映画評 プロジェクト・ヘイル・メアリー🇺🇸

小説家アンディ・ウィアーのベストセラーSF小説を『LEGO ムービー』『21ジャンプストリート』のフィル・ロード&クリストファー・ミラーのタッグによって実写映画化。
しがない中学の科学教師グレース(ライアン・ゴズリング)は、太陽のエネルギーが奪われるという原因不明の異常現象から地球を守るための“ヘイル・メアリー”プロジェクトに抜擢され、地球から遠く離れた宇宙へと送り込まれる。自らの科学知識を頼りに奮闘するグレースは、宇宙で思いがけない出会いが待ち受けていた。
壮大な設定のSF映画とは裏腹に、どことなく穏やかであった。その要因は、グレースが常に無心かつ冷静さを保った行動を取り続けていることにある。特に冒頭、理由もわからず宇宙で目覚めた状況下で、顔色を一切変えず、淡々と状況を整理する描写は、本作の落ち着いたテンションを決定づけた。
精神が落ち着いているからこそ、後は現状を打破するために行動し続けるだけ。本作は、グレースの状況が右肩上がりで良くなっていく「どん底に落ちたら這い上がるのみ」を見事に体現した主人公の物語なのだ。さらにその過程が、映画の盛り上がりにも作用していく。終盤にかけては大いにテンションが上がることだろう。
本作でテンションとエモーショナルを爆上げしたのがロッキーだ。岩の形をした異質な造形に、サイレント映画的な動きを加えたことで、可愛いさが強調されている。グレースに可愛い味方ができたことは心強い存在となったに違いない。また『E.T.』のような異文化交流を通じて芽生えた友情を描く「ファースト・コンタクト」ものとしても安心して鑑賞することができる。
グレースとロッキーの友情はバディ映画としての感動を呼び起こす。お互いの目的のために協力し合うのは勿論のこと、身を挺して相棒を危機から守ろうとするシーンには涙が誘われる。ファースト・コンタクトを通じて絆を深め、照れ隠しもありながら、大事な時には率直に想いを伝える。見ていて心地よいバディはそうそうない。
本作が秀逸なのは、SF映画の魅力をうまく取り入れつつ、それをバディものとして見事に昇華している点にある。つまり、ジャンルの垣根を超えた楽しさに満ちていることにある。そこには、画面越しに押し付けてくるのではなく、観客一人ひとりの中にある「映画の思い出」を自然に呼び起こし、再認識させてくれる作品なのだ。
