すぐそこにある《融資》(SS;1,100文字)
おい、オッサン、金貸せって言ってるだろ、こっちがおとなしくしてるうちに出した方がいいぜ、おい! ……なんだ、坊主、何じっと見てるんだよう!
「いやあ……お兄さんが今胸ぐら掴んでるそのオジサン、どう見ても金融業者じゃなさそうだよ。お金を借りたいなら銀行に行った方がいいと思うな」
何言ってるんだ、お前? 銀行がオレに金貸すわけないだろう! 見てないで、あっち行きな!
「でも、ちゃんと利子付けて返すなら貸してくれると思うよ。銀行が無理ならサラ金だってあるしね。お兄さん、いくら借りたいの?」
いくらでも……そうだなあ……とりあえず5万、ってとこかな……
「そんな現金、キャッシュレスの時代に普通の人は持ち歩いていないよ。何に使うの?」
え? 何でもいいだろう! 坊主には関係ねえだろ!
「これは一般論だけど、融資を受けたかったら、担保があったとしても用途は明らかにした方がいいよ。何に使うの?」
それは……競輪だ。明日のレースに重要な情報を仕入れたんだ。間違いなく当たる! 確実に儲かる!
「競輪で車券を無作為に買い続けた場合の長期的な期待値は、購入額よりかなり小さくなるけどね……まあ、何かインサイダー情報を持っているなら別だけど……」
── 持ってるんだよ!
「じゃあ、そのオジサンひとりじゃなくて、広く融資を募ろうじゃないですか」
はあ……?
「みなさーん! 今オジサンを締め上げてお金を借りようとしているこのお兄さん、確実に競輪で儲かるネタを持っているらしいですよ! このお兄さんに出資しませんか? 5万円必要だっていうから、ひとり千円で50人、早いもの勝ちですよ!」
お…おい、待てよ! 何言い出すんだ? ……野次馬が集まってきたじゃねえか……
「だって、確実に儲かるんでしょ? 明日競輪の払い戻し金が入ったら、利子は1割付けて返済ってことでいいよね?」
はあ? 1日で1割? ……トイチより厳しいじゃねえか!
「そりゃそうでしょ、担保だって無いし、お兄さんの言葉を信じるだけなんだから……みなさーん、どうですか? ひとり千円、ひとり千円の出資ですよ! あ、お巡りさん、お巡りさんもこのお兄さんに出資しませんか? 明日になったら利子1割付けて返済するって!」
あ……あ、いや、お巡りさん、何でもないんです。え、今胸ぐらをつかんでる手は何かって? ……いやその……え、署で話が聴きたい?
「え、ボクも? 警察まで……? 名前はユウタですが……『出資法』違反の共犯? 高利を謳って広く出資を募っていた……から……?」
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この続きは……
