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【劇場映画鑑賞記】【映画短評】「ポンヌフの恋人 / Les Amants du Pont-Neuf」(1991)

ポンヌフの恋人 Les Amants du Pont-Neuf
1991年 フランス 125分
★★★ (良作、見る価値あり)
監督:レオス・カラックス
脚本:レオス・カラックス
出演:ドニ・ラヴァン/ジュリエット・ビノシュ/クラウス=ミヒャエル・グリューバー



先週水曜日から韓国4泊5日の旅行に出てたので、久しぶりの投稿。
昨日帰って来て、12/20に観た「ヤンヤン夏の思い出」のレビューを上げようかとも思ったのだが、思いばかりが溢れて来てなかなかうまく言語化できないので、もう少し寝かせないと仕上がらない感じだ。

その前に今日劇場で観た「ポンヌフの恋人」の感想を上げておく。


レオス・カラックス監督のアレックス三部作の最終作にして最大の問題作「ポンヌフの恋人」の4Kレストア版が劇場公開されているので、立川のシネマシティまで行って観て来た。
我が愛しのジュリエット・ビノシュ主演だが、あまり自分向きではなさそうということもあって、これまで未見だった。
実はカラックスは「汚れた血」しか観てない。あの映画は端的に言って映像作品としては破綻してるがあれはあれでめちゃくちゃ面白い映画だった。
これも1月から4Kレストア版が上映されるので、観に行くつもりだ。
こちらは人が死ぬので妻も誘った。夫婦でカラックス観に行くとか、なかなかおしゃれである(幾分違)。

この作品は私の世代には懐かしいはずの大ヒット映画なのだが、ちょうど私がアメリカに留学に行ってた時に日本公開されたので、直接熱気を体験してない。なんでも「フランス映画史上最大の予算をかけたラブロマンスの大傑作」という触れ込みでみんな釣られたっぽい。キャッチコピーが「愛は眠らない」だし、ジュリエット・ビノシュは「汚れた血」と「存在の耐えられない軽さ」でめちゃくちゃ旬だったし、いかにもありそうな話だ。人を馬鹿にするのもいい加減にしてほしいが、釣られる側にも問題があるから仕方ないか。
今回の再上映にあたっても「20世紀最高の恋愛映画」みたいなキャッチコピーを恥ずかしげもなく掲げてる馬鹿記事が出ている。配給側の意図を汲んだもののようだが、恥を知るべきだ。


カラックスは「汚れた血」でも情念が全くロマンティックな展開をせず、ただひたすら爆発する様を描いていてとても印象的だったのだが、この映画でも前半は基本的にずっとそういうトーンだ。走ったり、飛んだり、ジェットスキーやったり、エモーショナルな若さ爆発、みたいなシーンがたくさん出て来るけど、ひとつもロマンティックにならない。物理的に身体は接触し共振するのだが、二人の世界は決して共有されない。これはある意味すごい。世界の過酷さが端的に顕れているし、そもそもこの二人は交わり合うようなポジションにいないのだということが暗に語られている。

ビノシュ演じるミシェルが視力を失うという設定は、彼女が世界から隔絶される恐怖を意味しており、その文脈の中でのみドニ・ラヴァン演じるアレックスへの「興味」を掻き立てられていくという展開はわりと自然で受容しやすい。そもそもミシェルはあの橋にいるような出自の人間ではなく、異世界からなんらかの弾みで迷い込んで来た異物のような存在である。だからハンスは彼女を拒否する。拒否しながらも、身体的な接触だけは享受する。これはこれでキモい。

といった具合に、かなり明確にロマンスとは別の視座が用意されているのだが、ミシェルの視力が回復する(=世界を取り戻す)可能性があきらかになったことで、ミシェルの世界から取り残されることを恐れたアレックスは半狂乱となり、彼の予想通りミシェルはアレックスへの興味を失う。世界を取り戻すことができれば、アレックスのような取るに足らない存在に価値はない。本来ならこれでお終いのはずなのだが、蛇足的に、取ってつけたように描かれる「偶発的」かつ「祝祭的」で「ロマンティックな」エンディングには正直違和感を禁じ得ない。

種々のトラブルによる予算の大幅超過などもあって、製作がかなり難航したことが知られており、必ずしもカラックスの意図通りの作品にはなっていないことを彼自身語っているが、それでも彼はこの作品の結末に満足しているという。
ならば、あの「取ってつけた」ような違和感こそが彼の意図するところなのだと好意的に解釈すべきなのだろう。
メタな視点ではあるが、世界の過酷さをあのような陳腐なロマンスで回収してしまいがちな「映画という仮構」の馬鹿馬鹿しさに対する違和感を体験させたかったということなのかもしれない。
そもそもミシェルが本当に視力を取り戻しているのか怪しいし、もし本当に見えるようになっているのだとすると、そうやって取り戻した世界はミシェルには優しくなかった、という陳腐な示唆なのだろうか。
まあ、作り手が意図通り作れなかった作品をどうこう批評しても仕方ない。
自分は失敗作に近いと思うが、それでも途中までの情熱的なエネルギーとアンチロマンティシズムのコンビネーションの徹底ぶりはなかなか他では見られないレベルのクールさだと思うので、少なくとも駄作ということはないだろう。ダメな映画かもしれないが、ダメなりに評価されるべき映画と言えるだろう。


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