【蒸留日記 vol.139】ジュノペーゼ用に植えていたスイートバジルを蒸留する。
ラベンダー栽培家にしてハーブ蒸留家のエフゲニーマエダですどうも。
さて。
エフゲニーマエダ氏は大のパスタ好き。というかイタリアン好き。
そんなにワインは飲めないけど(貴腐ワインはめっちゃ好き)。
というワケあって時々、熱狂的にパスタを作ったりします。
まぁ大方はガーリック系かスープパスタ、クリームスープパスタとかなんすけど。しめじをベースにキノコ入れるのが特にこだわり。
…そんな関係で、今年2024年度より始まった”裏庭再開拓プロジェクト”の一環にて、土壌と環境調査としてスイートバジル(Ocimum basilicum)の苗を買って植えていました。確か8本。(+園芸品種の紫葉っぱ品種1本)
めっちゃジュノペーゼ作りたかったんですよね。まぁほとんどピザトーストで食ってしまいましたが。。。

まぁ蒸留家なんで、余ってしまえば定期的に精油とろうか〜と考えてました。
・・・先走ったこと書くんですが、バジルの栽培プロフィールは"軽くググった感じ"、寒さはダメですが水気・水分には強い作物なので北海道でバジルの精油生産もそんな悪くないんじゃね?と思った次第でした…!
(理由後述…)
■バジル(Ocimum basilicum)のサクッとしたプロフィール。

バジルは食品としてみると定番中の定番といえる代表的な葉物ハーブですね。
強い香りを持ち、青々とした葉っぱが特徴です。
植物学的にはラベンダーやミントなどと同じシソ科植物。
なので精油を持っており、精油/香料の抽出が可能なんですね。意外でしょ?
主な香り成分はオイゲノール(クローブと同じ)やリナロール(ネロリ,ラベンダーと同じ)など。
なので癒される心地よい香りの反面、重めのアジアンスパイシーな香りがします。
・・・おいらの友人の北大出身の方が、なにやらバジルを水耕栽培して与える液肥ごとに代謝生産する成分がどう変わるのかの研究やってたっけなぁ。
生育特性を前述しますが、ラベンダーやマジョラムとは違いバジルは水分をかなり好むシソ科植物でして、そのため原産地は地中海周辺ではなく雨が多いインド南部や東南アジアがバジルの原産地とされています。
香料作物として有名なシソ科パチュリと同様の生育エリアのようです。
バジル特産地の印象が強いイタリアなど欧州へは、おそらくアラブの海洋交易などで種子貿易として伝わっているハズです。
栽培レポート:バジルは水分と肥沃な土壌が好み。

いよいよ食利用が追いつかなくなる
このごろ北海道では8月に差し掛かると、とてつもなく雨の日が増えます。
ここ数年の傾向で、ラベンダー栽培やる身としてはけっこうネックな気候です。
そんな中、ラベンダーやローズマリーと同じくするシソ科ハーブのバジルですが、彼らは逆に雨が降るとその草丈をどんどん大きくします。
バジルはどうやら雨・水気には強いらしく、コモンラベンダーなどが大の苦手としている高温&多湿もものとしていない様子でした!
おそらくサイクロンの発生地点である赤道直下の東南アジアの熱帯かつ多雨な気候で育っていた地域特性によるものでしょう。
雨が降って土壌有機物の分解が促進されて土壌養分が豊富になり、その豊富な養分をバリバリ吸収できる能力が高いんでしょうねバジルは。
かえって乾燥に強いかどうかは…わかりませんでした!
ラベンダーはフランスの岩がちな荒野・貧栄養地帯に生育するので窒素固定能力はさほど高く無いようで、栄養過多となると枯れやすくなってしまいます。
■Materials & Methods
今までは夏景色のバジル写真ばかりをお見せいたしましたが、肝心の蒸留収穫の期日はなんと11月の6日。
バジルは寒さを感じて葉っぱを落としはじめている頃での収穫となりました。本来の精油抽出の時期ではないです…

雪混じりのようなみぞれ雨が降りしきる中落葉して葉っぱがまばらなバジルの全草を刈り込み収穫してきました!

