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人間関係を円滑にする「褒め」のシンプルな心がけ3点

「褒め方のコツ」といった話はときどき少しピントを外していることがあって、褒めるということの中では「優れている」とか「正しい」という観点はほんのおまけ程度のものです。

あなた自身の今後の幸せのために、褒めるということの習慣とその意味について改めて考えてみましょう。


半径数メートルを平和にしていくために

人から褒められたり、頑張りを認められたりしたら誰だって嬉しいと思うものですが、とにかくこの世には褒めが少ないです。

誰もが「もう少し生きやすい世の中になってほしい」と感じているとき、こうした平和的な交流というのは、私たち自身が草の根的に増やしていく必要があります。普通に「世の中をよくする」というのは政治家や政府の仕事だと思われていますが、そうではなくて、それは我々の仕事だからです。あなたや私の日々の生活から遠く離れた、どっかのデカい椅子に座っている偉い人の仕事ではないということですね。

さて、褒めるときの心がけというのはわりと単純で、主に以下の3点になると思います。キーワードを太字で強調しておきます。

  1. どんなにささいなことであっても、相手に対するポジティブな感情が自分の中に生じたなら、さらりと伝えたほうがよい

  2. ただし、その感情は本物でなくてはならない(そうでないものは伝えなくてよい)

  3. その内容は主観的な感覚でよい(逆に、数字で客観的に測って評価できるものは特に褒めなくてよい)

では、順番に詳しく見ていくことにしましょう。

褒めるときの3つの心がけ

1.「さらりと」

まず、一点目の「さらりと伝える」について。この対象は、仕事ぶりを見たときの「すごいな」「頑張ってるな」とか、言葉や持ち物のセンスに対する「素敵だな」、あるいはもっと具体的なアクションに対する「助かった〜」など、とにかく「よい」と「よくない」で前者に属する感情であれば何でもになります。

重要なポイントは「言ってないことは伝わってない」です。もったいないです。

毎朝会社に出勤したら「おはようございます」と言うように、目の前の人への感謝や共感や尊敬といった感情が自分の中に起こった場合、ほとんど自動的に言うようにしたほうがいいと思います。もちろん、適切な時と場所というものはあるので、職場で人の容姿をどうこう言えば高確率でセクハラに当たります。「その場面と関係性の範囲内で」ということです。

飲食店でお会計するときに「ごちそうさまでした」と言うとき、この言葉は何も重大な感謝ではないし、受け取るほうもさらりと受け取りますが、そういうことを言ってくれない客には、店員さんもそこまで親切にしようという気は起こらないでしょう。

褒めというのは、そういうタイプの日常的な言葉の交換にしたほうがよいものです。イメージ的には「軽いけど重要」といった感じになります。

ときどき同僚や友達に対して発生する「最近忙しくて大変そうだな、大丈夫かな」という感情は、ポジティブなイメージとは少し離れますが、これは自分の中に同情や共感が生じたということで、それは相手にとって助けになるものなので、今考えているような前向きな感情のひとつに含めてよいと思います。気遣いを伝えましょう。

「褒める」とは「ちゃんと見ましたということを相手に伝える行為」でもあるので、心の動きとしては気遣いと似たようなものです。

実際のところ、人は別に高く評価されたから嬉しいのだと感じているわけではありません。その嬉しさの核心は、ただ「自分を見てくれていた」「ちゃんと認めてくれた」という安心の感情にあります。

つまり、褒めの本質とは「あなたをちゃんと見ていますよ」ということの表明なんですね。

2.「本物の感情を」

二つ目のポイントは「本物でなくてはならない」というものです。これは確認するまでもないことかもしれませんが、発言者が本心で思っていない言葉というのは、聞き手も直感的にそれに気づくものです。

少し古い言葉で「ヨイショする(=相手を持ち上げてご機嫌を取る)」というのがあって、たまに打算であるということを認識しながらそれを喜ぶ人がいますが、個人的には、そういうのはあまり健全な関係にはならない気がしています。

マナーや礼儀としての感謝の言葉はきちんと伝えるにしても、「そこまで思っていないことをわざわざ褒める」ということをする必要はありません。

子どもや職場の後輩に対する「褒めて伸ばそう」みたいな話も、おそらくその方針の意図は「すぐに否定したりせず、相手のことをよく見ましょう」という点にあります。そこを理解せずに、形だけ無理して褒めたって全然意味がないということです。

3.「主観的な感覚として」

最後に、三つ目の心がけは「褒め方は主観的でよい」というものでした。主観的で「よい」……というか、人が褒められて本当に嬉しいことというのは、むしろ主観的でなければならないんです。これは重要なポイントです。

