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NO.46 新しい命

父が酒乱で薬物依存、母がパチンコ依存の借金まみれ、妹は母の奴隷。
夫とわたしは母の言いなりになり借金を増やし、自己破産をした後、自分たちの生活を立て直すのに必死だった。
父と母、そして妹はお金の匂いに敏感だった。
家の中には現金は置いておけない。
銀行へお金を預けていても通帳記載は見られるからできない。
隠し口座を作り通帳は破棄し、カードのみバッグの底板の下に隠し持っていた。
月々3万円を夫とわたしで貯金するようになっていった。
家を出られる程度の貯金はできたけれど、家具を揃えるお金はない。
箪笥や食器など細かい物を揃えなくてはいけなくてもそのお金はない。
そんな中でもわたしと夫は子供を抱えて賃貸物件を契約しようとした。
ある程度実家から距離があればいい、最寄り駅より少し歩いてもいい。
家賃が安ければいい、そんな感じで内観し申し込みをすると、保証会社からNG、断りが来た。
自己破産の情報が消えていない。CICに問い合わせれば簡単にバレてしまう。
そう、わたしも夫も家を出るチャンスはあったのに、保証会社で対応できないから契約を断られたのだ。
1件のみならば思わなかったけれど、3件4件となれば(情報が洩れているんだ)と思うようになった。

わたしはストレスの影響で生理不順だった。生理が来なくてもいつものことだと思った。その日は違った。脂汗が出るほどの吐き気にめまい、病院へ行くお金があるのを母が知れば母や妹にたかられると思い病院へは行かずにいた。
ドラッグストアに行き妊娠検査薬を試すと陽性反応。
迷いながらもわたしの気持ちは(産みたい)だった。
母がパチンコにのめり込み借金だらけ、父も薬漬けの毎日浴びるように呑みお酒、妹は母の言いなりになりわたしや夫がお金を持っていないかと探る偵察員。
そんな中でも(産みたい)は強くなった。
第一子を出産し、第二子は流産し、その一年後に宿った命。
第一子からすでに5年経過していた。

第二子を流産した原因は父や母の暴言、ストレスでもある。
絶対にこの子たちは守らなくてはとより強い思いが湧いてくる。
わたしは悪阻もひどく寝込みたいけれど仕事を休めばばれてしまう、家に居ればわかってしまうと思い、いつもと変わらない毎日を過ごすようになった。
5か月過ぎるまで誰にも言わなかった。
産婦人科には、引っ越しをしようと貯めていたお金で受診していた。

父と母に5か月過ぎた頃、妊娠していることを夫と一緒に告げた。
母は「わかっていたわよ」と含み笑いをし、父は「俺は痛くないから知らねぇ」と答えた。
母のあの含み笑いは一生忘れない。
その笑みの裏側はわたしの妊娠をダシにして、叔母へのお金の無心、夫の両親へのお金の無心にされたのだ。
「青空が妊娠したけれど治療が必要、だから〇〇万円送って」などだ。
叔母も義父母もわたしのことを考えて、母にお金を送金する。
母はそのお金をパチンコに使う。
母は最期に「出産すれば一時金が来るからそれで青空は返すと言っていたわよ」と伝言したらしい。

何度か母の羽振りの良さに気が付いて「お金借りたの?」と聞いたこともあった。母は「やりくりしたの」「パチンコで勝ったの」と言っていた。
父と母が嫌いなのに、一緒に住んでいなきゃいけない。
そして母の言葉も信じてしまっていた。

出産した翌日、義母が病院へ来た。
義母が「あんたそんな治療費までかかって出産するなんて」といきなり言われた。わたしは何がなんだかわからずに「何の話ですか?」と聞くと「しらばっくれて!あんたのお母さんに青空が意識不明だとか、赤ちゃんを産むのに腫瘍があるとか言われて100万以上送金したわよ」と言われた。
唖然とするわたしに追い打ちをかけるように義母は「出産一時金で100万なの?」と聞いた。
義母が夫を出産した時はそんな高額な金額は無かったとまで言った。
わたしは「知らないです」と告げると、義母はわたしに「あんたのお母さんが言ったのよ!」と怒鳴り病室を出て行った。
その夜叔母から携帯に電話があり「出産おめでとう。出産一時金はいつ頃?こっちも物入りだからすぐに送ってね」と言われ「母が?」とわたしが聞くと叔母は「そうよ。お母さんに聞いたわよ。青ちゃん腫瘍ができて大変だったんだってね」と言われた。

曖昧に答えたわたし。
母が全て嘘を付き、叔母と義母から総額160万程のお金を借りていたのだ。
叔母と電話で話した後、すかさず家に電話するも母は居なく妹が電話に出た。わたしは涙声で妹に事情を話すと「知らなかったほうが悪いんだよ!」と妹から言われた。

嫌いだけれど、家族だから一緒にいなきゃいけない。
親だから子供のわたしが支えなきゃいけない。
わたしは長女だからしっかりしなきゃいけない。
わたしはお姉ちゃんだから妹の面倒をみなきゃいけない。
自分の幸せを考えるよりも、親や妹、家族を大切にしなきゃいけない。
わたしの呪縛はどこまでも続くのか。
産まれたての我が子を見てわたしは「ごめんね。こんなママで。こんな家の子供に生まれてきてしまい本当にごめんね」と伝えた。

退院すると、案の定母と妹はわたしの出産一時金をあてにした。
わたしの出産、入院期間中は夫に第一子を預けていたのに仕事が忙しいと思ったのか、母は夫に第一子の面倒を見ると言い出して、信用してしまった夫は第一子を預けてしまい仕事へ出る毎日だった。
母と妹は「第一子を預かっていたのだからその一時金は寄こせ」だった。
わたしは抵抗した。義母のこと、叔母のことがありそのお金を渡すのは無理だと思ったから抵抗した。

母はわたしの部屋へ行き、わたしの洋服、夫の洋服、子供の大事にしているおもちゃ、わたし、夫、第一子の物全てを窓から放り出したのだ。
母は「一言出ていけ」だった。
わたしは出産してまだ6日目、夫は仕事中。右手には産まれたばかりの子供、左手には小さな我が子の手。
もう抵抗できなかった。恐怖だった。次に何をされるかわからなかった。
義母へ助けを求めたとしても、母の嘘を信じている義母。そんな義母にわたしの言葉は届かない。
叔母も同じで母を姉として大事にしている、そんな中で母を虐めると聞いていたわたしの話なんて聞く耳がない。
どこにも逃げられない恐怖と、諦めだった。

もう諦めるしかない。わたしの人生も、夫の人生も。
子供たちだけは守りたい。守り方がわからない。
誰にも言えない家の中の秘密。
どうしたらいい…
答えはなかった。

もう母の奴隷になる以外、選択肢はない。
わたしが母の奴隷になれば、夫、子供は守られるんだと思った。
母が納得するような答え。

そう、お金。全てのお金を出した。家も借りれないしそのお金も出産一時金も、結婚する時に義母からもらったプラチナのお下がりの指輪も、全て母に差し出した。

差し出した途端、母はわたしにわたしの好きな母の笑顔を向けた。

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