技能G2話 最初の壁は「クセ」だった― できているつもりの動きほど、崩れやすい ―
技能グランプリに挑戦すると決めて、まず最初にやったのは 自分の動きを撮ること だった。
スマホを固定して、
スパークリングの抜栓、ワゴンサービス、ナプキンワーク、魚のフィルタージュ……。
久しぶりに、仕事中の「私」を客観的に見ることになった。
そして最初に思ったのは、
「あれ? 思っていたより雑じゃない?」
という、正直な感想だった。
■ “できているつもり”って本当に怖い
普段の営業では問題ない。
お客様に不快な思いをさせるわけでもないし、
職場でも誰に何を言われることもない。
でも、競技レベルで見ると話はまったく違った。
動画の中の私は、
指先の締まりが甘い
持ち替えの動きが少し大きい
歩幅がぶれる
皿を置く瞬間の“音の消し方”にムラがある
説明の前に入る呼吸がクセになっている
営業では目立たない細かい部分が、競技では“全部表に出てしまう”という現実。
したくてしているクセではなく、気づかないまま体に染みついたクセ。
これは思っていた以上に厄介だ。
■ 「クセと向き合う」のは、地味にメンタルを削る
クセとは、良い悪いではなく、“見たくなかった自分の断片” なんだと思う。
動画を見ながら、少し落ち込んだ。
「え、こんなに乱れてたっけ?」
「もっとできていると思っていたのに」
そんな感情が普通に出てきた。
でも同時に、こんなふうにも思った。
「あ、ここを直せば変わる」
「気づけた時点で半分クリアじゃない?」
競技は“粗さを隠す作業”より、“気づきを増やす作業”が圧倒的に重要だと改めて感じた。
■ 私のクセ①:手元だけスピードが上がる
動画で一番目立ったのは、手元のスピードだけが時々速くなる こと。
焦っているわけではない。
むしろ“いつもの自分”なんだけど、競技で見ると「雑」に見える瞬間がある。
サービスマンの難しいところは、
「ゆっくり=丁寧」ではなく
「滑らか=丁寧」
なんだよね。
私はこれを意識しているつもりが、動画ではできていなかった。
■ 私のクセ②:間の取り方が“偶然”になっている
競技では“間の質”がすごく大事。
説明前の一拍、礼に入る前の静けさ、何かを置く瞬間の呼吸。
これらが日によって微妙に変わる。
クセというより
“自然体に頼りすぎてブレる”
というタイプの乱れ。
これは自分でも驚いた。
■ 私のクセ③:体の向きがほんの少しズレる
競技では、体の角度・距離・向きすべてが「意図」になる。
しかし動画の私は、ほんの少しだけ角度がズレる瞬間がある。
営業では問題ない。
むしろ柔らかい雰囲気になる場面も多い。
ただし競技では、
柔らかさ → 雑さに見える可能性
これを理解できたのは大きな収穫だった。
■ クセに気づくと、練習が急に楽になる
意外かもしれないけれど、クセに気づくと練習が急にやりやすくなる。
理由はシンプル。
直す場所が明確になる
できない原因が言語化できる
全部が悪いわけじゃないと分かる
修正した時の変化がすぐ見える
つまり、練習の“方向性”がはっきりする。
若い選手は真っ直ぐ伸びる。
私はクセの修正から始まる。
でも逆に言えば、クセを直せた瞬間、伸び幅が大きい。
■ まずは「気づけた自分」を褒めたい
技術って、“できなさ”に気づいた瞬間がスタートライン だと思う。
落ち込むのは自然だけど、それ以上に価値があるのは
「見えなかったものが見えた」
という事実。
いくつになっても、この気づきが得られるのは幸運だと感じた。
■ というわけで、第1段階はクリア
最初の壁は技術そのものではなく、「クセを認識すること」 だった。
ここがクリアできた今、次は修正のステップに入る。
クセの直し方、動作の“型”の作り方、歩数や配置の決め方、手元のリズムの整え方。
そのあたりを、第3話でまとめていこうと思う。
