野生動物めくるめく性(ハイエナのメスについては特に徹底解説する)
「ハイエナ地位向上委員会」ハイエナに対する偏見を払拭したい!そんな想いから、今私によって設立された。(急ごしらえ)
『ライオン・キング』製作スタッフは、ちゃんと、野生のハイエナをスケッチしに行ったらしい。で、できあがったのがアレ。目が節穴なんだろうか。

冗談。『ライオン・キング』はいい作品だ。仕方がない、ディズニーのおかした罪は私が償おう。笑
まじめな話、おそらく、こういうのをスケッチしたのだと思う。


顔面のこちら側に攻撃を受けたことがあるのだろう。
ディズニーが参考にしたのは、このブチハイエナという種だ。
罪人リストに載っているのは某D社だけではない。
タンザニアでは、ハイエナは魔女のお気に入りの乗りものだと言われている。
スーダンの民話や14世紀のペルシャの医学文献には、半分人間・半分ハイエナの生き物が登場し、闇にまぎれて人間を襲う。
中世の一部の地域では、ハイエナは人間の死体を掘り出して食べると信じられていた。
よい噂(?)と言っても、せいぜいこれぐらいで。ローマのある博物学者は、ハイエナの頭皮をかぶると頭痛に効くと考えていた。
アリストテレス「動物は心臓の大きさで勇気を予測できる。ハイエナはその意地悪さで臆病さを露呈している」
みんな言いたい放題やで……。
ハイエナはたしかに死肉を食べる。

野生動物の写真や動画には、本当にヤバいのがある。
大自然は過酷だ。
腐肉食:動物遺体を主たる食物とする性質。
私は、日本語よりも英語の方を気に入っている。scavenging は清掃関連でも使われる言葉だ。不要物の処理だとか排気だとか。
スカベンジャーズは清掃作業員みたいなものだ。分解に関与することで生態系の重要な役割を担っているのに。目立たず讃えられず。
アベンジャーズなんて「復讐者」だぞ。

笑。『アイアンマン』はいい作品だ。
私は、洞窟に閉じこめられている段階が好きだ。あんな環境と条件で発明ができる、本当に天才なんだなと思うし。あの体験から、死の商人が別人に生まれ変わるというのは泣ける。


話がそれた。
異なる腐肉食動物に、順次、消費されていくことによって。動物を構成していた有機物質は分子分解され、環境に還元される。
スカベンジャーズの働きがあってはじめて、世界は健全に保たれているわけだ。
そんなスカベンジャーズのメンバーを紹介しよう。
ジャッカル!ハゲワシ!カモメ!クロバエ!ウジ!ダイアオオカミ!?(推測の域を出ない)ティラノサウルス!?(現在では否定説の方が有力)

あれ?ハイエナは?

ハイエナは、実は、積極的に狩りをすることも多い動物であり。完全な腐肉食動物ではない。
ライオンよりも狩りをすることが多い種もいるくらい。ライオンがハイエナの獲物を横どりする構図(大衆イメージの逆)など、大して珍しくもないのだ。
あきらめの早いライオンとネバー・ギブアップなハイエナの、差がよくわかる動画。
ここまできても本題がはじまらない、と。タイトルと内容のズレにモヤっている人がいるかもしれない。もう少しだ。がんばって。
ハイエナは、ジャコウネコ科から “進化” したと考えられている。

ハイエナ科の動物は4種存在する。
ブチハイエナ・カッショクハイエナ・シマハイエナ・アードウルフ。


ブチハイエナは単独行動・ペア・数十頭の群れ。単独の場合は小型哺乳類や死肉を食べる。群れの場合は大型哺乳類や死肉を食べる。最も狩りをする。最も大きい。鳴き声のバリエーションが豊富。非常に攻撃的。

カッショクハイエナは単独行動か小規模の群れ。小型~中型哺乳類や死肉を食べる。毛が長い。鳴き声のバリエーションが少ない。ブチハイエナより攻撃性が低い。

シマハイエナは単独行動。果実や虫や小型哺乳類を食べる。死肉も食べる。鳴き声のバリエーションが少ない。ブチハイエナより攻撃性が低い。

アードウルフは単独行動。主食がシロアリ。強いあごをもたず死肉を食べない。最も小さい。最も攻撃性が低い。

ブチ以外はシマ模様だ。カッショクハイエナの足もシマ模様なため、長い毛の下にはシマ模様があるのかも。ダブルコート的な。
笑っているような鳴き声として、知られているが。ブチハイエナは10種類以上の鳴き方を使いわけている。明らかに、それで(高度な)コミュニケーションをとっている。
そこまで攻撃性が高くないとされるカッショクハイエナの鳴き声さえ、こんなに怖い。見た目はまるで犬(良きパートナー)のようだが、やはりプレデター(捕食者)だ。

