力で考えるのが主流になっています。
1:重力
おそらく最も有名な力の1つでしょう。ボールから地面に向かって働く力で、その値は不変です。義務教育でも習うような内容ですし、特にこれと言って語ることはありません。
2:空気抵抗力
最も有名な力その2。ボールの進行方向と逆向きに働く力であり、一般には速度の2乗に比例すると言われています。詳しくは別noteで
3:揚力(マグヌス力)
ボールの回転によって進行方向と垂直に働く力です。野球が好きな方は「マグヌス力」として馴染みがあるかもしれません。本noteでは揚力と呼びます。
藤川球児さんの「火の玉ストレート」に挙げられるようなストレートの浮き上がる力も揚力ですし、カーブやスライダーなど、回転している変化球であれば何でも揚力で基本説明がつきます。
4:縫い目の力(SSW)
野球ボールが完璧な球体でないことから及ぼされる力です。
通称Seam-Shifted-Wake(縫い目で後流が変化する現象)。
ナックルボールなど、回転数の少ない変化球で見られますが、導入が非常に難しいため無視しています。
揚力について考えよう
揚力の特性について
揚力は進行方向と垂直に働く力ですが、その方向は
回転軸と速度の外積で考えることができます。
回転軸は右手をうまく使えばわかります。例としてバックスピンをイメージしてみましょう。
バックスピンの下から上へ帰ってくるように右手の親指以外の指を巻いてみてください、自分からは右の手のひらが見えるはずです。その時、親指が右を向いていると思います。この親指の向きが回転軸です。
今度はその回転軸の方向を向くように右手をパーにして、その後進行方向に向かって親指以外の指を曲げます、その時、親指の向いている方向が外積の向きになります。
よってバックスピンでは上向き、トップスピンでは下向き、カーブは左、シュートは右に力が加わることがわかります。
このように揚力は回転軸が非常に重要になるわけですが、ボールの回転軸をなかなか特定するのが難しいので、全ての事象を考えることが難しくなっています。
よって、
私の研究では打球を評価する際に考える理想飛距離は基本的にバックスピン前提で考えています。
物理式を整理しよう
揚力やそれに関する物理式を立式します。
ここでは結果だけ書きますが、詳しい導出などはポートフォリオに書いてありますので、気になった方はご確認ください。

揚力:
揚力は空気の運動エネルギーとも言える動圧qを用いて表します。
空気抵抗と考え方は一緒です。

スピンパラメータ:
揚力で使われている揚力係数$${C_l}$$はスピンパラメータと呼ばれるもので記述されるのが基本となっています。
スピンパラメータはボールの回転速度が飛行速度に対してどれほど速いか?という指標であり、以下の通り定義されます。

$${C_l}$$のモデルを再現しよう(ver1.0)
1:文献のモデル
ここからはスピンパラメータを用いて$${C_l}$$の物理モデルを作っていきたいと思います。
ただし前述した通り、自分の力ではなかなか精度の高いものを作ることができないので、先人の素晴らしきモデルを再現することにします。
https://baseball.physics.illinois.edu/ajpfeb08.pdf

青線を再現すると、以下の通りになりそうです。

ただ、場合分けが必要な式を物理モデルに組み込むのは生理的に嫌な感じがしますし、後から改良加えようとしてもめんどくさいので、1つの式で表せられるようにします。

こっからは完全に感覚の話になりますが、青線をスピンパラメータの0.7乗で表せられるような気がしたので、0.7乗モデルで作ります。
2:$${C_{l0}}$$の特定
文献のグラフを参考に$${C_{l0}}$$の特定に入ります。ここも正直テキトーですが、例えば160km/hで揚力と重力が釣り合うラインを基準として$${C_{l}}$$を求めると、

図1を参考にすると、Sは0.29程度かなと推測できます。この結果から$${C_{l0}}$$を出すと、

こんな感じになりました、グラフで表すと以下のようになります。

テキトーに選んだにしては結構いい近似ができた気がしますね。
火の玉ストレートを投げるには?
最後に、せっかくなので火の玉ストレートを投げるための条件を考えます。
火の玉ストレートの条件は、上向きの力が下向きの力を上回る時、
つまり揚力が重力以上に大きな力である時とします。
前節で語った160km/hではどのくらいの回転数が必要か考えると、

3350rpmほどの回転数が必要になります。
しかも、ただ3350rpmのボールを投げるだけじゃなくて、それが綺麗なバックスピンであることが前提ですからね、ムリスギ。
チャップマンの最速が170km/hであり、その場合必要な回転数は3000rpm程度になるので、浮き上がるボールが見られるために最もあり得る未来としては、
チャップマン級に球が速いオーバースローの超本格派投手が生まれることですかね。
最後に揚力と重力が釣り合う場合の球速・回転数のグラフを置いておきます。

