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2025年年間ベストセラーで見る日本の社会問題【小論文対策】

更新日:2025/12/25

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、作文・小論文・志望理由書作成における実践的な技法をレクチャーするのが、このシリーズ【文章作成の実践】。

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(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)


社会問題のトレンドを知ることで、今後小論文問題で出題されるテーマがわかる!

 先日、下の記事でもまとめたように、今日本で起きている社会問題のトレンドを知ることもまた、小論文学習に必要なことの一つです。そこで、下の記事ではこうしたテーマ学習の方法の一つとして、中学受験用教材である「重大ニュース」本の活用をおすすめしました。

 そして、今年もこの季節がやってきました。去年もやりましたが、出版物専門商社・取次会社の一つであるトーハンから年末に発表された「2025年年間ベストセラー」の新書-ノンフィクション部門ランキングから、今の日本の社会問題のトレンドを見てみようと思います。今年日本でどんな本が興味を持って買われ読まれたのかを見ていくことで、今年の日本の世相や時勢、今の日本の社会問題が見えてくるはずです。

(去年は30日にこの記事を出しましたが、今年は25日と少し早めのアップです。なお、去年のも参考になると思うので、こちらも参考にしてみてください。)

 年末の小論文対策の一環として、また年の瀬の今年の振り返りに、こちらの記事をお読みいただけると幸いです。

2025年年間ベストセラー〈新書-ノンフィクション部門〉(トーハン発表)から、今の日本の社会問題のトレンドを見てみる

 では、トーハンの調査による「2025年 年間ベストセラー」(集計期間=2024年11月20日~2025年11月18日)の内、新書-ノンフィクション部門のベスト10を見ながら、今年の日本の世相を見ていきます。

10位から4位まで一気に見る

 まずは10位から4位まで一気に見ていきましょう。それでは、カウントダウン!

10位 やりたいことは全部やりなさい 最後に後悔しない25のヒント 森永卓郎/著 (SBクリエイティブ)

9位 22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する 成田悠輔/著 (文藝春秋)

8位 新・古代史 グローバルヒストリーで迫る邪馬台国、ヤマト王権 NHKスペシャル取材班/著 (NHK出版)

7位 日ソ戦争 帝国日本最後の戦い 麻田雅文/著 (中央公論新社)

6位 世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ 齋藤ジン/著 (文藝春秋)

5位 生きる言葉 俵万智/著 (新潮社)

4位 なぜ働いていると本が読めなくなるのか 三宅香帆/著 (集英社)

 今年のランキングでまず目についたのは経済関連です。10位、9位、6位にランクイン。物価高騰の折、経済関連への注目が今年は高まったようです。10位は今年1月に癌で亡くなった経済アナリストの森永卓郎氏の著。タイトルから見るに言わば遺書的な一冊。最後の訪れを前に、「資本の奴隷として、金銭的な豊かさを追い求め続けても、ただ疲弊するばかりで、その先に幸せな人生はありません(「はじめに」より)」という境地に行き着いた経済評論家が「最後に後悔しない」生き方を説いた本。9位は、テレビでも「変なメガネと独特の雰囲気」でおなじみ経済学者・成田悠輔氏の本。この先の未来のお金や市場経済のあり方を予測します。「株価も仮想通貨も過去最高値を更新、生成AIの猛威が眼前に立ち現れ、かつてなく資本主義が加速する時代。お金や市場経済はどこへ向かうのか?(Amazon紹介文より)」、今までのお金に対する見方を変えることを著者は促します。6位は投資コンサルタントの齋藤ジン氏の著。今までの新自由主義の枠組みが崩壊する中ゲームチェンジが起きている、との前提の下で、日本復活のチャンスとなるこれからの世界のお金の動き方を示していきます。どの著者にも共通して言えること、それは今を今までの資本主義のあり方が大きく変容する時期としてとらえている点。そしてその上でお金や市場に対するパラダイムシフトを求めている点です。混迷する世界情勢の中で日本やわたしたちがどう経済的にサバイブするか、がここでは共通するテーマとなっています。

