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映画評 顔を捨てた男🇺🇸

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かつての自分にそっくりな人物との出会いによって運命の歯車が狂い始めていく不条理スリラー。主演を務めたセバスチャン・スタンが第74回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞。

顔に特異な形態的特徴を持つエドワードは、隣人のイングリッド(レナーテ・レインスペ)に対する想いを閉じ込めて生きていた。ある日、彼は外見を劇的に変える過激な治療を受け、念願の新しい顔を手に入れる。別人として順風満帆な人生を歩みだすエドワードだったが、かつての自分の顔にそっくりな男オズワルド(アダム・ピアソン)が現れたことで、運命の歯車が狂いはじめる。

「顔が良ければ全て上手くいくのに」と、人生の一度や二度考えたことはないだろうか。容姿の良さは誰しもが羨み求めるものであり、得へと繋がる考えは一般論として普及している。神経線維腫症によって特異な容姿を持つエドワードが、自信を持てず、人目を気にしながら生活する様子に共感を抱かざる得ない。

エドワードは容姿を端麗にする手術するのだが、人生は一向に好転しない。あからさまに顔で弄られるようになり、顔が変わった分イングリットとの接点は白紙になる。何とか彼女との接点を見出すも、過去の自分とそっくりの容姿を持つオズワルドが意気揚々と現れたことで、悪化の人生へと転がり落ちる。

ここで味噌なのは、エドワード自信が「容姿が良いことは正義」というアイデンティティ化していることにある。オズワルドに配役のみならず、イングリットまで取られたことで嫉妬心に渦巻いてる様子は滑稽に映る。ラスト、オズワルドがエドワードに放った台詞は本作が設定する問いに対する解であり、エドワード最大の欠点が浮き彫りになる。

オズワルドを演じたアダム・ピアソンの演技なしには本作は成立しなかったであろう。明るく社交的で、人生を謳歌している様子には、人生において容姿の良し悪しは最重要事項ではないのではと思わせる。容姿が良ければ人生安泰と思っている観客に対して、『サブスタンス』と同等の攻撃性で殴られた感覚に陥るだろう。

劇中、エドワードから着想を得たであろう演劇描写があるのだが、自分の人生を物語として昇華される暴力性が描かれていて面白い。演目と現実とのギャップ、人生で訪れなかったハッピーエンド、性格が正反対の役者と役所、エドワードからすれば、欠点を突きつけられ、これまでの人生を否定される気にならざる得ない。彼の滑稽な行動の数々は自己防衛だったのかもしれない。

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