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【映画短評】「ノスフェラトゥ / Nosferatu」 (2024)

ノスフェラトゥ Nosferatu
2024年 アメリカ・チェコ合作 133分
★★★★ (秀作、見るべき)
監督:ロバート・エガース
脚本:ロバート・エガース
出演:ビル・スカルスガルド/ニコラス・ホルト/リリー=ローズ・デップ/アーロン・テイラー=ジョンソン/ウィレム・デフォー/エマ・コリン



「ノスフェラトゥ」。
高名な吸血鬼伝説の主「ドラキュラ伯爵」の異名である。
オリジナルは1922年のF・W・ムルナウ監督のサイレント映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」。権利関係の問題でブラム・ストーカーの原作「ドラキュラ」の名称が使えなかったので、登場人物の名称をドイツ風に変更し、タイトルも変えて製作したものだと言われている。

私らの世代的には何と言っても1980年代に一世を風靡したジャーマン・ニュー・シネマの旗手ヴェルナー・ヘルツォーク監督のリメイクバージョンが超有名。
80年代初頭から「ブリキの太鼓」とか「Uボート」でドイツ映画に注目が集まっていて、知る人ぞ知る存在だったヘルツォークの日本未公開映画が続々と公開されていく。1982年に「アギーレ神々の怒り」(1972年ドイツ公開)、1983年に「フィッツカラルド」(1981年)がミニシアター系の劇場で日本初公開されてて、この「ノスフェラトゥ」(1979年)が1985年。ちょっとしたヘルツォーク・ブームと言って良い盛り上がり方だった。

これ、映画ももちろん有名なんだけど、プログレ/ジャーマンロッククラスタ的にはPopol Vuhのサウンドトラックが秀逸でこっちから映画の存在を知った人も多い。映画の公開にあわせてキングレコードの「ユーロ・ロック・コレクション」シリーズから日本盤のレコードもリリースされていた。
今Amazonで見たらサウンドトラックのCDには馬鹿みたいな値段が付いてるが、Apple Musicで聴くことができる。


話がズレた。
今回観たのは2024年制作、「ウィッチ」「ライトハウス」で名を馳せたロバート・エガース監督の「ノスフェラトゥ」。これもヘルツォーク版と同じ「吸血鬼ノスフェラトゥ」のリメイクである。
今年の6月頃に劇場公開されてて、観に行こうか迷っていたのだが、あまり芳しくない評価ばかり目にするので、尻込みしてしまっていた。
U-NEXTが月末に600ポイントくらい消滅してしまうのでこの映画が399Pで観られるということで、ポイント使って観てみることにした。
ロバート・エガースの作品はだいたい毀誉褒貶が多いようなのだが、この作品に関してはどうにもネガティヴな意見が目につく。
褒めている人は絶賛しているので、どういうことか今一つ理解できなかったのだが、実際に鑑賞してみるとよくわかった。
ホラー映画なのに文芸作品みたいなので、ホラー映画ガチ勢がつまんね、と言ってるっぽい。うむ、けど、吸血鬼映画ってだいたいそうだよね。
ヘルツォーク版なんてもっと怖くないぞ。

この作品、ヘルツォーク版とはだいぶ異なっていて、ヘルツォーク版では権利関係がクリアされたため、ドラキュラ伯爵を初めとして登場人物が原作と同じ名前になっているが、ここではオリジナル同様、ドイツ風の名前のままだ。ストーリーは概ね同じなのだが、オリジナルともヘルツォーク版とも大きく違うのが、エレンが吸血鬼オルロック伯爵の呪いにより彼の情婦となっていた過去が描かれている点だろう。つまりエレンとオルロックの運命の絆をトーマスの愛が断ち切ろうとしたことにオルロックが怒り、エレンを取り戻しに来たという展開になっている。ここはちょっとコッポラの「ドラキュラ」(1992)っぽい。
また吸血鬼の呪いがエクソシストの悪魔憑きのように描かれているのも前二作とは異なる点だろう。
結末はオリジナルと同じで、吸血鬼は消滅する。これはヘルツォーク版だけちょっと捻りがあるので、こちらが正統。

微妙にネタバレしちゃってるけど、個人的にはエクソシストみたいな悪魔祓いの展開がちょっと興ざめだったものの、許容範囲。
オルロック伯爵の特殊メイクはまずまずの出来だが、ヘルツォーク版のクラウス・キンスキーの不気味さには到底及ばず。ニコラス・ホルトとリリー=ローズ・デップのカップルも好演だが、こちらもブルーノ・ガンツとイザベル・アジャーニの存在感には遠く及ばない。
ウィレム・デフォーがヴァン・ヘルシングの役回りなのだが、今ひとついつものキレがない感じがする。
全体的にヘルツォーク版と比べると演出にチープなアラが目立つが、映像美は負けていないと思う。
ヘルツォーク版はやはり映画史に残る傑作だと改めて認識したが、エガース版も悪くない。少なくとも駄作なんてことは絶対にない。
同じ監督の「ウィッチ」や「ライトハウス」と比べてどうかと言われると、原作のストーリーにどうしても縛られる分、普通のゴシックホラーになっちゃってて、夢と現実の狭間を彷徨する心理劇的展開を得意とするエガースの良さが消されているところはあるように思うので、会心の出来とまでは言えないのかな。
「ノスフェラトゥ」旧二作はいずれも名作中の名作だけに難しいところはあっただろう。よくチャレンジしたと思う。

次は「狼男」を撮ってるらしい。楽しみだ。


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