髪を切る、という極上の自己演出について
好きな服を着る。お気に入りのアクセサリーを付ける。
丁寧にメイクをして、お気に入りの香水を一吹き纏う。
どれも素晴らしい「自分」の演出だ。
SNSにおいしそうなごはんの写真を投稿するのも、好きなアーティストのライブで音に揉まれるのも、趣味の時間を忘れて何かに没頭するのも、すべては「自分の手で自分の時間を作り上げている」という確かな実感に満ちている。
けれど、その無数の選択肢の中で・・・「髪を切る」という行為だけは、どこか決定的に異質で、強烈だ。
自分を素材にした「作品」の作り直し
服や香水は、いわば「外付けの装飾」だ。
いつでも脱げるし、洗い流せる。 しかし髪を切るというのは、自分自身の体の一部を削り落とし、再構築する作業に他ならない。
女性が長い髪をばっさり切ったとき、誰もが「何かあったのかな?」と心をざわつかせるように、髪の変化は自分にとっても、周囲にとっても、あまりに衝撃的だ。
もちろん、理由なんて「暑いから」「手入れが面倒だから」「なんとなく気分転換」で十分だ。それでも、髪というパーツは人の印象の大半を支配している。
顔のパーツが言葉以上にその人を語るように、髪型は周囲に与える印象を圧倒的に左右する。
明るい髪色を見れば自然とアクティブな人だと思い、
艶やかな黒髪には若々しさを見出し、
隙なく整えられた髪型には清潔感や誠実さを覚える。
髪型は、私たちが日常の中で最も自由に個性を表現できるキャンバスなのだ。
顔のパーツそのものを一新するにはかなりのハードルがあるし、メイクでいくらでも「変身」はできるけれど、髪ほどダイナミックに、かつ根本から印象を変えられるパーツは他にない。
髪は伸びる。
増えることもあれば、減ることもある。
絶えず変化し続ける体をどう整え、どう自分らしくデザインするのか?
そこには完全な個人の自由と、自己表現の美学がある。
もちろん、社会で生きる以上、職場や学校などの制限や TPO は付きまとう。
髪が与える印象を理解しているからこそ、環境に合わせたスタイルを選ぶのは大人としての必然でもある。
それでもなお、「髪を切る」という決断には、日常のすぐそばにある「変わりたい」「変えたい」という衝動をストレートに解放する快感が宿っている。
夏仕様の自分へ、新しい投資を
というわけで。
私もそろそろ、髪型を「夏仕様」にアップデートしようと思っている。
少し前まで愉しんでいたシルバーヘアは、切なくも美しい儚さで、あっという間に色落ちしてしまう。
もう十分堪能したから、ここらでガラッとイメチェンといこう。
落ちていく髪の毛と一緒に、自分の中に溜まっていた古い空気や昨日までの自分を床に散らばせていく、あの瞬間の爽快感。
「楽しさを自分の手で作る」というか、これは一種の心機一転のための投資だ。
ハサミの音とともに、新しい季節を迎える準備を始めようと思う。
どんな自分に生まれ変わるか、今から楽しみで仕方がない。

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