なんでもない日記:痛みのない赤い斑点と、3ヶ月遅れで届く身体の通知
腕に広がった斑点と、予期せぬ微熱のような違和感
朝起きて何気なく腕に目をやったとき、見慣れない赤い斑点が幾重にも広がっていることに気づいた。痒みも痛みの感触もない。胸元、背中、太ももの内側から足の甲に至るまで、斑点は身体の表面を覆うように広がっていた。
指で軽く擦ると、そこだけじんわりと赤みを増す。理由の分からない変化を前にすると、見慣れたはずの自分の肉体が急に遠い存在のように感じられる。
近所の行きつけの皮膚科へ向かう道中、直前に立ち寄った美容室での会話が急に頭をよぎった。鏡越しに腕の異変に気づいた美容師が、髪を切る手を止めずにこう言っていたのだ。
「身体にこういう症状が出る時って、実は2ヶ月や3ヶ月前に大きな負担があったケースが多いんですよ」
その時は「そんな時間差があるものだろうか」と聞き流していた。人は何か問題が起きると、直前の原因ばかりを探してしまう。昨夜食べたものや、今朝の睡眠時間、ここ数日の出来事。
しかし、お盆休み真っ只中の混雑する皮膚科の待合室で、溢れかえる患者に囲まれながらパイプ椅子に腰掛けていると、その言葉がじわじわとリアリティを持ち始めた。
3ヶ月前の自分は、一体どんな生活を送っていただろうか。頭の中では「もう終わったこと」として処理したつもりでいた出来事を、肉体の方は忘れずに記憶し続けていたのかもしれない。
身体の反応は直後に出るものばかりではなく、時間が経過してから皮膚や髪といった場所に遅れて溢れ出してくることがある。
1時間半の待ち時間と、診察室での安堵
1時間半ほどの待ち時間を経てようやく名前が呼ばれ、診察室へ足を踏み入れた。医師は拡大鏡のような器具を手に取り、腕や脚の表面を丁寧に観察していく。
問診と視診の末に告げられた診断は「毛細血管からの微細な内出血」というものだった。危険な感染症やアレルギー反応ではなく、特別な処置を行わなくても自然に落ち着いていくという。
「普通に生活していて大丈夫ですよ」
そう告げられた瞬間、自分でも気づかないうちに全身へ入っていた力がすっと抜けていくのが分かった。深刻な事態ではないと知った安心感とともに、日常が再び元の手触りを取り戻していく。
普段、何事もなく動いているとき、私たちは自分の身体が休むことなく働き続けていることを忘れてしまいがちだ。今回皮膚に表出された反応は、身体からの異常警報というよりも、過去の負担を解消するための通過プロセスだったのかもしれない。
病院を出て外の空気を吸ったとき、いつもの街並みが少しだけ違って見えた。あなたの身体も今、数ヶ月前のあなたからの小さなサインを、皮膚のどこかに残してはいないだろうか。
