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国が始めた「ゾンビ事業所の間引き」。病院・施設も倒産する時代

こんにちは。元理学療法士として某大手JTCの介護事業部門で最優秀施設長を務めたのち、現在は本社運営部門の中枢でヘルスケア事業の戦略を担ているshunと申します。

これまでの記事では、医療や介護の現場に深く根付いている「気合と根性」という非科学的な精神論を徹底的に解剖し、仕組み化によって残業ゼロと最高評価を同時に達成するオペレーション改善のノウハウを提示してきました。また、私自身が新卒で入った病院を社会人基礎力ゼロで逃げ出し、ブラック企業を「退職代行」でバックれたという最低のクズだった黒歴史から、いかに這い上がってきたかについても、包み隠さずお話ししてきました。

今回は、私たちが働く医療・介護業界の「最も冷酷で、最もタブー視されているマクロ構造の真実」を共有します。

今、この文章を読んでいるあなたに、一つだけ不躾な質問をさせてください。

「あなたが毎日、人手不足にピリピリしながら、サービス残業をして書類を片付け、休日に自腹で手技の勉強会に行っているその職場は、あと3年持つと思いますか?」

もし、あなたが「自分が頑張れば、いつか職場も良くなるはず」「患者様や利用者様のために、今は耐える時期だ」と考えているなら、申し訳ありませんが、あなたの脳は完全に構造にハックされています。

結論から言います。現在、国(厚生労働省・財務省)は、あなたが今いるその「低効率な中小・零細事業所」を、制度の力を使って合法的に市場から間引こう(潰そう)としています。

あなたが報われないのは、あなたの努力や能力が足りないからではありません。「国が意図的に仕掛けた、ゾンビ企業間引きシステム」の盤面(泥船)の上で、必死にプレイヤーとして泥臭い努力を続けてしまっているからです。


今回は、国の思惑、そして診療・介護報酬改定という「合法的な加速装置」の裏側を、大量の省庁データと学術的エビデンスを元にロジカルに暴露します。その上で、私たちが奴隷のように搾取されずに生き残るための「戦略的撤退」と「ルールの設計者」へのシフトについてお話しします。

綺麗事や道徳論は一切排除します。耳障りの悪い、しかし100%リアルな資本主義の現実を直視する覚悟のある方だけ、この先にお進みください。


第1章:コロナ禍という「合法的な加速装置」――データが証明する淘汰の真実

まず、直近数年間で起きたマクロな経営環境の変化を、民間調査機関の冷徹なデータから振り返りましょう。

多くの現場の人間は、「コロナのせいでデイケアの稼働率が落ちた」「ショートステイの利用者激減では今だけ」「コロナが終われば元に戻る」と牧歌的に信じていました。しかし、それは大きな誤解です。コロナ禍とは、単なる一時的な災厄ではなく、国にとっては「業界の構造改革を最速で進めるための合法的な加速装置(トリガー)」でした。

東京商工リサーチが公表している「老人福祉・介護事業の倒産動向」によると、コロナ禍の長期化と物価高騰が直撃した2022年、介護事業所の年間倒産件数は過去最多(当時)の143件を記録しました。そして、そのうちの約4割(63件)が「新型コロナウイルス関連倒産」でした。さらに恐ろしいのは、法的整理に至った「倒産」の裏側で、資金がショートする前に事業を諦めて畳んだ「休廃業・解散」が、年間500件前後のハイペースで発生し続けていたというファクトです。

なぜ、これほどの閉鎖ドミノが起きたのか。事業種別ごとにその構造を解剖すると、国が仕掛けた「ハシゴ外しの罠」が見えてきます。

  • 通所介護(デイサービス):
    クラスター発生の懸念による利用控えが直撃しました。特に、入浴や食事といった「生活インフラ」としての機能が薄く、プレイヤーの個人のスキルややりがいに依存していた「機能訓練特化型」の中小デイサービスなどは、不要不急の外出とみなされて真っ先に稼働率が急落。売上がゼロになっても、家賃や送迎車のリース代、最低限の配置基準を満たすための固定人件費が容赦なく重くのしかかり、キャッシュアウト(資金ショート)へと追い込まれました。