このパワーワードが当てはまる。
ハイエナは、基本、強靭なアゴや鋭いキバをもって生まれる。ブチハイエナは、性質も生まれつき大変攻撃的である。
ブチハイエナの群れ(30~80頭。最多記録120頭)では、メスがオスより絶対的に優位なのである。
具体的なランキングはこうだ。
①上位の大人 ②上位の大人の子孫 ③下位の大人 ④下位の大人の子孫 (①~④全てメス)⑤大人のオス ⑥子どものオス

オスは、2才をすぎた頃、生まれた群れを出ていく。オスは食事をとるのも最後だ。メスと一緒に食卓につこうものなら、激しい暴力を受ける。
兄弟姉妹の中では、一番後に生まれた子の地位が一番高い。(日本語にはなぜ sibling という言葉がないのか……)
「ブチハイエナのママたちが末っ子びいきであること」は興味深い余波を生む。彼女らが亡くなると、末っ子は、兄弟姉妹からイジメを受けるようになるのだ。
末っ子がオスの場合もひいきされるのか、という疑問がわくだろう。
ハイエナの子どもたちは殺しあうことがある。この現象はほぼ同性どおしで起こるという。このことから推測されるのは、雌雄の争いには意味がないということだ。メスが上というのは絶対で、いついかなる時も適応されるように思える。
ただ、赤ん坊は特例というのがあるのかもしれない。

だとしたら、こうだ。「お前さぁ、オスのくせにチョーシ乗ってんなよ。ボーナス・タイムは終わりなんだよ。これが現実だからぁ」

かわいい。
と、わざと推理ごっこをしてみたが。
姉妹が最も殺しあいがちで。兄や弟は、その階級の低さ故、難を逃れがちなのだそう。文字通り「歯牙にもかけない」のだ。
もし、オスが、新生児期に末っ子理由で愛されたとしても。少なくともメスからオスに対しては、どうせ2才で出ていくし(?)どうでもいいことなのだろう。たかだか親の気まぐれ・仮初の地位と。
ブチハイエナのメスは偽陰茎/疑似陰茎をもっている。
これは両性具有ではない。
この偽陰茎は勃起することができる。排尿も交尾も出産も、この偽陰茎を使って行われる。

交尾の際。メスは「シャツの袖をまくりあげるように」偽陰茎をひっこめる。一時的に膣が・凹が発生する。性行為が成立する。
偽陰茎を通って非常に小さな子が生まれるなら、まだわかるが。ブチハイエナの新生児は他の肉食獣と比べて大きい。彼女らの出産は難産になることが多い。

ブチハイエナの雌雄を見わけるには、陰茎の先端が裂けているかどうかを見るらしい。(陰嚢を触診することでも判別できるとは思うが)体長は、メスがやや大きいくらいで、あまり変わらないため。
ヒィィだよね。

日本にハイエナをゆずってくれた韓国の人が間違えてしまったのも、無理はないのだ。
どうして、これほどのリスクを背負って、ブチハイエナのメスが偽陰茎(と偽睾丸まで)をそなえているのか。理由はハッキリとは解明されていない。
この回の最後に、これまでに出ている仮説を紹介する。今は書かない。
ちなみに。勃起したペニス(偽)は、ハイエナの母系社会で服従のしるしである。要するに。最後までペニス(偽)を勃起させないメスのハイエナが、群れのリーダーとなるのだ。

真ん中の子どもが不安そうにしている。
つまり……どういうこと?これも後で解説する。

以下、さまざまな動物のセックスおもしろ話を書いていく。
これらをはさむのは、(たしかにハイエナはきわだった例ではあるが)ハイエナだけが特殊なのではないということを表すため。みんなおもしろいのだ。
ジャイアント・パンダは、飼育下では「その気になる」ことができない可能性が高い。
本来は、広大なテリトリーの中で、排卵のタイミングにあわせて互いの居所を探り当てる。鳴き声でコミュニケーションをとることによって。
デート前のやりとりやデートもなしに盛り上がれませんよと?かわいらしいところがある。

性教育なんて不要だった話。大変失礼いたしました。
やり方なんて知ってるよー!好きな人じゃなきゃしたくないだけだよー!そりゃそうだよね。本当ごめん。
一生の間に、卵を作る時期(メス)と精子を作る時期(オス)を交代する生物がいる。
多くのリーフフィッシュでは、幼魚は全てメスで、成長するにつれてオスになる。
これを順次性両性具有という。