その人がその人自身の価値観によって何かをしたとき、こちら側の感覚で「いいな」と思う、その双方の感覚が一致したところに「この人は自分のことをわかってくれた」という嬉しさが発生するわけですから。

さきほどの一点目と二点目の項目は、職場の人間関係などにも関わるものですが、この三点目は恋愛や友人関係など、もっとプライベートで親密な関係を構築していくときに大切になってきます。

人は「自分のことをわかってくれる人」との関係を求めるものです。その「わかる」というのは、レーダーチャート(あの五角形や六角形の蜘蛛の巣みたいなグラフ)で表せるような客観的な能力値を分析できたということではなく、もっと主観的で数字にも言葉にもならない、その人の中にある微妙な感覚への共感のことを指します。

「褒める」というのは「よいところ」に対して使われるものですが、もっと根本的な話としては、そこに優劣とか正誤のような評価と判断は混ぜないほうがよいです。あなたが「そう感じた」「それで温かい気持ちになった」というようなことを、そのままに褒めとして伝えるようにしてください。

結局は、相手を理解できるかどうかの問題だ

今回の話をまとめると、最初のポイントは「褒めるかどうかというより、まずは相手をきちんと見よう」という点にあって、その次に「言わないと伝わらないから、伝えよう」「主観的な感覚のほうが大事だ」という点が出てくる感じになります。

「褒める」という行動自体は、この心理的な習慣の結果として最後に出てくるもので、重要なのはその背景にある姿勢のほうです。

「人にしてもらいたいこと思うことをしなさい」というのは、二千年前の聖書の時代から言われていることですね。私たちは自分のことをちゃんと見てほしい、理解してほしい、あれこれ言わずに認めてほしいと思っています。人にそうしてほしいのならば、まずは私たち自身がそうしましょう。

ところで、今年の春に出版した書籍「人生の意味のつくり方:正解が『ない』とき、私たちは何をすべきなのか」の中で、この問題について詳しく論じた部分がありました。以下に少しだけ引用してみます。

 私たちは「自分を理解してほしい」とは思いますが、「この人を理解しよう」とはなかなか言いませんね。実際、この社会では誰もが「自分は理解されていない」「軽視されている」と主張しているわけですが、そうした人々の多くは、自分から目の前の他者のことを真剣に理解したいとは全然思っていないし、その人の存在、その人の価値観、願望や不安を自分のそれと同じ程度に重要だと考えることもありません。人から愛されたいと願いながら、自分は誰かや何かを愛する能力を持たないし、それを問題だとも思っていないようなのです。言い換えれば、誰もが受け取ることを当然の権利だと思っていながら、それを与えようとする人はごくわずかです。誰もが「自分をそのままに受け入れてほしい」と望みつつ、同じように願う他人をそのままに受け入れるということは拒否します。
   (……中略……)
 ここまでの話をまとめれば、何か特別な深みのある関係を得たいのなら、まず先に私たち自身がその深さまで潜る必要があるし、それは心がけというよりは理解と実践の能力の問題だし、その関係が本物であるなら、私たちの掲げる動機と行為も本物である必要があります。結局、問題は「何も与えてくれない誰か」にあるのではなく、そこで試されているのは私たち自身なのです。

「第七章:他者という救い」より(太字は引用時の強調)

人間関係というのはお返しの連鎖でできているので、あなたがそれを行うならば、おそらく同じものが周りから返ってくるようになります。もちろん、それが100パーセント報われるとは言いません。

しかし、あなたがそれを試みないのならば、それが返ってくることはないでしょう。「愛されたいけど何もしない」というのは「道端で三億円拾いたい」といった願望と変わらないので、叶うことがなくて当たり前だというタイプの話です。

親友やパートナーなど、いつかそうした特別な関係が得られるとしても、まずは平凡な日常の中から始めましょう。周りの人をよく見て、「素敵だな」と思ったら必ず伝えるようにしてください。

それがほんの短い間のことであったとしても、褒めるということは相手の気分を明るくするものだし、その環境の空気をほんの少しだけ柔らかくします。人間の幸不幸というものも、そういうささやかな時間と行為の積み重ねでしかありません。あなたから先に始めましょう。

関連書籍

最後に、さきほど引用した書籍の商品ページを貼っておきます。分厚い紙書籍の通常版と、Kindle向けでお財布にやさしい「分冊版」上下巻が好評発売中です。

なるべく幸せに生きていくためにはどうしたらいいか、みなさん自身が考えていく上でのヒントになってくれると思います。

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