  • 訪問介護:
    利用控えそのもののダメージは比較的軽微でしたが、コロナ禍をきっかけに「極深刻なヘルパー不足」と「歴史的な燃料費・物価高騰」のダブルパンチを受けました。登録ヘルパーの平均年齢が60代を超えるような中小事業所において、感染リスクを恐れた高齢ヘルパーの離職が相次ぎ、シフトが組めなくなって自滅。国からの公定価格(介護報酬)で縛られているため、物価高を価格転嫁することもできず、黒字であるにもかかわらず人員基準を割り込んで閉鎖(黒字倒産)するケースが多発しました。

ここで疑問が浮かびます。「なぜ国は、社会インフラであるはずの介護事業所がこれほど潰れていくのを、ただ黙って見ていたのか?」

答えはシンプルです。それが国の思惑(シナリオ)通りだったからです。

コロナ初頭(2020〜2021年)に国が投下した「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」や、基本報酬への特例加算(0.7%上乗せなど)は、事業所を救うための「救命措置」ではありませんでした。単に、激変緩和措置として「事業所が死ぬまでのタイムラグを作っただけ」だったのです。

経営体力が限界を迎えていた中小零細のゾンビ企業は、2022年以降、融資の据え置き期間が終了して元本返済がスタートした瞬間、そして特例加算という国からの国庫補助が打ち切られた瞬間に、インフレの波に飲まれて綺麗に市場から消し去られました。



第2章:なぜ国は中小を見捨てるのか?――「大規模化・DX」という冷徹な設計図

財務省の財政制度等審議会や、厚生労働省の社会保障審議会(介護給付費分科会)の資料を読み解けば、国が描いている「次世代ヘルスケア産業の設計図」は一目瞭然です。国が目指しているゴールは、「生産性の低い小規模事業所の徹底的な排除と、資本力のある大手法人の大規模化・集約化」に他なりません。

国が中小を見捨て、大手に集約したい本音には、以下の3つのロジックがあります。

① ICT・DX投資による「労働生産性」の極大化

介護・医療業界は、長らく「人間のマンパワー」に依存する超・労働集約型産業でした。しかし、18歳人口が急減し、2040年には高齢者人口がピークを迎える日本の人口動態(厚生労働省「医療・介護人材の需給推計」)において、全産業の労働力をヘルスケア業界だけに割くことは不可能です。

国が求めているのは、「少ない人間で、より多くの高齢者を回すシステム」です。これを実現するには、介護ロボット、見守りセンサー、電子的診療情報連携、そして科学的介護情報システム(LIFE)といったデジタル投資が不可欠です。しかし、資本力のない小規模法人の経営者には、数百万円、数千万円規模のDX投資など逆立ちしてもできません。だから国は、「投資ができる大手に市場のシェアをすべて渡したい」と考えているのです。

② 間接部門(バックオフィス)のコストカット

10拠点をバラバラの中小法人が運営していると、10人分の経理、10人分の人事、10人分の総務という「直接ケアを産まない間接コスト」が介護保険財政から支払われます。これは国費の無駄遣いです。しかし、1社の大手企業が10拠点を一括管理すれば、バックオフィスは1カ所に集約され、圧倒的なスケールメリットが生まれます。

③ 社会インフラとしての経営安定化

小規模な事業所は、経営者の気まぐれや、わずか2〜3人のスタッフの離職で簡単に突然潰れます。そのたびに地域のケアマネジャーは走り回り、利用者は路頭に迷い、その家族は仕事を辞めて「介護離職」せざるを得なくなります。国にとっては、数万の中小零細が存在するよりも、強固なガバナンスと経営基盤を持つ数百の大手企業に地域インフラを委ねたほうが、リスク管理がしやすいのです。