ナメクジやカタツムリは、オスとメスの生殖器を同時にそなえている。
自分の卵に自分で受精することさえ、可能。
ダニは、性行動の多様な生き物である。
ダニはどこにでもいるため、人の顔の上でセックスをしている可能性も大いにある。
Lesser water boatman(英語名の方が楽しい)は、100dBに相当する交尾コールを出す。
私の書き損じではない。100デシベル:電車がガード下を通過する時くらいの音量だ。
この爆音をペニスから奏でるのだ。摩擦させたりして。性器が楽器。

たしか、体の大きさ 対 発せる音の大きさ で、地球上1位だと思う。
一夫一婦制が動物集団で繁栄することは、あまりない。貞節は個体の生殖能力を制限してしまうため。
しかし。子育てに両親が必要な鳥類では、一夫一婦制がひんぱんに見られる。(エターナル的な一夫一婦制ではなく、季節の変わり目にパートナーを変えるかもしれないが)
おしどり夫婦とか言うもんな。
この方の研究すごく好き。
トンボ・ガラガラヘビ・メンフクロウ・シャチ・イルカ・コアラ・ハイエナ・ライオンなどで、同性間の営みを行う個体が確認されている。
バンドウイルカは、異性間の営みと同じくらい、同性間の営みにも熱中すると言う。同性のイルカどおしが口の先で性器をなであうのは、彼らのお気に入り行為の1つだ。
研究者らが、その進化的原因について考えている内容があるのだが。私はそれに納得がいかないため、紹介しない。
私はこう考えている。動物だって、大それた理由などなく、ただ楽しいからとか気持ちいいからとかでする行動はある。
ここはもう少し書こう。
犬の典型的な遊びを例に、見てみよう。
プレマックの原理:低頻度行動の結果として高頻度行動(好きな行動)があると、低頻度行動の頻度が増加する。

追いかけたことのごほうびがかみつくこと・かみついたことのごほうびがひっぱること。行動が行動の褒美。
獲物をとるための本能的な行動である探索行動や摂食行動の項目を、数多く満たすためーーと言うよりは。いや、それもあるだろうが。私は、これは主に、プレマックの原理だと思う。
カモ/アヒルのオスは、コルク栓のような性器をもっている。メスの生殖管で精子を「爆発」させる。1/3秒で射精することをそう呼んでもいいだろうか。不適切だったら謝罪する。
もし拒絶したくとも。挿入されたら猶予は1秒もないということだ。そこまでに至らなければいいわけだが。望まない相手に不意をつかれるというようなことが発生しやすいのは、イメージできると思う。
これに対して、カモ/アヒルのメスは、反コルク・スクリューのような性器を進化させた。

強制交尾になりがちな中で。メス側もある程度コントロールできる・不要な精子を拒絶できるような仕組みになっている。そんな器官構造なのだ。
Coevolution(共進化)。
2つ以上の種が、自然選択のプロセスを通じて、互いの進化に影響を与える場合に発生する。同じ種の2つの形質が互いの進化に影響を与える場合にも、使用される用語だ。
カモ/アヒルの風変わりな性器は、言わば、性の軍拡競争の結果である。
ブチハイエナのメスの生態は、この上位互換だとも言える。構造上、交尾をするかしないかメス側が完全に選ぶことができる。
カモ/アヒルの種類によっては、ペニスは繁殖期に成長し、その後に退化する。
Lake duck という最もペニスの長いカモの最長記録保持者は、伸ばしたソレが体調よりも長かった。

セメルパリティとイテロパリティ。ラテン語の「一度きり」と「もう一度」が語源。一回性生殖と反復性生殖。
生物が利用できる対照的な生殖戦略だ。死ぬ前に1回の生殖エピソードを特徴とするか、生涯にわたって複数の生殖周期を特徴とするか。
前者は、人間の価値観からすると、何か劣っていることのように感じるかもしれないが。1回の性行為に全てを費やす方が、一年生き続けて来年また繁殖できる可能性に賭けるよりも、子孫を残せる確率が高い場合に。そのように進化(そのように適応)する。
誰でもわかる例がある。サケだ。

サケでは、産卵や放精後に急激な脳の萎縮が観察される。アポトーシスだ。ホルモンは低下し器官の制御は壊れ。一気に死をむかえる。

動物が死んでしまうほど激しいセックスのエピソードは、セメルパリティに該当する。
オーストラリアの小型有袋類アンテキヌスのオスは、睡眠時間を削って性行為に費やす。観測された最長記録は24時間中14時間。
睡眠不足で死んでいるのかは定かではないが。ざっくり言って、セックス疲れで死んでいる。

