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真夏の旅 西へ#1 BMW R18

 今は旅の空の下。ホテルのベットに横たわり、この記事を書いている。真夏というのは厄介な衝動に駆られる。バイク乗りならわかるだろ?一年を通してその半分以上を経過し、何かしらの爪痕を記憶に残したくなる季節だ。今年を生きた記憶の痕跡はいったい何なのか?後で振り返る時、その年や夏にどんな事があったのか?はどうしても人生にとって必要となる。だから僕らバイク乗りは、きっと走らずにはいられないのだろう。だからまた、住んでいる場所とどこまでも繋がっている、この夏の青い空の果てを探しに出かけようと思うのだ。

 前の記事で書いたバイク探し。今回の旅に使うバイクをR18に決めてから旅に出るまでは本当に忙しかった。仕事もあったし、中古であるから、納車から車検までは横浜のMoto/carにて突貫作業を行なった。各種オイル周りやタイア交換、様々なチェックなどやる事も多かったのだ。

納車直後のR18

 とにかく今回の旅はコイツで「西へ」と向かう事に決めたのだ。1800を僅かに超える排気量はトルク16.1kgを三千回転で発生させる。対して馬力は91psある。トルクに全振りしたような設計で、クラシカルな外観からは剥離した高いスペックを持っている。
 そもそもヴィンテージの雰囲気を持ったバイクは人気だし僕も好きなのだが、あくまでそれは新旧のバランスが取れた物であり、それはメーカーにとっては難しい事だろう。「古さ」の持つ魅力を先端技術で補おうとすると、途端につまらない物となり、先端技術を「古さ」で覆い隠すと成功となる。ライドバイワイヤーや、オートキャンセルのウインカー、キーレスエントリー、コンピュータ制御の数々がうまく押し込まれ、まるでシーソーの両側に新しいと、古いが乗っかって釣り合っているかのような印象を覚える。

フラットツインの誘惑

 本来なら不恰好なスマホホルダーなど付けたくはないが、これは近代となってはナビの代わりなどを含めて必需品だろう。股がると眼下には空を写す鮮やかな黒いタンクがあり、その下には巨大な水平対向のシリンダーがその存在感を見せつけてくる。比較して細く広がるハンドルと、ライトに埋め込まれたたった一つの計器が気分を高揚させるのだ。エンジンを掛けると、僕の経験値であるモトグッツィや過去のBMWの縦置きエンジン特有の、横に一瞬振られる生き物が目覚めたかのような振動。そのどれよりも激しく強い衝撃が身体を襲い、「まるで悪魔の身震いだな」と、独り言を呟いた。
 とにかく旅の始まりだ。
 今回は、旅の起点を兵庫県の姫路として、中国、九州、四国を周りたいと考えた。期間は二週間である。とにかく、横浜から姫路まではなるべく早く行って、旅をはじめたい。真夏の暑い夜の空気を切り裂くように、東名から新東名と巡航してゆく。カテゴリーとしてはハーレーやインディアンが得意とするクルーザータイプになるだろうか?リアのサスペンションは上手く隠されて、リジットのようなフレームワークだが、こうした部分はハーレーのソフテイルが勝るだろう。硬めのシート下にあるモノサスは、路面の凹凸に敏感に反応する。もちろん酷いというわけではないが、これはそのうち社外品に変えたくなるところだ。

コルビンのシート

 座面の広いコルビンのシートを納車前に用意してあったので、不恰好ではあるが取り外し可能な背もたれも装着し、疲れを緩和する仕様に変えてある。クッションのアタリは固めだが、それがまた長旅では良い印象を与えてくれる。とにかく夜中に出発し、名古屋に入ったあたりで眠気がやって来て仮眠する事とした。

 YouTubeなどでのレビューを見ると、いくつかのネガティブ要素を語る人もいた。乗ってみての整合性をとってみると、シフトタッチに関して言えば、それは乾式クラッチを知っている、知らない、BMWのR系の伝統を知っている知らない。といった物で、湿式に乗り慣れた層には難しいのだろうし、モトグッツィや、BMWのR GSなどに乗っている人にとっては、違和感はないだろう。シーソーペダルと、ステップボードに関しては簡単に自分でペダルの位置決めが可能で、セッティングを出せば良いだけの話しだったりもする。ご丁寧に爪先のアタリ角度も自由に決められるのだ。
 海外のレビューアーの意見では、アメリカ男性の平均的足のサイズ28cmよりも大きい、30cmを超えるクラスになると、張り出したエンジンとペダルの隙間に不満が出るだろうと言うのがあったが、そもそも彼らはステップボードにハーレーのクルーザーで慣れているのもあるだろうから、シーソーペダルとフットレストが初めての人にとっては、ハーレーと異なり慣れるまではシリンダーに隠され、ペダルが視覚的に見えないR18は難しいのかもしれない。とにかく、日本人のクルーザー系車両の未経験、乾式クラッチの車両の未経験が重なってしまうと、こんなにも乗りづらいバイクは世の中に存在しないだろうし、両方とも乗って来た、というよりもモトグッツィ、BMW、ハーレーばかりを乗って来た僕みたいな人種にとってはあくまで普通の、乗りづらくもなんともないバイクである。
 バンク角はハーレーの重量車両よりはあるが、当然ながらスポーツ系車両よりはない。といったところで、それなりに軽快にコーナーを曲がれてしまうバランスの良さがあるので、ガリガリとステップボードを路面で削ってしまう事になるかもしれない。
 何はともあれ、愛車となったR18と楽しい対話をしながら16日の夕刻には姫路に入った。姫路城がライトアップするのがホテルの屋上テラスから見れるというので時間になると、上がってみる。

ライトアップされた姫路城

 江戸期から残る残存天守は日本に12城。そのうちの一つがこの姫路城だ。何度か来た事はあるのだが、平成の大改装などが重なって、中には入った事がない。明日は天守に登る事にしている。
 今から数百年前、尾張に池田輝政という男が生まれた。織田家の重臣の家に生まれ、豊臣の時代においても一族に準じた扱いを受けた家柄である。また、時代が転じて徳川の時代においても破格の待遇を持った彼は、このような美しい城を作り出したのだ。その後、彼の孫の時代に姫路から離れる事になるのだが、理由が家督相続をした孫が幼少だというのが、江戸期らしい話しである。
 また、その後を引き継いで来た姫路藩の殿様達にとって、あまりにも大掛かりなこの城の維持は、かなりの負担となったようだ。池田家当時の巨大な大名ではなかった事が影響する。それでもこの城の威容を後世に残してくれた努力に感嘆もするし、感謝もするところである。旅の初日はこうして幕を下ろしてゆく。

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鷹倉隆行 くらさん そんな事より聞いてくれ。 君の親指が今、何かしでかそうとしているのなら、それは多分大間違いだ。きっとそれは他の人と勘違いしているに違いない。 今すぐ確認する事をお勧めするよ。 だって君と僕は友達だろ?もし、そうなら1通の手紙をくれないか?とても綺麗な押花を添えて。