 8位と7位にランクインしたのは歴史関連です。歴史関連の本の売れ行きは、そのときの政治情勢に大きく左右されることがあります。これらはその典型。8位では、ご存じ邪馬台国の謎を起点として東アジアをグローバルな視野でとらえながら日本誕生の秘密に迫るというもの。日本の政治の世界での保守勢力の強まり、また台湾問題を軸にした日中間の政治的対立による東アジア情勢に対する興味の強まりなどが、こうした本の購買の後押しになっていることは言うまでもありません。「日本はそもそもどのようにして生まれたか?」、「古来日本とアジア情勢の関係はどうであったか?」という問いがここにはあります。同様に、7位の「日ソ戦争」への振り返りも、依然として終わることのないロシアのウクライナ侵攻や日ロの関係悪化によって興味が持たれていると言えます。何か国際政治上で問題が生じると人々は歴史を振り返り、そしてその問題の打開策を歴史から学び取ろうとします。ですから、来年、この分野では中国の歴史関連のものが売れるだろうと私は予測しています。

 一方で人文知に対する興味が強まったのも今年のトレンドの特徴と言えます。生成AIで簡単に文章を書きことばが紡げるようになった現在、改めて、「ことばの力とは何か」を問う風潮が出てきています。5位は『サラダ記念日』でおなじみ歌人でエッセイストの俵万智氏の著。様々なシーンを自由に横断しながらことばのあり方をポップに問います。Xでもお茶目なポストをしている俵さんらしい、フットワークの軽いカジュアルな「ことば」論です。そして人文知ブーム、「令和人文主義(このことばあまり好きではないですが)」の旗手と言えば、この人、文芸評論家の三宅香帆氏。今年は執筆だけでなくオールナイトニッポンのパーソナリティーを務めたりと大活躍でした。4位のこの本はそうしたブームの風潮を作る起爆剤となったのではないでしょうか。「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という命題は多くのビジネスマンに刺さりました。今までの「仕事と読書の関係」を近現代日本史に沿って解き明かしながら、「仕事と読書の適切なあり方」を示す本。教養主義とは角度が異なる、現実的な「仕事」論であり「読書」論です。ちなみにこの本が昨年の1位でした。

※こちらはkindle版

 さて、この後は一つずつ見ていきます。第3位から順に紹介していきます。

3位 人生の壁 養老孟司/著 (新潮社)

 ロングベストセラー『バカの壁(2003年刊行)』から始まる、おなじみ「~の壁」シリーズの最新刊。人間は生きている上で多くの壁に当たります。それを乗り越えていくのもまた人生。養老先生が生きていく中でのいろいろなシーンの壁を越える知恵を読者に授けます。

 ……ということですが、養老先生の雑多なエッセイ集と言えるような中身。教育論、文化論、政治論、そして「生き方」論。人生ということばでくくるには余りに多くのテーマを縦断しながら、養老節でそのテーマについて論じていくという内容です。Amazonのブックレビューも高評価。「自分のベストセラー記録を止めたものが自分の別のベストセラー著書だった」ことでも有名な養老先生。まだまだ「ベストセラー新書王健在」と言ったところでしょうか。当然、養老先生の今までの著作は、高校受験や大学受験の国語や作文・小論文の課題文でも多く採用されています。中高生はこの機会に是非養老先生の本を読んでみてください。「エライ先生」ですが意外とカジュアルで読みやすいですよ。

2位 ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで 鶴見太郎/著 (中央公論新社)

