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ウェディングドレス、着せた日

私は人生で一度だけウェディングドレスを着せたことがある。
着たんじゃない。着せたんだ。

病棟にウェディングドレスが届いた。
真っ白なドレス。ふんわり広がる裾。
繊細なレースが至るところにあしらわれている。
いわゆる「花嫁さんの衣装」

「これが私の?」

ベッドの上で、彼女は少し驚いたような顔をした。
そのままドレスを見つめ、そっと指先でレースをなぞる。

「ああ、ウェディングドレス、着たかったなあ」

彼女はずっと言っていた。
結婚する予定はなかったけれど、いつか着ると思っていたらしい。
誰かの隣で、ニコニコ笑ってる花嫁になるんだって。

けれど、その「いつか」はこなかった。
「相手はいるんだけどさ。私もうダメじゃん? だからさ、もうウェディングドレス着れないんだなって」

「だったら、今着ようよ」

スタッフの誰かがそう言った。
まっすぐ、真剣な声で。
その瞬間、空気が変わった。それはスタッフ全員の答えだった。

彼女の表情が一瞬止まり、次の瞬間、ふわっと笑った。

「そんなこと、してもいいの?」

ウェディングドレスってどうやって買うんだろう?
ネットで売ってるのかな? でもサイズとかあるよね?

病棟のパソコンと睨めっこしながら、検索履歴はウェディングドレスのことで埋まっていく。
いつもなら
介護保険 役所
透析 障害者区分
そんな単語ばかりが並ぶのに。

ウェディングドレスを扱う会社に電話で問い合わせた。
レンタルできるのか、値段はいくらか。

病院名を名乗ると、相手はすぐに察したようだった。
「花嫁様は……その……」
退院は難しいこと。
私たち看護師がどうにかして叶えたいと思っていること。
だけど、ウェディングドレスの手配なんて、誰もやったことがないこと。

すると、思いもよらない返事が返ってきた。

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