この国の思惑は、近年の診療・介護報酬改定の「報酬設計」にエビデンスとして100%反映されています。

2024年の診療・介護同時改定、そして2026年(令和8年度)の報酬改定において、国が突きつけているメッセージは極めて冷徹です。

たとえば、「科学的介護情報システム(LIFE)の新システムへの移行・完全義務化の潮流」。データを国に送信し、フィードバックを受け取ってPDCAを回さなければ報酬を減算する(あるいは高い加算が取れない)という仕組みは、アナログな手書き書類やFAXに依存している中小事業所に対する「合法的な兵糧攻め」です。

さらに、訪問看護ステーションからの理学療法士等による訪問に対する一連の減算ルールの厳格化や、リハビリテーションの提供体制における「規模のメリット」を優遇する評価区分(大規模であるほど基本報酬を算定しやすくなる構造)を見れば、国がどのプレイヤーを盤面から排除したいのかは火を見るより明らかです。

国は、「効率の悪い中小は早く潰れて、その貴重な労働力(セラピストやヘルパー)は、国の方針通りにDX化された大手法人の箱(システム)の中に移動しなさい」と誘導しているのです。



第3章:泥船で磨く「臨床スキル」という名のサンクコスト

ここまでマクロな現実を突きつけられてもなお、多くの若手理学療法士や現場の専門職は、以下のような言い訳(認知の歪み)をして、自らの足を泥船に縛り付けています。

「いつか自分の技術が上がれば、患者様に選ばれる事業所になるはず」

「技術セミナーに行って、マニュアルセラピーや高度な介入理論を学べば、自分の市場価値は上がる」

断言します。その努力は、現在のヘルスケア産業の構造において、そのほとんどが「サンクコスト(埋没費用)」になります。

行動経済学におけるサンクコストの罠(Arkes & Blumer, 1985)とは、すでに支払ってしまって回収できないコスト(時間・労力・金)に執着するあまり、将来の損失を拡大させる合理性を欠いた意思決定に陥る心理現象のことです。

休日に自腹で数万円を払い、磨いているその「臨床スキル」は、非常に尊いものであり、いち理学療法士の立場としては尊敬に値するものです。

しかし、ビジネスの構造上は「公定価格(国が決めた点数)」という絶対的な天井に阻まれています。あなたが神がかった手技で患者の痛みを一瞬で消し去ろうが、新人PTがマニュアル通りに時間を浪費しようが、国から事業所に支払われる診療・介護報酬の点数は全く同じです。

さらに、あなたが今いる小規模な環境が、国の方針によって「間引かれる側」のゾンビ企業である場合、経営層にはあなたに高い給料を分配する原資(キャッシュ)など残っていません。どれだけ臨床で成果を出しても、組織自体の売上がマクロな制度変更によってジリ貧になっているため、あなたの年収は400万円台のどこかで必ず限界を迎えます。

それどころか、古い現場主義の環境に留まり続けることは、あなたの脳という最も貴重な内部資本を修復不可能なまでに摩耗させます。

対人援助職における「感情労働(Emotional Labor)」(Hochschild, 1983)の弊害は、多くの学術研究で証明されています。理不尽なクレーマー利用者や、仕組み化を拒む思考停止したベテラン先輩の感情に付き合い、笑顔を作り続ける労働は、私たちの認知リソースを激しく消費します。

さらに、業務がシステム化されていない小規模現場では、毎日「この書類はどこにあるのか」「この送迎ルートはどうするべきか」「このスタッフの不満にどう対応するか」といった、本来不要な微細な意思決定が連続します。

心理学者ロイ・バウマイスター(Baumeister, 1998)が提唱した「決断疲れ(Decision Fatigue)」の理論によれば、人間の意志力(エゴリソース)は有限であり、些細な選択を繰り返すだけで認知パフォーマンスは急激に低下します。

システム化されていないゾンビ企業で働くスタッフは、毎日この「決断疲れ」と「感情労働」によって脳を徹底的にハックされ、疲れ果て、夜は天井を見つめて自責の念に駆られるという、最悪のバーンアウト(燃え尽き症候群)への坂道を下っているのです。