 8位、7位でもあった歴史関連の新書が2位でもランクイン。2023年パレスチナ・イスラエル戦争中の2023年10月27日、イスラエル国防軍がパレスチナ自治政府のガザ地区に軍事侵攻しました。いわゆるガザ侵攻です。そして依然としてガザ地区のパレスチナ人は厳しい状況に置かれています。国際政治の問題というと、日本では地理的に近い中国や北朝鮮、ロシアのことが話題に挙がることが多いのですが、実は世界的にはこちらの方が関心の高い出来事です。高校生の小論文で国際紛争の例としてロシアとウクライナのことを挙げるものは多いですが、イスラエルのガザ侵攻を挙げる人はほとんどいません。しかし、たとえばアメリカなどではこのイスラエルの立場を支持するかしないかで国が分断するほどの事態にもなっています。前述した通り国際的な政治不安の中である国が注目されると、必ずその国の歴史に関わる本が多く出版され売れます。この本もそういう時流の中でここまで売れたと言えるでしょう。

 日中間にかかわらず、国際的な関係悪化や紛争の裏には、必ず歴史問題があります。ある国とある国が急に仲が悪くなるということは考えづらく、そのほとんどは長い歴史の中で生まれて今もなお尾を引いていることが多いのです。イスラエルとパレスチナとの関係もその例にもれません。「イスラエルはどのように生まれたのか?」、「ユダヤ人はなぜそこにイスラエルを建国したのか?」、「それまでユダヤ人はどうして自分たちの国がなかったのか?」その歴史を紐解くことで今何が両民族との間で何が問題とされているのかがわかります。そうしたユダヤ人の歴史を知るための一冊となっています。

1位 独断と偏見 二宮和也/著 (集英社)

 1位は……うーん、この本か(苦笑)。これは、著者には申し訳ないけどこれは「タレントエッセイ本の一種」なのかなと……。嵐や二宮さんがお好きな人なら読んで楽しめるかもしれませんが。まあ、一応紹介します(笑)。「俳優やアーティストとしての表現のみならず、二宮和也が発信する独創的な言葉の力には定評があります。その最新の〈哲学〉を言語化すべく、10の四字熟語をテーマに計100の問いと向きあいました。ビジネス論から人づきあいの流儀、会話術から死生観にいたるまで、「独断と偏見」にもとづいて縦横無尽に語りおろします。(Amazon紹介文より)」……そういう本です(笑)。まあ、二宮さんも40代のいい大人ですからね、今まで培った人生についての考え方とかいろいろあると思うのでそれなりに中身がある本だとは思いますがね。ほんと、「お好きな方はどうぞ」という感じですね。しかし、よく新書で出そうと思ったなというのが私の感想。こういうのって「フォトエッセイ集」とかの方がファンは喜ぶじゃないかなぁ(あくまで個人の感想です)。

まとめ ~ベストセラーから見る、今年の日本の世相と社会問題のトレンド~

 以上から、ベストセラーよりこうした日本の社会問題のトレンドが見えてきます。

・物価の高騰などの生活不安がもたらす、「資本主義や市場経済、お金のことに関する今までの考え方を見直す動き」

・国際情勢の不安定さからくる、「国や民族の歴史の振り返りや歴史問題に対するまなざし」

・生成AIなどで簡単に文章の読み書きができる時代に対する、カウンターとなる「ことばや読書など『人文知』に対する興味や関心」

 こうしたことが日本の社会の問題点として見えてきます。ですから、このような問題が今後小論文の出題テーマとして選ばれやすいのでは、と私は予測しています。特に政治経済の問題は社会学系学部・学科を受ける人は要注意かも。また、「人文知」に対する関心や注目は、「AIと人間はどのように共存するか?」、「AIにできない人間にしかできないことは何か?」など21世紀の「人文主義」的なテーマにつながるので、人文学系学部・学科を受ける人はチェックしておくとよいでしょう。

 今年発刊した本がほとんどなので今年の入試問題にどんぴしゃで出題されるということはまずあり得ませんが、今後狙われるテーマかもしれません。

 ということで、今年のベストセラーから近年の日本の社会問題のトレンドを見ていきました。受験生は参考にしてみてください。


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