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現物資産という選択ーデジタル監視マネー時代の資産の守り方

第1章 プログラムされる通貨と、迫りくるデジタル管理社会

「その刻印がなければ、誰も物を買うことも売ることもできない」
――ヨハネの黙示録 第13章17節(新共同訳)、紀元90年代頃

およそ2000年前に記された聖書、ヨハネの黙示録の一節です。かつてこの言葉は、権力の支配を象徴する単なる比喩に過ぎないと考えられてきました。当時の人々に、現代のようなテクノロジーを想像する術はなかったからです。

しかし今、世界で起きていることに目を向けると、この言葉はある種の現実味を帯びて見えてきます。

私たちは今、産業の時代を通り過ぎ、情報とデータの価値が全てを決める「知能の時代」への入り口に立っています。そしてその入り口には、人々の行動をデジタルで把握、制限しようとする仕組みが、着実に整備されつつあるのです。

この記事では、その仕組みを支える「3つの柱」を順に解説したうえで、私たちが取るべき現実的な対応について考えてみたいと思います。

第1の柱:生体認証と「World ID」

OpenAIのサム・アルトマンCEOが共同設立した会社は、2025年に「Orb(オーブ)」と呼ばれる装置の本格導入を開始しました。ボウリングの球ほどの大きさの銀色の球体で、私たちの目の虹彩をスキャンし、世界に二つとない「生体認証シグネチャー」を抽出します。

なぜ、自分の身体の一部をスキャンさせる必要があるのでしょうか。理由はシンプルで、AIやロボットが溢れるこれからの世界で、私たちが「本物の人間であること」を証明するためです。

スキャンと引き換えに発行されるのが「World ID」です。すでに1800万人を超える人々が自ら進んで登録を済ませており、World IDはTinderやShopify、Zoomといった日常的なアプリへの組み込みも進んでいます。

こんなものに登録しようとする人の気持ちが私には理解できません。

マッチング相手が本物の人間か、商談の相手がディープフェイクではないか。そうした不安を解消するための「便利な道具」として、私たちの生活に浸透しつつあるのです。

サム・アルトマンは、この「人間であることの証明」がいずれあらゆるウェブサイトやアプリ、インターネット上の全ての取引で求められるようになると語っています。

ここで注意したいのが、生体認証が持つ「取り返しのつかなさ」です。

パスワードやクレジットカードはいつでも変更できる。しかし、自分の眼球(虹彩)は一生変えることができない。

情報が漏洩したとき、あるいはシステムが悪用されたとき、私たちには何もできません。利便性と引き換えに、私たちは取り替えのきかない身体情報を民間企業に預け始めています。

第2の柱:プログラム可能な「お金」

管理網を形作る2番目の柱が、お金の性質の変化です。これまでのお金は「中立」でした。いつ、どこで、何に使おうと、基本的には持ち主の自由だったのです。

しかし、これからのデジタル通貨は違います。それは「プログラム可能なお金」なのです。

2025年にアメリカで成立した「Genius Act」という法律は、ステーブルコイン(デジタルドル)の法的枠組みを定めました。このデジタル通貨には、あらかじめ「ルール」を書き込むことができます。

特定の地域から出ると使えなくなる
有効期限が切れると消滅する
環境政策に反する肉やエネルギーの購入には使えない

このような制限が、通貨そのものに埋め込まれるのです。さらにこの法律では、全てのステーブルコイン発行者が財務省のシステムに接続し、顧客確認や制裁措置を徹底することが義務付けられています。

つまり、個人の振る舞いによって通貨の機能を制限できる「社会信用システム」への扉が、法律によって開かれたとも言えます。

第3の柱:監視ハードウェアの整備

お金と身分証がデジタル化されても、現実世界での動きを把握できなければ管理は完成しません。そこで必要になるのが「物理的な監視インフラ」です。

今、世界中でカメラや衛星、携帯電話の基地局、AIデータセンターが急ピッチで建設されています。これは単に「画像生成AIを速く動かすため」だけではなく、何億人もの人々の取引、移動、オンライン上の言動をリアルタイムで処理するための計算能力が必要だからです。

具体的な動きとして、アメリカでは以下のような規制、法律が整備されています。

・連邦通信委員会(FCC)が基地局を400〜700フィート間隔で設置できるよう規制を強化。スマホのGPSを切っていても、屋内にいても、数メートルの誤差で居場所が特定できるようになります。
・Wi-Fi電波そのものが「家の中のどこにいるか」をリアルタイムで特定できる技術として活用されつつあります。
・アメリカで販売される全ての新車には「キルスイッチ」の搭載が法的に義務付けられました。運転が不適切だとシステムが判断すれば、車を遠隔で停止させることができるのです。

この「キルスイッチ」義務化に対しては、アメリカ連邦議会のトーマス・マシー下院議員が公然と反対しており、政府による過剰な介入だと批判しています。反対意見が存在することも、重要な事実として押さえておく必要があります。


第2章 全てを繋ぎ合わせる「頭脳」と、帝国の財政戦略

データ解析企業・パランティアの役割

バラバラに存在するこれらのデータを一つに繋ぎ合わせ、一人の人間の「リスクプロファイル」を構築する存在があります。それがピーター・ティールが設立したデータ解析企業、パランティア(Palantir)です。

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