魚の骨1本で、母のCPUは停止する
夕飯で、
魚を出した日のこと。
子どもは、
魚が好きだ。
「おいし〜!」
って言いながら、
ぱくぱく食べる。
その姿を見ると、
嬉しい。
ちゃんと栄養あるもの、
食べさせたいなって思う。
だから私は、
骨も気をつけながら、
かなり注意して見ていた。
でもその日。
突然、
「いたい〜!!!」
って泣き出した。
喉に、
魚の骨が刺さったらしい。
私は一瞬で、
頭が真っ白になった。
「え、取れる?」
「病院?」
「時間外救急?」
「今すぐ行く?」
「呼吸は大丈夫?」
脳内タブ、
一気に100枚。
私は慌てて、
「どこ痛い!?」
って聞いた。
すると息子が、
「ちくんって…」
って言った。
その小さい言葉で、
逆にリアルさが増して、
さらに焦った。
本人は泣いてる。
私は口の中を見ようとする。
でも子どもって、
ちゃんと見せてくれない。
動く。
閉じる。
泣く。
嫌がる。
しかもこういう時に限って、
夜。
病院が閉まってる時間。
私はスマホで調べながら、
懐中電灯。
スプーン。
抱っこ。
検索。
説得。
全部同時進行。
頭の中ではずっと、
「時間外救急行く?」
「様子見でいい?」
「本当に大丈夫?」
が回り続けてた。
しかも私は、
かなり落ち込んだ。
魚の骨、
ちゃんと見てあげたつもりだったから。
でも思い返すと、
尾っぽ側だけじゃなく、
腹回りの身もあげていた。
「もっと注意できたかもしれない」
「ごめんね」
って気持ちでいっぱいになった。
育児って、
こういう
“事故になりきらない小さなヒヤリ”
が本当に多い。
そして毎回、
母親は猛烈に自分を責める。
たぶん、
子どもを大事に思ってるから。
結局、
しばらくして落ち着いて、
水も飲めて、
本人も普通にし始めた。
たぶん、
取れた。
でも私は、
そのあと一気に疲れた。
たかが魚の骨。
でも母親って、
“何か起きた瞬間”
一気に全責任が降ってくる。
判断。
観察。
対応。
検索。
メンタル維持。
全部。
しかも育児って、
こういう
“小さい緊急対応”
が本当に多い。
転ぶ。
熱出す。
吐く。
咳する。
骨刺さる。
そして毎回、
母のCPUがフル稼働する。
でも、
こういうのって、
外から見ると分からない。
魚の骨が刺さった。
それだけ。
でも母親側は、
その数十分で、
ものすごい量のエネルギーを使ってる。
育児って、
体力ももちろん使うけど、
一番削られるのは、
“脳”
かもしれない。
ずっと気を張ってる。
ずっと何かに備えてる。
しかも、
何も起きなかった日は、
誰にも気づかれない。
でも、
何も起きなかったのって、
実はかなり頑張って、
運営してた結果なのかもしれない。
その日私は、
寝静まったあと、
シンクに残った魚のお皿を見ながら、
「今日も無事でよかった…」
って、
静かに思った。
