学食のサンプルを食べていた頃
学会などで各地の大学キャンパスに行く機会があると、ランチタイムに学食を訪れます。
「── 外に出ましょうか?」
知人に誘われればキャンパス外のレストランに行きますが、実は学食の雰囲気がけっこう好きなのです。
同じようで、いえいえ、各学校の個性がメニューや学生の服装・会話に現れていて面白い。
そんな時、心は既に『学生のひとり』に戻り、
《見かけはジジイ》
をすっかり忘れている ── 注意して行動せねば。
一時期会社員との兼務で会議に出たり講義をしていた市内の大学でも、近くに外食店が無いこともあり、昼は学食で、が多かった。
その学食もコロナ禍の波はもろに受けて、講義の多くがリモートになった間はしばらく閉鎖され、復活した後もテーブルは小さくなり、かつ、透明なパーティションで区切られた。
私の学生時代、キャンパス外と比べて学食のメニューはとにかく安かった。1日3食 ── というのはさすがに稀だったけれど、昼夜と2食を学内で済ませる学生もざらにいた。
けれど今は巨大なファストフードチェーンと比べれば価格的優位性はそれほどでもなくなった。
教職員も利用するとはいえ、顧客のほとんどが二十歳前後の若者 ── More-calorie派なので、やはりラーメン、カレーだったりかつ丼だったりが主力選手になりますね。でも、昔と違って、野菜中心のメニューだったり、「アヒージョ風」なんて、オシャレなメニューもあるようです。

(2年半前の撮影だから、今はもっと値上げしてるでしょうね)
カラー印刷されたメニューが並ぶショーケースをながめてつぶやく:
「……もう、あんなことはできなくなったな……」
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学生時代(特にその前半)、自費出版と海外旅行の費用を捻出するため、過剰なまでに生活費を押さえていた期間があった。
そこで考え付いたのが、生協食堂の見本ケースに入っている実物サンプルをいただくことだった。
定番のラーメン、カレー、うどんの類は蝋製のサンプルが並んでおり、もちろんこれは食べられない。
けれど、異なる価格で2種類あった『日替わり定食』だけは、その日に作られた実物がガラスケースの中に陳列されていた。
ある時ちょうど、その実物の前に置かれた価格プレートをひっくり返しに来た食堂のおばちゃんと出くわした。プレートはひっくり返すと『売り切れ』の文字が出る。
「これ、もうないの?」
「ああ、ちょうどおしまいだよ」
「だったら、これ、もらっていい?」
「あ? ……ああ、いいけど……これでいいのかい?」
「いいの、いいの……ラッキー!」
ホンモノの定食が載った皿を持ってテーブルに持って行って食べた。
ライスだけ食券を買った記憶がないので、ご飯も実物が置いてあったのか、ワンプレートランチの形態だったのかは憶えていない。
この作戦で、学食のガラスケースで『売り切れ』を見るたびに食券売り場のおばちゃんに了解をもらっては食べていた。
「タダのメシって、なんて美味いんだろう!」
しかし ── ある日突然、それは禁止された。
「お腹を壊すといけないからね」
「ええーっ! ボクの胃は頑丈だから、大丈夫だよ!(これは事実)」
「ダメダメ、そういうことに決まったのよ」
このようにして、マイ・オリジナルの『ビジネスモデル』は崩壊した。
……心当たりはあった。
その少し前から、私が見つける前に『売り切れ』の定食が消えていることが何度かあったのだ。
創業者の真似をする連中が現れ、食堂で問題になったようだった。
「なんてやつらだ!」
自分のことは棚に上げて憤慨した。
……まあしかし、当然ですよね。
むしろ、長ければ4-5時間も室温で放置されていた料理を食べて、よく元気でいられたものです。
