「ムダ」の「駄」のつくりは「犬」ではない!
更新日:2025/12/16
小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導からよく見かける、中高生の間違えやすい表記を紹介し、世の中高生・受験生に警鐘を鳴らすのが、このシリーズ【間違えやすい表記】。
今日は「ムダ(無駄)」の「駄」についてです。この「駄」という漢字のつくりを「犬」としてしまうケースを中高生の作文や小論文・志望理由書ではまま見かけます。これについて、今日はお話ししていきます。
このシリーズでは「『手書き』の際に誤りやすい表記」をご紹介しています。PCやスマホで「ムダ」と打ち込んで変換したら「無駄」しか出てこないので、こうした間違いはまずあり得ません。「ダ」と読む漢字に「馬へんに犬」という漢字は存在しないからです。しかし、手書きするととっさに間違えてしまう人がいるようです。もしかしたら、大人の方でも手書きの際にうっかり間違えるかもしれませんね。
この「ムダ」の「駄」ですが、これ一字で実は「馬」の意味があります。荷役で使う馬のことを「駄馬」というのですが、この「駄」自体が「駄馬」の意味です。また、そうして馬が荷を背負うことや背負って運ぶこと、およびその背負われた荷物という意味もこの「駄」にはあります。さらに、これは主に江戸時代の用法ですが、その馬一頭が背負える荷物の量を示す単位としても「駄」は使われました。
だ【駄】
[ 1 ] 〘 名詞 〙
① 馬が荷を負うこと。また、荷を負った馬。
② 運送用の馬。荷馬。駄馬。また、牝馬のこと。
③ 馬で荷物を運ぶこと。また、牛馬に負わせた荷物。
④ 馬一頭に負わせる荷物の量。概略の量をさして助数詞的に用いるが、江戸時代の一駄は、本馬(ほんま)が三六貫(約一三五キログラム)、軽尻(からじり)が一六貫(約六〇キログラム)と定められていた。
また、接頭語として使う場合は、「価値のない、つまらないもの」という意味になります。「駄作」などがそうです。
[ 2 ] 〘 造語要素 〙 名詞の上に付いて、ねうちのないつまらないもの、粗悪なもの、の意を表わす。「駄菓子」「駄作」「駄句」「駄弁」など。
「荷馬(駄馬)は乗馬に適さない下等な馬とされたため、駄菓子、駄物、駄洒落(だじゃれ)などとこの駄の字を名詞に冠して、値うちのないもの、つまらないものの意を表す。(日本大百科全書(ニッポニカ))」、つまり転化して「つまらない」という意味が派生したと言えます。
さて、ここで漢和辞典を見てみると、この「駄」の正字は「馱」、つまり馬へんに「大」だったことがわかります。形声文字なので、へんの「馬」が意味(形)、つくりの「大(タイ・ダイ)」が音(声)を表しています。馬に関する文字なので馬へんがついているのです。
もうここまで見てわかる通り、「駄」に「犬」の意味は少しもないことがわかります。したがって、「ムダ」の「駄」のつくりを「犬」とするのは誤りであることがこれでわかりますね。
手書きの際はご注意ください。「ムダ」の「駄」のつくりは「犬」ではありません。「太」です。
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