【外伝】:水底の逢瀬 — 人間と人魚王子

※この作品はフィクションです。
※この話は、AIで生成しています。
※個人の想像・創作を元にした会話、感情描写を含みます。
※同性同士、距離感の近い場面、軽い接触表現があります。
※実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※苦手な方、そのままそっと閉じてください。

※本作は、
X企画「#水曜日の水中世界」への参加を
きっかけに生まれた短編連作を、
note掲載用に再構成したものです。

水曜日の水中世界 から生まれた、小さな水中譚
人間の青年・雅夜と、
人魚王子・柊輝の短いお話です。
一枚の水中イラストから始まり、
毎週水曜日15:03に少しずつ投稿して、
全10話で完結しました。
これは小説というより、
画像と短文で沈めていった、
ひとつの水中記録です。

第1話|深海の王子、異物に気づく

深海は、いつも同じ静けさで満ちていた。
その均衡を破ったのは、
この海にいるはずのないひとりの人間。
「……誰だ、お前」
沈んでいく黒を見つめたまま、
王子は手を伸ばす。
まだ触れていない。
けれど、もう見過ごす気もなかった。
恋はたぶん、救い上げた瞬間じゃなく、
手を伸ばした理由が
自分でもわからなくなった時に始まる。
第2話|救い上げる腕

沈みきる前に、王子の腕がその身体を捕まえた。
「死なせる気はない」
そう告げるみたいに、
王子は人間を抱き留める。
水の中では、
たった一度の接触ですら逃げ道にならない。
意識のない人間を引き上げる腕は、
救いであるはずなのに、
どうしてこんなにも熱を帯びて見えるのだろう。
まだ名前も知らない。
それでももう、他人の距離ではなかった。
第3話|深海宮で目を覚ます

目を開けた先にいたのは、
光ではなく、海より深い目だった。
「……ここは、どこだ」
問いに、言葉は返らない。
代わりに王子は、
逃げるなと言うみたいにそこにいた。
助かった安堵より先に、雅夜は思う。
——こんな綺麗なものに、見つかってしまった。
第4話|言葉にならない交流

名前も、出自も、何ひとつ通じない。
それでも、視線だけは何度でも重なった。
近づき方を知らないまま、
二人は手の動きと間合いだけで、
少しずつ相手の害意のなさを覚えていく。
王子は急かさない。
ただ、雅夜が水の重さに戸惑うたび、
触れるか触れないかの距離で手を差し出す。
そのたびに、雅夜もまた、
拒まないことを覚えていった。
言葉はなくても、温度は伝わる。
触れた指先が静かに残るたび、
何かが始まってしまっている気がした。
たぶんそれは、
あとから振り返ればいちばん厄介で、
いちばん抗えない始まりだった。
第5話|王子の海を見せる

王子が見せたのは、王の海だった。
頭上から射し込む光の揺れも、
群れる魚の軌道も、
崩れた宮に沈む影さえも、
この場所だけの静けさを抱いている。
雅夜はしばらく何も言えなかった。
ただ目の前に広がる景色を見つめて、
海というものがこんなふうに美しく
残酷でいられるのかと、
ようやく息を吐くみたいに思う。
「……綺麗だ」
ほんの短いその一言だけで十分だった。
王子は海ではなく、その景色を見ている
雅夜の横顔を見ていたからだ。
見せたかった場所ができた時点で、
もう心は一人のものじゃなくなっている。
想いはたぶん、そういうふうに始まる。
第6話|手を引く

それまでは、守るための接触だった。
危ない場所で支えるため、
迷った時に止めるため、
ただ生かすためだけの触れ方だった。
けれどこのとき初めて、
王子ははっきりと意思を持って雅夜の手を取る。
助けるためではなく、
自分のいる世界へ連れていくために。
雅夜は一瞬だけ目を見張った。
振りほどこうと思えば、たぶんできた。
それでもそうしなかったのは、
引かれた手の強さより、
そこに迷いがなかったからだ。
導かれるまま進みながら、
雅夜はようやく気づきはじめる。
攫われているのは身体より先に、
たぶん心のほうなのだと。
第7話|誓いの手前

あと少し近づけば、きっと戻れなくなる。
その距離を知りながら、
二人とももう離れ方を忘れていた。
名を呼ぶことひとつで、胸の奥に、
触れてはいけない場所まで揺れてしまう。
視線が合う。
指先が重なる。
ただそれだけのことが、
ひどく決定的に思えた。
王子の手は優しい。
優しいくせに、ずるいほど強い。
拒まれていないことを知っている手つきだった。
結ばれる前がいちばん美しいのは、
まだ壊れていないからじゃない。
壊れる未来をどこかで知りながら、
それでも手を伸ばしてしまう瞬間だからだ。
第8話|幸福の静かな底

海の底にも、
こんなに穏やかな時間がある。
言葉もなく、急ぐ理由もなく、
ただ同じ静けさの中で隣にいるだけの時間が。
それを知ってしまったことが、
いちばん残酷だった。
このままでいられたらいい。
そんな願いは、
口にした瞬間に壊れやすくなる。
だから二人とも、
たぶん同じことを思いながら何も言わない。
寄り添う距離が自然になっていくほど、
失う時の痛みは深くなる。
幸福は長く続くから尊いんじゃない。
終わると知ってなお、美しいから刺さる。
この静かな時間は、
優しい顔をして、
もう十分すぎるほど残酷だった。
第9話|海は人を留めない

美しいだけでは、住めない世界がある。
どれだけ願っても、
海は人間を自分のものにはしない。
それが、少しずつ現実の形を取りはじめていた。
雅夜の呼吸は浅くなり、
王子の目は、
それを見ないふりができなくなっていく。
この海がどれほど美しくても、
ここは彼を生かす場所ではない。
「……もう、無理するな」
やっと落ちたその声に、
王子は何も返せなかった。
返せないかわりに、
離れかけた指先をもう一度だけ包み込む。
守りたいのに、留められない。
王子なのに、どうしようもない。
海が綺麗なまま残酷なのは、
そういうところだ。
第10話|水面の別れ

最後に近かったのは、
唇じゃなくて、手だった。
届いているのに、
もうこれ以上は一緒にいられない距離。
ぬくもりだけが、かろうじて残っていた。
言葉は聞こえない。
それでも王子の目は、確かに告げていた。
戻れ、と。
生きろ、と。
想っているからこそ、
離さなければならないのだと。
雅夜は何も返せないまま、
ただその手を離せずにいる。
けれど世界のほうが、
その迷いを許さない。
光は彼を押し上げ、
海は王子を底へと繋ぎとめる。
指先からこぼれるように、
最後の繋がりがほどけていく。
海の底に残った想いは、
もう浮かび上がらない。
だからこそ、
ずっと綺麗なまま沈んでいる。

最初は、企画参加のための一枚でした。
けれど、人間の青年と人魚の王子を
向かい合わせた瞬間に、そこにはもう
「出会ってしまった二人」の気配がありました。
言葉が通じない。
世界も違う。
それでも視線だけは重なって、
手だけが残って、
最後には生きる場所の違いで離れていく。
短い投稿を毎週重ねる形だったからこそ、
説明しすぎず、沈黙ごと残せた気がします。
読んでくださった方、
見守ってくださった方、
ありがとうございました。



いいなと思ったら応援しよう!
ご覧いただきありがとうございます。
もし作品がよかったら、チップで応援してもらえると励みになります🌸