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なぜ作文・志望理由書や小論文では指定字数の8割以上書かないといけないのか?

更新日:2026/05/29

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、文章作成における基本事項を紹介するのが、このシリーズ【文章作成の基本】。

(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)


「指定字数の8割は超えないといけない」は本当か?

 一般的に学校でも塾・予備校でも、作文や小論文では指定字数の8割を超えるように指導されます。これは通称「8割ルール」と言われるものです。そのため、書いた作文や小論文が指定字数の8割に達していない場合、添削などでは「8割を超えるように」とコメントを書かれることが多いです。当然、私も作文や小論文の添削のときにはそのように注意コメントを入れます。受験の世界で、このあまりにも当たり前となっているルールは本当なのでしょうか?また8割に達していない答案はどうなってしまうのでしょうか?それがここでのお話です。

 改めて、いくつかの作文や小論文の書き方について書かれているサイトなどを見ると、現に以下のように書かれています。

少なくとも、制限字数の8割は書くようにしよう。

ベネッセ

また、最低限でも指定文字数の8割以上の字数にしましょう。

学研

「200字以内」という指定であれば、指定字数の8割(160字以上)をめやすにしましょう。

Z会


 このように、「最低8割は書きなさい」、「8割は必ず超えなさい」というのが受験界ではおなじみになっている「8割ルール」です。かりに問題文に「8割以上書きなさい」という指示がなくても、作文・小論文の問題ではこれが「暗黙の了解」となっているわけです。しかし、このルールはどこから来てなぜ定着したのでしょうか?

「8割ルール」ができた背景

 8割ルールがあるのは、「多くの入試問題で8割を超えることが要求されている」ことに拠ると思われます。たしかに、多くの作文・小論文問題で「最低でも8割書くこと」と問題文で明らかに書かれることはありません。しかし、中には採点や判定の基準を明らかにしている大学などもあります。おそらくはそれを拠り所にして、それが問題文で明示されていない場合でも「最低でも8割超えていれば字数のことで減点されることはあるまい」という判断を導いたのだと思います。

 「〇〇字までは最低書くこと」と問題文に明言されていないとき、それは「明言されていないから制限字数内であれば何字でもいいのだ」ということにはなりません。なぜなら、そうだとすると理屈の上では、たとえ1字でも埋めていればそれは指定字数の「800字以内」には違いないのだから問題ないだろうという話になります(もっとも1字では文章になりませんが……)。しかし、問題文で「800字以内で書け」という指示があったとき、それは出題者側の意図としては「800字くらいの文章」を受験生に期待していると読みとることはできます。だとするならどこに線を引くのがいわば「減点されない安心ラインなのか」というと、多くの入試の判定基準を「前例」として「最低でも8割だろう」という結論になるのでしょう。

 実際、大学側で発表している「小論文の判定基準」でもこのようにあります。

800字以内で書くことが求められていますが、少なくとも8割の分量を書くよう心がけて下さい。

大阪医療保健大学「小論文の判定基準」

(※上記は2021年のもの。2023年には「9割の分量」となっている。「9割ルール」については後半でふれる。

 こうしたことを「前例」として、かりに問題文で「最低何字書かなければならないか」について明確に書かれていないとしても「最低8割は書くべきだ」という判断につながったのだと思います。

指定字数を8割超えていない答案はどう扱われてしまうのか?

 私は添削指導の他に模擬試験の採点もしています。「業務上の守秘義務」もあるので事細かにはお伝えできませんが、模擬試験では8割に達していない答案はもれなく減点の対象となります。どのくらい減点されるかはその模擬試験によって異なりますが、8割に達していない段階で持ち点から引かれます。問題出題者は問題文や答と共に配点を決めています。そして、こうした作文・小論文の問題などは「採点基準」もあわせて作っています。採点者はこの配点と採点基準に準拠して採点をします。「字数が8割ない場合は何点減点」というようにその基準にあわせて採点をします。

 では、次に本番ではどうかという話になります。「本番と模擬試験と同じじゃないの?」という声が中高生から聞こえてきそうですが、実は大分違います。それがどれほど違いがあるのかはその模試を実施している業者にもよりますが、とにかく違うのです。もちろん模擬試験ですから本番の試験と全く違うと本番に向けての練習にならないので、試験の形態や形式などは本番の試験に似せて作ります。しかし、決定的に違うのは試験の目的です。本番の試験は「選抜のための試験」なので、それで合格・不合格を決めます。対して、模擬試験は、たしかにその成績によって志望校の合格可能性を測りますが、基本は「本番に向けて予備練習」として行っているものです。つまり、その模擬試験を受けることによって志望校合格まで自分に何が足りていないのかを知ってもらうことが目的なのです。そして、模擬試験の成績表はこれから志望校合格に向けてどういう勉強をしていくべきなのかといった、自分の勉強の指針を立てる参考資料にしてもらうものです。したがって、模擬試験は受験生をリアルに合格・不合格に振り分けるものではなく、これからの受験勉強に対する参考にしてもらうものと言えます。

