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【NOTE的余談】50歳で学んだ「誤学習」という概念――障害者支援が教えてくれたマネジメントと育児の本質

はじめに――人生の転機は突然やってきた

50歳になった今年、私の職業人生に大きな転機が訪れました。

長年勤めてきた中小企業の総務・人事から、NPO法人への異動。そのNPO法人が運営しているのは、就労支援B型作業所です。障害者雇用には総務・人事の立場でそれなりに関わってきました。面接の対応、入社後のトラブル処理、配置転換の調整……企業側の視点で障害のある方々と接してきたつもりでした。

しかし、50歳にして、その「つもり」が根底から覆されることになります。

出会った言葉――「誤学習」

異動してすぐ、サービス管理責任者からある言葉を聞きました。

「誤学習」

聞き慣れない言葉でした。最初は障害者支援特有の専門用語だと思っていました。しかし、その説明を聞いて、私は衝撃を受けたのです。

誤学習とは、不適切な行動を正しい行動として誤って理解している状態のこと。過去の経験によって間違った学習をしてしまい、社会的に受け入れられない行動が定着してしまうことを指します。

例えば、こんなケースがあります。

  • 欲しいものがあるとき、泣き叫んで暴れたら買ってもらえた経験から、「暴れれば願いが叶う」と学習してしまう

  • 友達を叩いたら自分の要求が通った経験から、「暴力は有効な手段だ」と学習してしまう

  • 急いでいる時に大人がルールを破る姿を見て、「急げばルールを無視してもよい」と学習してしまう

発達障害のある方は、特性によってこうした誤学習をしやすいと言われています。しかし、話を聞きながら私は思いました。

これは、障害者だけの問題ではない。

企業のマネジメントにも存在する「誤学習」

企業における「成功体験」。それは時に、最大の「誤学習」になります。

かつて成功した営業手法が、市場環境の変化で通用しなくなる。それでも「これまで成功してきたやり方」に固執してしまう。上司として部下に厳しく接することで結果を出してきた管理職が、時代の変化に気づかず同じマネジメントスタイルを続け、パワハラと指摘されてしまう。

これらは、まさに企業における「誤学習」ではないでしょうか。

過去の成功が、環境や時代の変化によって「不適切な行動」へと変わる。しかし本人はそれが「正しい」と信じて疑わない。結果として、組織の成長を妨げ、人間関係にトラブルを生み、ビジネスチャンスを逃してしまう。

成功体験は、成功しなくなった瞬間に「誤学習」へと姿を変えるのです。

育児にも潜む「誤学習」の罠

子育てにおいても同様です。

「泣いたらすぐに抱っこする」という対応が、時に「泣けば要求が通る」という誤学習を生むことがあります。「急いでいるから今日は特別」と子どもの前でルールを破れば、子どもは「状況次第でルールは無視してよい」と学習してしまうかもしれません。

親が無意識にとる場当たり的な対応、その場しのぎの言葉。それらが子どもの中で「ルール」として定着し、後々の困りごとにつながることがあります。

障害の有無に関わらず、「誤学習」は誰にでも起こりうるのです。

リスキリング・アンラーニングと「誤学習」の関係

昨今、企業研修の現場では「リスキリング」や「アンラーニング」という言葉が注目を集めています。

リスキリングは、新しいスキルを学び直すこと。
アンラーニングは、過去に学んだ知識や価値観を意図的に手放し、新しい考え方を受け入れること。

リスキリングによって新しい知識やスキルを獲得するだけでは不十分です。その前に、時代に合わなくなった「過去の成功体験」「古い価値観」「不適切となった方法論」を手放す必要がある。つまり、成長には「誤学習の解消」が不可欠なのです。

誤学習を解消するために必要なこと

サービス管理責任者から学んだ支援の方法は、企業のマネジメントにも応用できると感じました。

1. 行動を分析する
「きっかけ」「行動」「結果」の3つに分けて考える。なぜその行動が定着したのか、どんな「成功体験」がその背景にあるのかを理解する。

2. 結果を変える
誤学習した行動をとっても、期待する結果が得られないことを体験させる。

3. 行動を変える
適切な代替行動を提示し、それによって同じ結果が得られることを学習させる。

4. 一貫した対応
場当たり的な対応を避け、一貫したルールやフィードバックを提供する。

これらは、部下育成でも、子育てでも、そして自分自身の成長においても有効な視点です。

おわりに――50歳からの学び

50歳にして、まったく新しい世界に飛び込んだことで、私は人間の「学び」の本質について深く考える機会を得ました。

障害者支援の現場で使われる「誤学習」という言葉は、実は私たち全員に関係するものでした。企業人として、親として、そして一人の人間として、私たちは常に「誤学習」のリスクと隣り合わせです。

大切なのは、過去の成功に固執せず、変化を恐れず、時には「学び直す勇気」を持つこと。そして、誤った学習をしてしまった時には、それを認め、解消していく柔軟性を持つことです。

成長とは、新しいことを学ぶだけでなく、古いものを手放すことでもある。

それが、今年私が学んだ、最も大きなことです。

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