バジルには耐寒性がきわめて弱いらしく?北海道の冬を経ると地上部が全枯れしてしまうそうなので根元だけを残し地上部(枝葉)はすべて細かく細断して収穫しました。
デカい葉っぱも蒸気を妨げないようにある程度ちぎって細かくしています。
晩秋といった時期ですが、いまだに香りは強いです。触っただけでバジル特有のクローブ・アニス様な甘くスパイシーな香りが立ちこめます。
この香りを精油として抽出できるのかと思うとうっとり恍惚としますね…。

収穫したバジル2品種の素材重量は全重量2815から容器分854を差し引いて1961グラムでの蒸留となりました!
バジルの蒸留方法は水炊き蒸留とした。

抽出開始までにかなり時間がかかる。
バジルの葉っぱは熱が入るとかなりシナシナになってしまい、蒸気水から立ち上がる水蒸気を妨げてしまう・塞いでしまう可能性があったので、柑橘果皮や木材チップを蒸留する際に用いる缶焚き蒸留法を採用しました。
水に蒸留素材を全て沈めて煮込みつつ蒸留する方法です。
かつてのフランスでの伝統的な蒸留方法(前期~1920's)でもありました。

えー、蒸留時間は忘れました!やる気のなさが垣間見られますね!
おそらく1時間半とかだったハズです。
■蒸留結果は…!?

蒸留開始直後のオイルセパレータのようす。
すごい!ちゃんと透明な油層が!!!
食うばかりのバジルから精油が取れるなんて思ってもみませんでした。バジルの精油初めて見た…

蒸留結果はピペット計測で3mLでした!
時間の経過とともに精油にオリーブ油のような色がついてくるようすでした。
おそらくオイゲノールやカリオフィレンあたりの質量重めC15テルペン類によるものでしょうか。
香水などに利用するならば、やはりラベンダーやイランイランなどと同じく、蒸留区分50分未満の透明な精油を回収するべきなのでしょうね。

味はしないがこのままでも茹でサラダとして食べられるが、多すぎるので食べなかった。
蒸留完了後の煮込み済バジル。完全に香りが抜き出されていて、茹でサラダのような香りしかしません。ほぼ無臭の物体となっていました。
ちゃんと精油として抜き出せているようです!
1.収油率 - EO Yield
では、本来の収穫時期ではありませんが、秋収穫バジルの収油率を算出してみます。
抽出量[ 3mL ]÷ 素材重量[ 1961g]x 100 = 0.152%
0.1%台なのでかなり低めの値ですね。
カキドオシやヨモギ葉っぱ素材などの収油率に近い値でした。
香りは強いんですが、意外と収油率が低いんですね…(たぶん晩秋だから)
おそらくですが、乾燥土壌で栽培すると植物に生命危機を意識させることできるので、精油の保持量/抽出量は上がるハズです。
2.香りとか - EO scent
夏の間は葉っぱに軽く触れるだけでお腹がすくような美味しい香りを強く放っているバジルですが蒸留し珍しい精油状態にすると、香りが意外と変わるのです。
つまりバジルの持つ香り成分が精油(油)と蒸留水(水)の双方に逃れてしまうことによります。
バジル芳香蒸留水の香りは、生の葉っぽい香りと甘い香りが蒸留水に移るようでした。
バジル精油の香りは、意外とハッカっ辛い香りが特徴の精油となっていました!ハッカに近い、Theハーブ!な印象をもつ香りの精油でした!
Add. 12/31追記
北米大陸の針葉樹精油について調べているところで、著名な植物研究家ジャンヌ・ローズ氏の詳しいブログ記事をみっけました。
そこでバジル含むあらゆる植物のケモタイプ化について触れられていたのでご紹介します。(残念なことに今年2024/06/15に亡くなられたそうです)
ジャンヌローズ氏の有名な学術功績
→蒸留水「ハイドロゾル」を学術用語として定着させる。など
著者によると、「バジルは、ケモタイプが植物の香りをどのように変えるかを示す良い例」であるとして、ある種の精油品質が土地・気候の影響を如実に反映し示すかの研究モデル植物として良く活用できる植物だと述べています。
論文のようにソースは明記されていませんが、「地域の標高が高い場合、バジルはより多くのリナロールを生成する可能性があります。」と標高差(≒水平分布も考慮?)が精油品質を左右する大きな要素であるとも述べています。
光の強さと高温により樟脳の生成が促進されます。標高が高いとリナロールの生成が促進されることが多く、オイゲノールとチモールは気候の高温と関係があることが多いです。
暖地であればあるほど食害生物が多く、防衛術を学習した結果であろうか?(個人感想)
このことから、国内において特に寒冷地であるとされる北海道では、バジルctリナロールの生産可能性が濃厚であることを示唆しています。
(北海道・寿都町ではバジル栽培による地域おこしが根付きはじめている)
本稿で、日陰(比較的涼しいとも?)かつ湿地である土地でバジルを1年間試験栽培してみましたが、ちゃんとモリモリ大きく育つことを確認できました。
蒸留目的の収穫タイミングでの収油率こそ不明ですが、高品質な香水やフレグランス、アロマテラピー使用に向けたバジルctリナロール精油の生産もそう難しくないのではないか?と考えております。
高リナロール&低エストラゴール/チャビコールが保証されているバジル精油
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