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迷ったら「もと」はかな表記でよい!

更新日:2026/07/21

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導からよく見かける、中高生の間違えやすい表記を紹介し、世の中高生・受験生に警鐘を鳴らすのが、このシリーズ【間違えやすい表記】。

 今日は「もと」の漢字表記について考えていきます。この漢字表記を取り違えるケースを中高生の作文や小論文・志望理由書ではたまに見かけます。これらの書き分けについて、今日はお話ししていきます。……ということなんですが、最初に結論を言うと、これは基本はかな表記でよいと思っています。

 その理由は二つ。一つは、あとでくわしく述べますが、使い分けが難しいときがあることです。「もと」の表記として考えられるのは「元」・「基」・「下」・「本」・「素」・「許」・「因」が主なものです。たしかにこれらの漢字の持つ意味によって違いがあり、それによって使い分けをしていきます。ですが、これらは意味が若干重なり合っているところもあり、文脈によっては厳密な使い分けが困難なときがあるんですよね。ですから、以前もお話ししたように、作文・小論文は「漢字テスト」ではないので、無理に漢字表記にする必要はないと考えています。もう一つは、「漢字表記が増えることによって生じる読みにくさ」をなくすためにあえてここはかな表記にした方がいいという考え方です。これは別の記事でお話ししましたが、表記における漢字とかなの比率は「3:7」が望ましいです。しかも「もと」は漢熟語(漢文に由来するなどで漢字によって構成されている熟語)ではないですから、ここはかな表記の方がむしろ自然と言えます。したがって、「もと」は基本的にかな表記でよいです。とはいえ、使い分けの指針としてお話しすることがあるとすれば、以下のような話になります。

(漢字とかなの比率について ※有料記事)

 まず、「常用漢字表(平成22.11.30・内閣告示第2号)」によれば、「もと」という読みがあてられているのは、「元」・「本」・「基」・「下」です。この段階で、基本的に文章を書くときに使うのは以上の四つであり、「許」・「素」・「因」は除外できます(※「味の素」のような商品名―固有名詞などは別)。「一般的に使う漢字」として定められているのが「常用漢字」ですから、少なからず「許」・「素」・「因」は作文や小論文で書く表記からは外すことができるでしょう(なお、『読売スタイルブックー読売新聞社の作った記者・校正者向けのハンドブック』の用字用例集によれば、これらの漢字は全て「元」にするよう指示が出されています)。

(常用漢字表)

 そして、この「元」・「本」・「基」・「下」の四つの使い分けについて言うと、簡単にポイントを示すと以下のようになります。

「元」……物事の起こり・はじまり 例:「元を取る」・「元に戻す」
「本」……中心にある根本(こんぽん) 例:「本をただせば」
「基」……土台・基礎 例:「資料を基にする」
「下」……下部、支配・影響下 例:「灯台下暗し」・「法の下に平等」

 ……ということになりますが、これがね、なかなか使い分けが難しいことがあります。ここで辞書を引いてみます。

まず、「下」。

もと【(下)】①根もとのところ(後略)

三省堂国語辞典 第七版

次に、「本」。

もと【本】①はえ出るものの(いちばん下の)太いだいじな部分。ねもと。(後略)

三省堂国語辞典 第七版

 あくまで一例としてですが、「ねもと」と言ってしまうとおおよそ他の「もと」の字にもあてはまるような意味になってしまいます。だいたい、「ねもと」は「根元」ですからね。「元」でもあるわけです。そう考えると、なかなか明確に線引きをして使い分けをすることが難しいケースもあります。

 もちろんその一方で、文脈上の意味から見て明確に使い分けが可能と見てとれる場合もあります。私が赤入れて直すときはこういうときです。

 たとえば「監督の指導の『もと』、チーム一丸となり……」と言えば、監督の指揮・指導下でチームが一つになったという意味ですから、この場合の「もと」は「下」です。一方で「監督の指導を『もと』に、バッティングフォームを見直し改善をした」と言えば、監督の指導内容に基づいて(ベースにして)バッティングフォームを改善したわけですから、この場合の「もと」は「基」です。このように、同じ「監督の指導」でもその後に続く文脈によって使うべき漢字は変わります(ちなみに、これが私が今まで見てきた中で最も目にしたミスが生じるケースです)。また、ことわざや慣用句などの慣用表現はそれで一つのことばとして表記が決まっている(定着している)ので、それに従うのが一般的です(「灯台下暗し」など)。

 ですから、上記のケースも考えられますが作文や小論文を書いている中で「これはどっちの『もと』かな……」と迷うくらいなら、基本はかな表記でいいです。作文や小論文はあくまで内容が大事ですからね。もちろん、このように使う漢字によって意味が異なり、また文脈によって使われるケースが異なることは「基本的な国語の素養」として知っているに越したことはありません。ですから、これはあくまでも、「受験として作文・小論文を書くなら……」という話として理解しておいてください。

(検索と引用では以下のサイトと文献にお世話になりました)

三省堂国語辞典 第七版

読売スタイルブック2020

文化庁(文部科学省)



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