特許の仕事に、必要な能力
特許の仕事を楽しくやっていると、特許は誰にでもできる仕事じゃない、とよくいわれました。個人的には、前向きに技術者のためにがんばればよいだけのように思っていましたが。
特許の仕事をしていて、よく必要な能力について、聞かれることがありました。この点について考えたことがあり、私なりの考えですが、簡単に紹介してみます。いろんな意見があると思いますが。
なお、1番に特許制度に関する知識を上げると思われそうですが、私としては、それほど重要と思ってなく、そういった知識よりも、センスのような、いろんな感覚的なもので合う合わないがあると思っています。
第1:語学力
まず第1に上げる能力は「語学力」です。特許の仕事はいろいろな技術を文章で表現しなければなりません。また逆にたくさんの文章を読んで技術を理解しなくてはなりません。そのために文章につき適切な表現と解釈が必要で、文章が嫌いとはいってられません。
日本語の表現を、分かりやすくかつ間違いなく行う必要があります。よく安易に主語を省略したりしますが、曖昧な文章を書くと、その結果、異なる内容に解釈されたりします。そうなると、主張したいことも、そんなことは書いていない、といわれてしまうので、曖昧な表現は要注意です。
ただ、いろいろと明確に書こうとすると、文章がくどくなったりして、よく特許の書類は読みにくいといわれます。
よい文章とか分かりやすい文章とかでなく、明確に正しく書く文章というのは、かなり面倒です。
また、文章的なことだけでなく、言葉一つ一つに拘り、言葉の広さを考える能力も必要です。
例えば、車両、自動車、四輪車の関係ですが、一見全てクルマに見えます。近年、電動自転車やキックボードなど、乗り物も多様化している中で,発明がどういった車両を対象とするのかは複雑で、言葉の選び方が重要になります。
この辺り、技術者からいわれなくても、特許の担当者の方で、言葉を選択して適切に使うことがテクニックとして求められます。
このような文章や言葉への対応は、自分で常に意識して考えるようにしないと身に付かず、センスが必要だと思います。
ちなみに、他社の危険な特許を読み、どんな内容かを解釈する場合、読む力が必要ですが、読む力は原則書く力の裏返しですね。

第2:いろんな技術力
語学力のつぎに必要と思うのが「技術力」です。いろんなアイデアがあってアイデアを出す技術者からのいろいろな話を取りまとめるには、広い分野での技術的な理解力が必要です。
技術系には、分野として電気、機械、化学などの専攻があり、研究者や開発者である技術者の技術分野は本来一択です。アイデアを出した技術者と話をするときに、技術的にアイデアのメリットを理解するのに、バックボーンとなる技術分野が同じであると、共通認識の部分が多く、理解が早くなります。肌感覚で技術内容を共有できる感じでしょうか。
この理解できる技術分野は広い方がよいです。広げるには、日々の業務でいろんな分野を扱って、慣れていくのが早道です。
いろんな技術を吸収していくには、センスが必要と感じます。近年、通信、ソフトウェア、アルゴリズムなど、専門性も細分化されていて、それぞれ奥が深いですね。
どんなアイデアでも、大切なのは技術者の話に寄り添って、自分なりに理解して納得することです。技術的になぜよいのか、どういう効果なのかを、常に意識して聞いていれば、自分の身になります。技術の理解力のバックボーンができれば、話の効率が上がり、技術者と楽しく意見交換ができます。

第3:商品力(展開の想像力)
最後に必要な能力は「商品力」です。あまりパッとしない言葉ですが、簡単にいうと、聞いたアイデアの商品への適用を、どこまでイメージできるになり、事業上の商品やサービスをどれだけ理解しているかが大切なります。さらには、今後展開される事業まで想定できるとよいです。
研究者や開発者のアイデアは、自社の商品や事業の一部に関わる場合が多いです。自分が担当する商品のアイデアとして、その他の商品のことは説明されません。
ただ、アイデアとしては、要素技術に近くなると、いろんな商品に転用できることになります。
ですので、特許の担当者が適用できる製品を広げるようにイメージできると効率的です。そして、今の商品だけでなく、市場の将来を見通すようなことも重要です。このような発想力があれば、アイデアをしっかり活用できます。
発明となるアイデアは商品やサービスに適用してこそ、産業の発達に寄与できるので、そのための事業に結び付ける力、ということもできます。
また、特許の担当者が具体的な商品やサービスをよく理解していることは、打合せが効率的になります。技術者からアイデアの要点を聞いただけで、商品のこの部分に、こういう形で適用する、ということを、特許の担当者がイメージできると、技術者の説明は楽になります。
アイデアの理解が早いと、技術者から見て非常に話がしやすく、頼もしく、楽しく特許出願の打合せができます。
さいごに:
お話ししたようなことは、意識しないと身に付かず、センスを磨く必要があると思っています。
特許制度の知識は業務上で必要な範囲が狭く、何とかなります。打合せするときの会話力も大切だと思いますが、本当に必要な能力は、自分で考えて前向きに行動していく行動力、バイタリティのようなことかもしれません。
どんな仕事でも、逃げずに真剣に真面目に地道に取り組むとよいというのは、何でも一緒ですかね。
