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「観る将」が観た第74回NHK杯トーナメント本戦準決勝 藤井竜王名人vs増田(康)八段

3月2日、NHK杯本戦準決勝の藤井聡太竜王名人と増田康宏八段の対局が放映されました。両者は棋王戦五番勝負を戦っており、奇しくもその第三局と同日の放映となりました。NHK杯の本戦は、持ち時間10分・切れたら1手30秒未満(他に各1分の考慮時間10回)の早指し棋戦で、総勢50人のトーナメントとなっています。

藤井竜王名人は本戦2回戦から順に、西山女流三冠、澤田七段、佐藤(康)九段を降しています。増田八段は2回戦から順に、佐々木(慎)七段、屋敷九段、梶浦七段を破って勝ち上がっています。

対局前のインタビューでは、藤井竜王名人は「増田八段は攻守のバランスが取れた棋風で、センスの良い手が多いという印象があります。準決勝まで来ることができましたので、決勝を目指して集中して対局したいと思います」、増田八段は「藤井竜王名人とは、ここ最近勝てていないので、今日は勝てるように頑張りたいと思います」と話しています。


戦型は角換わり相腰掛け銀

振り駒で先手となった藤井竜王名人が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となります。藤井竜王名人は▲4五桂と仕掛け、増田八段が銀を2筋に引いてかわして桂を取りに行くと、藤井竜王名人は桂を取らせる代わりに3筋の歩を取り込みます。増田八段が6筋の歩を突き捨ててから飛車を4筋に回すと、早くも持ち時間を使い切った藤井竜王名人も飛車を4筋に回して金を支えます。

藤井竜王名人の馬

増田八段は意表を突かれたのか、少し時間を使って飛車で4筋の歩を取り、藤井竜王名人が金取りに▲7一角と打ち込むと、底歩を打って金を支えます。藤井竜王名人は▲8二角成と馬を作り、増田八段が飛車取りに△2七角と打ち込むと、▲4五歩と打って後手の飛車の利きを遮ります。増田八段は△3四飛とかわしつつ自陣に迫る歩を取り除き、藤井竜王名人が馬で9筋の香を取ると、飛角交換してから8筋の歩を突き捨てます。

双方とも考慮時間を使っての攻防

増田八段も持ち時間を使い切って△7五歩とぶつけると、藤井竜王名人は考慮時間を数回使って金取りに▲6四香と打ちます。増田八段は△8七歩と玉頭を叩き、藤井竜王名人が金で取ると、△7六歩と取り込みます。藤井竜王名人はこの歩も金で取り、増田八段が考慮時間を数回使って△6三桂と金を守ると、桂香交換に応じてから金取りに▲4四桂と打ちます。増田八段は金を諦めて△3三銀と上がり、藤井竜王名人が▲3五歩と飛頭を叩いて吊り上げてから飛桂両取りに▲4六角と打つと、△3六飛とかわします。

何か所も駒がぶつかり合う攻め合い

藤井竜王名人は金桂交換してから▲7三角成と桂を取り、増田八段が金で取り返すと、取れる金を取らずに▲3四歩と銀頭を叩きます。増田八段は構わず金取りに△6九飛と打ち込み、藤井竜王名人が▲3三歩成と銀を取ってから▲7三馬と金を取って銀に当てると、△8七歩と玉頭を叩きます。AIの評価値は藤井竜王名人の68%と傾いています。

増田八段の竜

藤井竜王名人は同玉と応じ、増田八段が△8九飛成と桂を取って王手すると、▲8八銀と引いて受けます。増田八段は△6九角と王手し、藤井竜王名人が▲7七玉とかわすと、最後の考慮時間を使って△7一香と馬取りに打ち、先手玉の上部脱出を牽制します。AIの評価値は増田八段の65%と逆転しています。

双方とも30秒将棋の激闘

藤井竜王名人は▲7二歩と香の利きを止め、増田八段が同香と応じると、最後の考慮時間を使って▲4一銀と王手します。取ると王手で馬をかわされるので、増田八段は△2二玉とかわし、藤井竜王名人が▲3二金と王手で追うと、△1二玉とかわします。藤井竜王名人はやむなく▲6三馬と銀を取り、増田八段が△7八竜~△7六竜と王手で追い、△5一桂と打って馬に当てつつ4三の地点を塞ぐと、▲7二馬と香を取って詰めろを掛けます。

藤井竜王名人が入玉

ここでAIは先手玉に詰みがあることを示していますが、秒読みに追われた増田八段は△5六飛と銀を食いちぎってから△5四金と王手を続け、藤井竜王名人が馬で金を食いちぎってから▲4四玉と入玉を目指すと、△4三銀と王手します。藤井竜王名人は▲3三玉と飛び込み、増田八段が△3二銀と金を取って王手すると、同玉と応じて双方の玉が一路隔てて向かい合います。

絶体絶命

ここでAIは再び先手玉に詰みがあることを示しますが、増田八段は△2二金と王手しつつ自玉の守りにも利かせ、藤井竜王名人が▲3一玉とかわすと、△5三角と王手します。藤井竜王名人は飛車で合い駒し、間接的に後手玉を睨むことで一手詰みを防ぐという創ったようなギリギリの受けで凌ぎ、増田八段が飛角交換してから△7二竜~△4三飛と王手を続けると、金で合い駒してから▲5一玉と潜り込みます。

藤井竜王名人の反撃

増田八段が△4一飛と銀を食いちぎって王手し、△2五角成と馬を作って詰めろを掛けると、11連続王手を凌いだ藤井竜王名人は豊富になった持ち駒の中から歩頭に▲2四桂と打って王手します。AIの評価値は藤井竜王名人の79%と大逆転を示しています。増田八段は同歩と応じ、藤井竜王名人が▲1三香~▲5三飛と王手しながら自玉の守りを固め、▲4三銀と打って詰めろを逃れると、△4三同馬と銀を食いちぎり、王手竜取りに△3二銀と打ちます。

長手数の即詰み

藤井竜王名人は竜で銀を食いちぎり、▲2五桂~▲2四銀と連続のタダ捨てで後手玉を吊り上げ、▲4六角と王手を続けます。増田八段は銀で合い駒し、藤井竜王名人が角で銀を食いちぎってから▲5三角と王手を続けると、△4五玉とかわします。藤井竜王名人は更に王手を続け、そのまま長手数の即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は増田八段が序盤の工夫により持ち時間でリードしましたが、藤井竜王名人も意表を突く応手で主導権を握りました。増田八段は竜を作って攻め合いに持ち込み形勢を入れ替えましたが、藤井竜王名人は玉を上部に脱出して猛攻を凌ぐと、捨て駒で吊り上げた後手玉を鮮やかな即詰みに討ち取りました。
藤井竜王名人は3年連続の決勝進出となり、3月16日に放映される決勝では、郷田九段と近藤(誠)八段の勝者と顔を合わせます。

本局は、藤井竜王名人が対局後に「終盤はかなり難解な局面が多くて、非常に難しい将棋だった」と話した通り、30秒将棋の中で両者が死力を尽くした167手の激闘で、最後までどちらが勝つのかわからない名局だったと思います。
残念なのは、日本将棋連盟が藤井竜王名人の400勝達成を発表したため、放映前に本局の結果がわかっていたことです。一昨年にも、丸山九段の1,000勝達成を発表したために銀河戦優勝がネタバレしていましたが、日本将棋連盟には通算〇〇勝とか昇段の発表タイミングについて、再考をお願いしたいと思っています。


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