大ゴッホ展で幸せな時空を彷徨う
美術や絵画のことはあまりよく知らなかったのですが、ゴッホの作品はよく目にしていて、生前は絵が評価されなかったことなど、なんとなく気になっている画家ではありました。
それが
原田マハさんの「たゆたえども沈まず」という小説を読んで以来、ゴッホとその弟・テオのことが忘れられなくなり、その余韻は、ほとばしる絵の具のように心のカンヴァスに叩きつけられ、鮮やかな色彩となって咲きはじめました。
ゴッホは日本が好きでした。日本に憧れていました。日本の浮世絵に影響を受けました。浮世絵を目にしてから、彼の絵は変わりました。日本の芸術に恋をしていました。
この小説のラストに近い場面で、弟のテオがピストル自殺を図った兄・フィンセント(ゴッホ)の元に駆けつけ、息絶える直前、固く手を握り合い、魂を通わせます。
━ 兄さん
いつかあなたの展覧会を開こう。
大きな美術館で、世界中からあなたの絵をみるために、たくさんの人が押し寄せるはずだ。
あなたの絵は、海を渡って、遠くまで旅をする。きっと日本までも。
そうだ ━。
あなたの絵は、日本でも紹介されて、数えきれないほど多くの人々が感銘を受けるんだ。
テオはフィンセントの耳もとで、そうささやき続けました。
◇
神戸市立博物館でいま行われている「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」を見に行きました。
平日にもかかわらず、すごい人の数。
実は、これほど多くの人が訪れているとは想像していませんでした。
でも
日本でこれだけの数の人たちが見に来ている現状に、テオがフィンセントにささやいたあの場面が甦ってきたのです。
まるで、彼らが交わした未来の展覧会にいるかのように。
鮮やかな夜のカフェテラス

「夜のカフェテラス」もそうでしたが、素晴らしい絵ばかりでした。
重厚な絵の具が照明に照らされてキラキラと瞬き、ほんのささやかな時間でしたが、時空を彷徨っているような気持ちになりました。
テオの願った未来の展覧会は、きっと今、私たちの中に生き続けているのだと思います。見ることができて本当に幸せでした。
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