ヘッジスズメのメスは2羽の夫をもつことが多い。両方と計250回交尾したことのある個体など、記録されている。
どちらのオスも、自分の子かどうかわからないまま、ヒナにエサを与える。
さて、ハイエナの話に戻ろう。
彼女らが男性生殖器のレプリカをもつに至った過程について、いくつかの仮説は立てられている。
服従シグナル仮説は、この構造が社会的文脈の中で進化したことを示唆している。
非適応仮説は、これらの女性の極度に男性化された性器はアンドロゲン(テストステロン)の保有に起因する進化の副産物である、と示唆している。
難しいかな。もっとカジュアルに書いてみる。
服従シグナル仮説はこうだ。
ハイエナのメスが疑似陰茎を勃起させる =
私は貴女より格下です、とひざまずく。

勃起はオス寄り仕草のようなものかもしれない。つまりは、メスの中のメスが決まっていくトーナメント戦のようなものかもしれない。

非適応仮説はこうだ。
メスのブチハイエナの体内には、ホルモンのアンドロゲンがある。例)テストステロン。
ブチハイエナのメスのテストステロン値はオスと同程度に高い。興味深いことに、それでメスはオスよりもずっと攻撃的になる。(後で補足説明する)
ブチハイエナの群れは、ものの数分でヌーを1頭しとめる。それどころか、取り囲んでライオンのオスを殺すこともある。「百獣の王」……。

事実、こういうことはあるのだが。AI生成画像を疑った。ハイエナ1頭がカメラ目線だから笑、遠めに撮影者がいるんじゃないかなと。
アンドロゲンを介した好戦性の選択による、選択されない副作用として。ブチハイエナのメスの極めて男性的な性器は発生した可能性がある。ということだ。
強さを求めていったら男性器が生えてきちゃった、的なこと。
余談だが。前段に関係のある余談だ。
ヌーやシマウマは、腹を裂かれてもすぐには絶命しないのだが。
断末魔の叫びが聞こえたとしても最初だけで。驚くほど静かにきょとんとした顔で、食べられ続けたりする。
痛覚が強すぎる場合、それを遮断する仕組みがあると言う。ある学者はそれを「神が草食動物に与えた恵み」と言い表した。
もう無理だからね。ただ痛いだけだからね。これがどう全体のためになる?ほぼほぼ個体のためにしかなっていない。私も神を感じるよ。
グロいので動画は貼らない。
既存の説は全て誤りで、これは古くから続く男女間の争いの結果であるーーという説をとなえる人もいる。その人は女性の研究者。
ちょっと思想……根底には悲しみがあるのだろう……が強い感じで。紹介できないなと判断した。
今回はこういう話はしないけれど。怒りの源は悲しみだからね。男性陣はよく考えてね。
完全解明には至っていないが。両説を複合したようなところに、答えはある気がする。
このように。団の構成員がメス中心なことにも妥当な理由があるのだ。差別などという類のものでは決してない。
攻撃的なのは間違いないが。ハイエナが、愚か者・卑怯者・臆病者といったイメージをもたれるのは、完全に不当である。そんな事実は一切ない。
今まで解説してきた多様な鳴き声・スタミナやしぶとさ・効率的な組織構造を、全て考えあわせてみてほしい。
ブチハイエナ(の特にメス)は、極めてレベルの高い文武両道のハンター集団なのだ。

アンドロゲンが卵巣で生成されるということだけでも、じゅうぶんに偉業だが。
ブチハイエナの妊娠期間は長い。出生前にテストステロンをガッツリと摂取した子どもらは、生まれながらにして戦士というわけだ。

メスはオスよりも、アンドロゲンの影響に敏感なようだ。さらに。母親の力が強いほど、妊娠中に胎児がさらされるテストステロンの量が多いことが判明している。
やはり、これはメスのトーナメント戦状態になっている。よって、肉体的・知的・コミュニケーション能力的に最も優れた個体が隊を統べている。
痛々しく不器用ながらも力強い、そんな女たちのキングダムだ。

ディズニーは、ハイエナをメインにした作品でも新たに製作したらいいのではないか。

『ライオン・キング』→『ハイエナ・キングダム』
女性の強さを題材にしても、ポリコレwwとはならない。ハイエナの場合、ただの事実で脚色いらずなのだから。
今さらだが。ハイエナは私の特に好きな生物ではない。私が好きなのはキリンだ(父親との思い出がキリンにあるから)。彼女らのスキルはすさまじいという事実を伝えたかった。


〆は、クイーン・オブ・ダンスフロアの Dua Lipa にしよう。美しくクールで健康的。Tyla も人気だけれど。