「頑張っているのに、なぜか毎日が辛い」

それはあなたが無能だからではありません。
「効率化を拒む古い組織」という環境に、あなたの脳のエネルギーをすべて搾取されているからです。

結論:生存のためのストップロス(戦略的撤退)を執行せよ

理学療法士をはじめとする医療・介護およびヘルスケアにまつわる従事者を取り巻く環境は、2026年以降、さらに残酷なまでの二極化が進みます。

国が推進する医療・介護DX(介護情報基盤、電子的診療情報連携体制)という次世代のアーキテクチャに適応し、大手法人のシステムの中で「仕組みを回す側」に回るか、あるいは民間ヘルスケア市場や健康経営といった「市場原理が直接働くブルーオーシャン(異業種)」へと自身のドメイン知識を武器に越境できる一握りの人間は、年収500万円、600万円の壁を容易に突破していくでしょう。

一方で、「手技の美徳」や「患者様のための自己犠牲」という古い精神論(綺麗事)にしがみつき、国が間引こうとしている中小の泥船の上で思考停止して働き続けるプレイヤーは、資本主義のルール変更によって、組織と共に緩やかに自己破壊(市場からの退場)を迎えることになります。

最後に、あなたへもう一度、エールを送ります。

今すぐ、あなたのキャリアの「ストップロス(損切り)」を執行してください。

株式投資の世界において、損失が膨らむ前に機械的に決済を執行するストップロス(損切り)は、市場で生き残るための最も重要な鉄則です。あなたの貴重な20代、30代という「若さと時間(有限の資本)」を、古いシステムと心中するサンクコストの罠に投げ打ってはなりません。

あなたが本当に救うべきは、システム化を拒む古い組織の経営者でも、あなたの努力を搾取するベテランの先輩でもありません。環境のバグに気づかず、ボロボロになるまで戦い続けようとしている、あなた自身の人生そのものです。

環境を損切ることは、逃げでも敗北でもありません。自分のメタ認知を覚醒させ、自分が100%勝てる、そして正当に報われる「次なる盤面」を自ら構築するための、極めて経済合理的な「戦略的撤退」なのです。

綺麗事を捨て、ルールを見抜き、設計者の側に回る準備を、今日から始めましょう。
ブルーオーシャンは、あなたが視座を一段階上げるだけで、すぐ目の前に広がっています。

参考文献(学術論文・省庁データ一覧)

  1. 厚生労働省 (2020). 『理学療法士・作業療法士の需給推計に関する検討会 報告書』.

  2. 厚生労働省 (2024・2026). 『診療報酬改定および介護報酬改定に関する審議報告・関係資料』.

  3. 東京商工リサーチ (2022). 『老人福祉・介護事業の倒産動向調査データ』.

  4. 財務省 (2023). 『財政制度等審議会 財政制度分科会 提出資料(社会保障分野)』.

  5. Hochschild, A. R. (1983). The Managed Heart: Commercialization of Human Feeling. University of California Press. (感情労働によるバーンアウトの発生メカニズムとその構造的課題に関する基礎研究)

  6. Baumeister, R. F., et al. (1998). "Ego depletion: Is the active self a limited resource?" Journal of Personality and Social Psychology, 74(5), 1252-1265. (些細な意思決定の連続が認知リソースを枯渇させる「決断疲れ」に関する実験的証明)

  7. Arkes, H. R., & Blumer, C. (1985). "The psychology of sunk cost." Organizational Behavior and Human Decision Processes, 35(1), 124-140. (過去に投資したコストに囚われ、将来の損失を拡大させる「サンクコストの罠」の心理学的解明)

  8. Flavell, J. H. (1979). "Metacognition and cognitive monitoring: A new area of cognitive–developmental inquiry." American Psychologist, 34(10), 906-911. (自身の認知プロセスを俯瞰・客観視する「メタ認知」の概念定義)

  9. 田近敦子, 井手一茂, 近藤克則, 他 (2022). 「『通いの場』への参加は要支援・要介護リスクの悪化を抑制するか:JAGES2013-2016縦断研究」. 『日本公衆衛生雑誌』, 69(2), 136-146. (高齢者の社会参加と要介護リスク低減の因果関係を示すデータ駆動型研究)

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