新たな石油「シルバー」ーーなぜ今、銀は300ドルを目指すのか?

銀の価格が今から約4倍の300ドルに達する。一見すると、大げさすぎる予測に聞こえるかもしれません。しかし、現在の金融システムの裏側で起きている構造的な変化を丁寧に追っていくと、その数字が根拠のない話ではないことが見えてきます。
この記事では、銀価格の上昇を後押しする主に4つの力——実需の拡大、ペーパーマーケットの歪み、通貨価値の低下、そして実物資産の東西間の移動——を一つひとつ整理していきます。

第1章 大手投資銀行の予測に潜む「偏り」
長年の傾向
長期に渡り、大手投資銀行(ブリオンバンク)の市場予測を注視し続けてきた経験から言えることがあります。
大手金融機関の予測には、常に一定の偏りが含まれているという点です。
株式には楽観的、金には保守的
具体的なパターンはこうです。
・S&P500などの株式市場に対しては、総じて楽観的すぎる目標値を掲げる
・一方で、金については常に過小評価する傾向がある
ところが最近、一部の投資銀行が年末までの金価格について5,800ドル、あるいは6,000ドルという予測を出し始めました。これほど保守的だった機関がここまで高い数字を口にし始めたということは、実際の市場のエネルギーがさらにその上を行く可能性を示唆しているとも読めます。
バンク・オブ・アメリカの言及が持つ意味
特筆すべきは、バンク・オブ・アメリカが「銀価格は今年、300ドルまで上昇する可能性がある」と言及し始めたことです。
この数字は、単なる強気予測ではなく、「値固め」の期間が終わりを迎え、均衡が崩れ始めているサインとして受け止めるべきでしょう。
では、なぜ銀がここまで注目されるのか。その答えは、需給構造の変化と市場の歪みにあります。次章から、その実態を掘り下げていきます。

第2章 銀が「新しい石油」と呼ばれる理由
6年間続く構造的な供給不足
銀市場は、すでに6年間にわたって供給不足の状態が続いています。ただし、問題はそれだけではありません。銀の供給構造そのものに、増産しにくい難しさがあります。
・純粋に銀だけを採掘する「ピュア・シルバー」の鉱山は、世界的に見て非常に少ない
・流通している銀の多くは、銅などの卑金属を採掘する際の副産物として得られる
・そのため、銀価格が上昇しても、すぐに増産できるわけではない
・新しい鉱山の開発から実際の採掘まで、何年もの期間を要する
つまり、需要がどれだけ急増しても、供給側はすぐに追いつけない構造になっています。

中国を中心とした産業需要の急拡大
もう一つの大きな要因が、産業需要の急増です。貴金属市場の動向に詳しいアナリストのエリック・ヤング氏によれば、中国がいまやエネルギーの自給自足をほぼ達成し、電気・EV・風力・太陽光といった代替エネルギーに軸足を移しているという事実です。
これらの技術を支えるうえで、銀は欠かせない素材です。中東情勢の不安やエネルギー問題の深刻化を受けて、アジア各国は一斉に代替エネルギーへと方向を転換しており、それに伴って銀の産業需要がかつてない水準で増加しています。
「投資対象」から「産業素材」へ
銀はもはや単なる宝飾品や投資対象ではなく、国家のエネルギー戦略を支える産業素材として、その位置づけが根本から変わりつつあります。
「新しい石油」という表現が使われる背景には、こうした実需の変化があります。そして、この需要の急増が、次章で説明する「市場の歪み」をさらに際立たせています。

第3章 実物資産が西から東へ移動している
価格を押し下げる「紙の銀」の仕組み
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法定通貨の増刷と膨張する国家債務危機から資産を守り抜く「資産防衛」の観点から、金・銀・銅をはじめとする「実物資産」およびコモディティの構造…
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