NO.52 ママ友
父は白髪頭で毎日浴びるようにお酒を呑み、薬のせいかやせ細っていた。
それなのに「俺様はカッコいい」と全開な父。
母は家族全員の給料を管理し毎日パチンコへ通っていた。
家族全員が自己破産したという事実から目を背けている状態でもあった。
カードや消費者金融での借金はできない一家、それでも母はパチンコをやめなかった。
何度か母に家族全員から「パチンコをやめろ」と言われても1日もやめることはできなかった。
父は「あいつは病気だ。ほおっていけ」と言った。
母が管理している全員分の給料を奪おうとは誰1人思わなかった。
家族みんな母が怖かったのだ。
3人目を妊娠しているわたし。子供は小学校に入ると沢山のママと知り合うきっかけともなった。同級生の同性の親とはよく話した。
知り合って仲良くなると時間がある時はランチやお茶にも行けるようになった。夫に子供を頼んで役員の集まりの後などにファミレスに行く程度だ。
仲良くなると沢山の話を耳にすることがある。
大概が人の悪口とも言えるようなものばかりだった。
中には、影で『放送』なんてあだ名がつく人もいた。この放送さんは同級生の親と少しでも仲良くなろうと近寄り家族構成や、仕事、時には年収などを聞きまわりそれを他の周囲の人へ伝えると言う。
わたしもこの放送さんがそんな人だと知らずに、家族構成や住んでいる場所などを言ってしまった。
決して、家族みんなで母のパチンコの為借金し一家で自己破産したことは言わなかった。
ママ友が増えていくと、自分が誘われないことが不安になるくらい怖かった。だからか、常に中心たるママに媚びていたようにも思える。
(嫌われたくない)
(仲間外れにされたくない)
(恥ずかしいから1人でいたくない)
人の目線が怖かった。
母はパチンコで負けるとわたしと一緒に行動しとしていた。
ママ同士のランチ会の場所を告げると、その場に居合わせたふりをするのだ。
わたしやママ友のいるテーブルに近寄り「青空の母ですぅ~」と言い、周囲のママも「どうせならランチだけだし一緒に座りませんか?」なんて言い、当然のように母は同席した。
母は周囲のママへ「みんなで焼肉屋へ今度行きませんか?」なんて言い出し周りも「いいですねぇ」なんて乗ってしまう。「私が払いますからね。年長だし」なんて笑顔で言い、周囲も「いいんですかぁ~」なんて喜ぶ。
母は家の顔と違い外面はとても良い。
母は「青空は3人目だしね」なんて優しい母、優しい祖母を演じていた。
約束した焼肉屋へ行ったママは5人、わたしと母を入れて7人。
前日母はわたしに「全ての会計はあたながしてよね!」だった。
断れないわたし。群がるママ友。
(ママ友って友達なのか?)とも思えるような行動だった。
当日は穏やかに焼肉屋でお腹一杯に食べて解散。
その解散した直後、母はわたしに「今日は付き合ってあげたんだからお金少しでも頂戴。バイト代よ」だった。
そして、わたしが気が付かない内に、母はわたしの悪口をママ友に伝えていたのだ。
「青空は家のことは何もしない」
「子育てはしない」
「私が見ていないと青空はパチンコ屋へ行っちゃうから監視している」
「青空の旦那は給料が低いからわたしが面倒見ている」と、嘘を平気で吹聴した。
最初仲良かったママ友も、少しずつよそよそしくなっていく。
せっかくできたママ友も、話せるようになったママ友も、誰1人いなくなった。
そして母はわたしに「ほらね。所詮そんなものよママ友なんか。わたししかいないでしょ?」と微笑みながら言うのだ。
母はわたしを独占したいのか、それともわたしに友達や知り合いが増えていくことが嫌なのか全く理解できなかった。
幼い頃の記憶で、わたしが母に「友達の家へ遊びに行きたい」と言うと母は断固して「ダメ!」と言った。
「どうして?」と母に聞くと母は「あんたがよその家に行き、あんな家いいなぁと内と外の家を比べるでしょ。あれ本当に嫌いだから」と言われた。
母は誰よりも1番でなければいけない。
母に従うしかない。他の選択肢は何もない。
ママ友よりも、わたしの楽しみよりも母の快楽を優先しなければいけない。
後から知った話は、ある1人のママ友から聞いた話。
「青空さん、なかなか話せなくてごめんね。青空さんのお母様沢山の人にお金を借りていたわよ。周りの人はみんな貸しはしなかったけれど、青空さんが原因とも話していたよ」だった。
母は嘘を言い、周囲からわたしを遠ざけ、わたしが孤立するのを楽しんでいたのだ。
