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FKA twigs "Cheap Hotel"

25年リリースのベストアルバムのひとつにFKA twigsの『EUSEXUA 』と『EUSEXUA Aftergrow』があると思う。

後者のアルバムは位置付け的にも前者のアルバムの余韻、サブシナリオ的に感じられ、基本的には前者の方が評価されているのだろうが、私としては"Aftergrow"の、決してイージーリスニング・チルなミュージックではなく、高度な実験精神が本質だが、一撃必殺で刺してくるわけでもなく、気ままで楽しげな精神性も好きです。

"Aftergrow"に収録されている曲「Cheap Hotel」のみを翻訳してみた。元々ホテルをテーマにした作品には興味があるからだ。今、安いホテルはトップアーティストによってどう描かれるのだろう?


Are you coming on your own?
一人で来るの?
Do you wanna bring a friend?
それとも誰か連れてくる?

(Hook)
To the cheap hotel right behind the club
クラブのすぐ裏にある安いホテルへ
In room twenty or twenty four, call me when you’re outside
20号室か24号室だから、着いたら外から電話して
With some friends of mine, endless summertime
私の友だちも一緒で、終わらない夏みたいな夜
At a mini bar, bring your credit card, we’ll go all night
ミニバーで飲もう、クレジットカード持ってきて
朝まで遊ぶから

We’ll go all night
朝までいよう
I don’t wanna go home
家には帰りたくない

(Hook)

Come meet me
会いに来て
All the way down
一番下まで
Find me
私を見つけて
All the way down
ずっと下まで

(Hook)

Food and drink all night, company is nice
食べて飲んで一晩中、誰かと一緒なのが心地いい
Fuji, twist of lime, it’s my favourite flavour from the drug store
フジにライムをひとひねり
ドラッグストアで買える、私のお気に入りのフレーバー
Lying on the floor at the cheap hotel
安いホテルの床に寝転がって
With some friends of mine, getting high, we’ll be going all night
友だちと一緒にハイになって、夜通し続く

歌詞を見ると、"安いホテル"は一時的なホームからの逃避場所、使い捨ての親密さ、名前を持たない関係、昼夜逆転と先行きの無さを実現する場所として描かれている。結構、古典的な描き方だと思う。("クラブの裏"にあるホテルだし)

合わせて、何か物語の起承転結があるわけではなく、直接的なドラマもなく、感情としての喜怒哀楽もない。だから、たとえば傷つく女性の話だとか、簡単な回収はさせない。ホテルのムード・描き方は古典的だが、古典的な話ではないよ、ということですね。

安いホテル、ミニバー、クレジットカード、ドラッグストアという単語が空虚でその場限りで消費主義なのはよい。これらは本来、近代社会が満たすべき安心・安全・清潔・快適を感じさせるインフラのはずなのだが、それらが短絡的で手軽な消費主義である、ということに気づく。

安いし、先はないし、短絡的な消費主義だが、それらは「家に帰りたくない」「1人でいたくない」「寝たくない」という感覚を埋めてくれるという点で否定はしていない。一時的な居場所としていいのだ。

安いホテルは、しっかりと代わりの場所にはならず、未来もつくらないが、一時的に自分を置いておける場所なんですよね。たとえば「意味なくビジネスホテルに泊まると心地よい」みたいな話もある。

とても美しい音を通して、ホテルのそういった性質気づける曲だった。この未来のない空虚な美しさを表現した音楽を、たとえば空間に反映するとどういう表現になるのだろう。都会のクールなビジネスホテルになりそうな気がする。

ちなみにリリックから読み解いたムードが上記になるが、この曲にはミュージックビデオがある。割と普通の解釈をしてしまった自分が恥ずかしくなるコンセプトムービー、そして終わり方で、笑えてくるのでぜひ見てください。

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