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『哲学入門』 読書共有【第11弾】

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はじめに

今回はドイツの哲学者カール・ヤスパース『哲学入門』(草薙正夫訳、新潮社、1954年)からの共有です。

ちなみに本書は「入門」と題されておりますが、実際にはヤスパースの難解な哲学がラジオ講演されたものが内容となっており、実はあまり入門者向けではないかもしれない点が哲学書らしいと言えます。

これまでの読書共有で何度か「変化」の問題について触れてきましたが、今回はヤスパース哲学を通して「人間の変化」をパーソナルトレーナー風に解釈し考察してみたいと思います。なおこの考察は、過去に全国スタッフ研修で一部取り上げられた内容でもあります。

以下では、まず「哲学すること」と「ヤスパースの人間理解」について簡単に見ていくことにします。


哲学すること

本書では哲学の本質や意味が問われつつ、「哲学する」とはどういうことかが明らかにされています。ヤスパースによれば、哲学においては「知る」ことよりも「考える」ことに価値があり、最終的な答えを求めるのではなく問い続ける姿勢そのものが重要です。

日々の生活において、常識や慣習といった既成概念に囚われることなく、誰しも自分自身で考え問い続けることが大切であるという点で、哲学は専門家だけのものではなく万人のために開かれているというのが本書での重要な主張です。

特にヤスパース哲学で重視されるのは他者との「交わり(コミュニケーション)」であり、この中でこそ哲学は真価を発揮し、各人が本来的に自分自身になることができるとされています。ヤスパースの人間理解も、この「交わり」の哲学に貫かれています。


ヤスパースの人間理解

ヤスパースによれば、私たち人間は一様で閉じた様式ではなく、多様で開かれた様式において存在しており、また絶えず状況のうちで変化していくものとして規定されています。簡単に言えば、私たちは常に私たち自身が考えている以上の存在であり、自分や他者について完全な形で知るということができない存在であるということです。

例えば肉体を持つ「現存在」として、思考活動をする「意識一般」として、精神活動をする「精神」として、真に自分らしい生き方を追求し実現していく「実存」として、つまり決して一点で汲み尽くされることのないものとして、私たちは常に状況の中で変化しながら存在しています。

上記の諸様態(現存在、意識一般、精神、実存)自体の正否はともかく、この人間理解によって自己、他者、世界への理解や関わり方も変わってくると考えられます。ごく簡単に言えば、自己、他者、世界へのどんな理解も絶対的ではありえず、常に変化のうちでそれらとの関係を保ちながら理解を深め行動していくことが大切だということです。

例えば人間同士のコミュニケーションもこうした諸様態に即して理解することができるならば、日ごろのコミュニケーションの仕方を反省する機会となり、一元的で閉鎖的なコミュニケーションではなく、多元的で開放的なコミュニケーションが可能となるでしょう。

ここでヤスパース哲学の詳細を展開することはできませんが、彼の哲学から引き出せる重要な点は、多様な観点から人間、コミュニケーション、真理、変化などについて考える思考的枠組みを獲得できるということだと思います。こうした哲学的態度により、狭い視野から抜け出て広い視野で物事を考え、自分とは異なった考え方や他者に対して自分を開くことが可能となるように思われます。

最終的な答えを求めるのではなく問い続ける姿勢がここでも貫徹されており、究極的には他者とのコミュニケーションの中で本来的に自分自身になることがヤスパース哲学の目指すところだと言えます。


「人間の変化」を考える意義

上記のような人間理解に即せば、「人間の変化」も様々な仕方で生じ認識されるということになります。

私自身はパーソナルトレーナーとして、基本的にはお体のビフォーアフターを通してお客様の変化をサポートすることが多いわけですが、しかしお体以上に心の変化も大きく、変化というのが決して単純な事象ではないということに気づきました。

その際、「ボディメイクにおける変化の諸様態」をヤスパース哲学風に描き出してみようと思いつきました。もちろん試みに過ぎないので、変化の全てを網羅しているわけではないでしょうが、大切なのは様々な視点からお客様の変化を捉えることでコミュニケーションを深め、成果承認と共に存在承認をしていくことだと思うのです。

哲学は単なる思考の道具ではなく、それ自体が一つの実践だと私は考えます。「ボディメイクにおける変化の諸様態」を描き出すことで、コミュニケーションの取り方、例えばお客様から「変化を感じない」と言われた場合の対処法や、誉めポイントの提示、承認の仕方など色々と考えることができるでしょう。

そうすることで、お客様の変化にとって大切な「環境」についても再度、深く考える機会が得られると思うのです。なお「環境」の大切さについては読書共有【第10弾】をご参照いただけますと幸いでございます。


ボディメイクにおける変化の諸様態

以下、「ボディメイクにおける変化の諸様態」を描き出してみましたが、もちろんこれは一つの試みに過ぎず、全てを網羅しているわけではないでしょう。先述のように、大切なのは様々な視点からお客様の変化を捉えることでコミュニケーションを深め、成果承認と共に存在承認をしていくことだと私は考えています。

・数値的変化: 体組成、メジャーリング、挙上重量などの変化
・容姿的変化: 見た目、体型、姿勢、服飾などの変化
・精神的変化: 自信、プラス思考、ワクワク感、メンタル、心境などの変化
・動作的変化: トレーニング動作、ポージング、歩き方、所作などの変化
・生活的変化: 食事、睡眠、運動など、その内容や優先順位の変化
・対人的変化: 自分が変化したことによる、人に対する接し方の変化
・実存的変化: 真に自分らしい生き方を追求し実現していく中での変化

例えば「数値的変化」(体重などの変化)があまりないと悩まれているお客様に対しては、上記の諸変化の中で該当するものをピックアップしてお伝えすることが大切でしょう。少しでも変化が認められるものであればきちんと言葉で伝えることが重要です。

また、読書共有【第4弾】で紹介した「嬉しい探し」ゲームも参考になるでしょう。これはポジティブ思考を通して新たな意味づけを可能にすると共に、他者の立場に身を置いて相手を理解したり共感したりすることにも関わる点、他者志向的な側面を強く持っています。お客様の変化を捉えることでコミュニケーションを深め、成果承認と共に存在承認をしていく際にも重要な観点となるでしょう。

上記はほんの一例に過ぎないですが、誉めポイントや承認の仕方、コミュニケーションの取り方は無限であると思います。

最後に、ボディメイクを通して自分が変化することを恐れないという点は非常に大切だと思います。というのも、ボディメイクそのものが「現状維持バイアス」を打破していく試みにほかならないからです。先に挙げた変化の諸様態を見ても、変化にはポジティブな面が数多くあります。

また、お客様の変化を通して私自身も変化するというWin-Winの関係の中でこそ成長と貢献の意義が大いに感じられ、それに伴い働きがいや生きがいといったことも生じてくるように思います。

ボディメイクを通して、常に感謝の気持ちを忘れずに人々の心に寄り添い、良好な関係を築くことで自分も他者も幸福になるWin-Winの道を追求すること、そしてこれを諸々の変化のなかで捉え実現していくことがパーソナルトレーナーの役目であると考えています。


おわりに

今回も最後までお読みいただきまして誠にありがとうございます。
日々少しずつ閲覧数やリアクション数、フォロワー数も増えてきて嬉しい限りです。今後も最低週1回の更新を目指して頑張ってまいります。

あえて本の要約といったことはメインとせず、私なりの観点から面白いと思った箇所の共有という限定的な内容にしております。それが少しでも皆様の記憶に残り、日々の読書体験の深まりや具体的な行動・実践に繋がるのであれば幸いでございます。

今後とも宜しくお願い致します。

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