vol.007 朝のラジオ体操
夏休みに入ってから、目覚まし時計を使わなくなった。
それでも朝の六時半になると、集会所のほうからラジオ体操の音が聞こえてくる。少し音が割れていて、窓を閉めていても、最初のピアノだけは分かる。
小学生のころは、首からカードを下げて毎朝通っていた。眠いまま坂を下りて、集会所の前で近所の子と並ぶ。終わったら大人の人に判子を押してもらって、帰りに畑のトマトを一つもらう日もあった。
高校生になった今は、布団の中で音だけ聞いている。
今朝は暑くなる前に宿題をしようと思って起きた。顔を洗って台所へ行くと、祖母はもう麦茶を沸かしていた。やかんのふたが小さく鳴って、窓の外では蝉が一匹だけ鳴き始めていた。
「今日は早いな」
「ラジオ体操に起こされた」
そう言うと、祖母は笑って、冷蔵庫から昨日のすいかを出してくれた。皮の近くまで薄く切ったすいかはよく冷えていて、甘いところより白いところのほうが多かった。

縁側に座って食べていると、ラジオから「深呼吸」の声が聞こえた。庭の朝顔はまだ半分しか開いていない。物干し竿には、昨日洗った白いタオルが二枚だけ残っていた。
体操が終わると、集会所のあたりから子どもたちの声がした。自転車のベルが鳴って、それから坂を上ってくる足音がいくつか聞こえた。昔より人数は少ないみたいだった。
机に向かったのは七時すぎだった。数学のプリントを三枚やって、英語の単語を十個書いたところで、窓から入る風がもうぬるくなっていた。
午前中は長いと思っていたのに、時計を見ると九時を過ぎていた。
夏の朝は、涼しい時間だけ先に急いでいく。