 この違いによって生じる最も大きな相違点は、「採点の仕方と採点の基準」です。わかりやすく言えば「模擬試験は本番と異なり少しでも点数が出るように配点や採点基準を設計している」のです。なぜなら、模擬試験の役目として「志望校に対する受験勉強のモチベーションを高める」というのも一つにあるからです。模擬試験を受けた結果「志望校受験に対して、受験生のやる気が失せた」となっては模擬試験を実施する業者としては困ります。「模擬試験を受けたおかげで、今の成績だと合格可能性が高いとは言えないということもわかったけど、同時に合格のために今の自分に何が足りないかがわかった!」と受験生には模擬試験で出た結果を前向きにとらえてほしいと実施業者としては思っています。ですから、どんなミスがあっても1点でも多くとれるように採点基準を設けているのです。

 それに対して、本番の試験の出題者は「そんな配慮」をする必要はありません。ここで必要なことは正確に速く合不合を選別することです。そこで不合格になった生徒が泣こうがわめこうが勉強に対するやる気をなくそうが知ったことではありません。重要なのは「本校・本学に必要な優秀な生徒をいち早く選ぶこと」です。いわば「点をあげるための試験」ではなく「落とすための試験」なのです。

 となると、本番の小論文試験でもし8割に達していなかった答案があったら……私が採点官ならば減点だけではありません。というかそこからその答案の内容は読みません、そのまま問題の求める解答要件を満たしていないとして減点もしくは場合によっては(「白紙扱い」で)得点はつけない(採点終了)と思います。私は本番の試験の採点官はやったことがありませんが、これは誰でも容易に想像できます。高校や大学ならば速く合格者を決める必要があるでしょう。だから。少しでも点数が残るように受験生に配慮して採点するのははっきり言って「時間の無駄」です。したがって、私が本番の試験の採点官ならば、字数が8割に達していない段階で中身を読まずに採点を終了します。字数が多ければいいというものでもありませんが、字数が他の答案よりも少ない時点でそれが他の答案より内容が濃い作文や小論文である可能性はほぼないからです。だから、8割に達しておらずそれより字数の少ない答案はこの時点で「落として」もいいはず……と考えます。……もちろんここまでの話は私個人の推測なのですが、あながち現実からずれた話ではないと私は思っています(当然採点基準は各高校や大学などによって異なります)。

作文・小論文はまずは「最低8割理想9割」を目指して書こう

 結論は最初からわかっていることですが、改めて言うと、受験生で作文・小論文が試験で課されている人は「8割超え」を目指してくださいということです。ふだんから、指定字数の8割は超えるように作文や小論文を書く訓練をしてみてください。

 ただ最後に言っておきますが、これは「最低でも8割には到達してね」ということです。「8割あればOK」という話ではありません。はっきり言えば理想は9割以上、または指定字数に限りなく近い方が望ましいです(ですから「9割ルール」として教える塾や予備校もあります)。たとえば800字以内でしたら「その程度の字数で書いてほしい」というのが出題者の意向なわけですから、なるべくその字数に近づけるべきでしょう。あと、「〇〇字以上〇〇字以内」と指定字数について細かい指定がある場合にはそれに従ってください。「8割ルール」は「〇〇字以内」だけでどこまで書いたらよいのかがわからないときの解答指針です。

 なお、これは志望理由書でも同じです。まあ大きなくくりで言えば志望理由書も「作文の仲間」ですからね。ただ、志望理由書などの場合はマス目のある原稿用紙ではなく罫線だけのレポート用紙のような様式も中にはあります(小論文でもたまにあります)。そのときは「全体のスペースの8割以上を占めるように埋める」とよいでしょう。

 さらに、「〇〇字程度」・「〇〇字前後」という指定の場合は「〇〇字のプラスマイナス指定字数の一割程度」と考えるのが普通です。または原稿用紙のようにマス目のある答案用紙の場合は、そこからプラスマイナス何字許容されているのかがわかると思いますのでそれを基準にしてください。指定字数についての解釈と扱いは、以上を参考にしていただければと思います。


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