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午 歌舞伎座 六月大歌舞伎 昼 『祇園祭礼信仰記』『戻駕色相肩』『子連れ狼』 <白梅の白梅の芝居見物記>

 古典の時代物・古典舞踊・新作歌舞伎、とバラエティーに富んだ演目立です。

 祇園祭礼信仰記(ギオンサイレイシンコウキ) 金閣寺

 役者が揃わないと出せない大時代な演目ですが、それをこれからという世代で、それも小川家一門で上演出来ることはとてもお目出度いことだと思います。

 『祇園祭礼信仰記』は宝暦7年<1757>12月大坂豊竹座で人形芝居として初演されました。作者は中村阿契他。
 「金閣寺」はその四段目切にあたります。

 初演時に、四段目における金閣の三重のセリ上げセリ下げの大道具の工夫と一部の浄瑠璃の内容によって足かけ三年の大当たりをとったと評されています。
 歌舞伎でも翌年正月には取りあげられ、繰り返し上演されるようになっていきます。

 義太夫狂言ながらもともと原作自体が、例えば三大名作のように全段を通じて演劇的なテーマ性のある作品とは言えないでしょう。
 趣向自体が見せ場として前面に出てくる作品と言えるかと思います。

 当初は『祇園祭礼信長記』の外題で上演されました。
 『信長記』の世界を巧みに取りあげていることは確かです。ただ、今回の舞台の上演を考える際に必要不可欠というわけではないのでここでは踏み込みません。

 登場人物のキャラクターがバリエイションに富み、役柄本位のいかにも歌舞伎らしい様式美に溢れた舞台の面白さが特徴で、現代でも度々上演される人気狂言になっていると思います。

 中村獅童丈の大膳、中村時蔵丈の雪姫、中村歌昇丈の正清、中村種之助丈の鬼藤太、中村米吉丈の直信、中村隼人丈の久吉。
 慶寿院で中村錦之助丈がしめるポジションで、バランスよく活気に溢れた布陣の面白さを感じました。

 印象的だったのが獅童丈の大膳と米吉丈の直信です。

 獅童丈は肚に落ちてくる芝居より大きな華で魅せる役者さんだと思いますが、思いの他この大膳でも魅力を発揮していました。
 底知れない敵役の肚のある「国崩し」とは違った、陽の華で演じられても違和感がありませんでした。
 役者の個性によって如何様にも演じられる、そんな面白さのある役どころなのではないか、と今回はじめて感じさせられました。

 欲を言えば、体幹がしっかりしていないので、大柄な分槍の扱いでも身体がぶれるのがとても気になってしまい、歌舞伎役者としての身体はしっかりつくっていって頂きたいものと願わずにはいられません。

 米吉丈の狩野之介も、上方和事や江戸和事との系統とは明らかに違うのですが、凜としてすっきりとしたところが、私としては新しい感覚でとても魅力的に映りました。
 芸の力だけで演じ分けているとも感じられず、『子連れ狼』のお千のような役柄とどうすれば同じ役者の中に自然に同居できるのか、不思議な個性をもった役者さんのように私には思われます。

 時蔵丈の雪姫はすでに三回目の上演ということですが、思いの他苦戦されているように私には思われました。
 確かに美しいのです。
 また、役として工夫をされているということは伝わります。
 ただ、それが時蔵丈の場合はむしろ仇になってしまっているように私には感じられました。

 登場場面で、大和屋さんかと見まごうばかりの儚さや弱々しさを身にまとって登場された時にはとても驚きました。それなのに、その人物像で一幕を演じきるというわけでなく、人物としての統一性が感じられないのが私としてはとても気になりました。
 器用になんでもこなされるということが、歌舞伎では必ずしも強みにはならないということを思わないではいられません。

 そこが歌舞伎の難しさだと思います。
 無器用でも一歩一歩ご自分の芸風を打ち立てていく役者さんが最後には深い味わいを出すことが出来る世界とも言えることをしみじみ感じます。

 本作のように、例えば三姫の中でも雪姫は原作のテーマ性に縛られすぎずに、役者自身の個性の魅力で見せることが出来る芝居なのだと、今回実感させられました。
 美しさだけではなくその役者さんの個性が光ってこその芝居であることを思わないではいられません。

 戻駕籠色相肩(モドリカゴイロニアイカタ)

 中村萬壽丈の与四郎、中村萬太郎丈の次郎作、中村梅枝丈の禿のたより。
 三世代での上演であり、眼目は時蔵丈の子息、梅枝丈の可愛らしさをめでる一幕としての上演と言えるのでしょうか。

 ただ、私としては萬壽丈の踊りをこそ味わって頂きたいものと思います。

 『戻駕籠』は、天明8年<1788>の江戸中村座における顔見世狂言の四立目舞踊として初演されました。
 その時の配役は、次郎作が上方のぼりから帰った初世中村仲蔵(52)、与四郎が四世松本幸四郎(51)、禿のたよりが初世中村米三郎。

 初演の時からベテラン俳優で見せる踊りだったのでしょう。
 『関の扉』同様常磐津舞踊の代表作であり、天明調と言われるのどかな気分こそが命の古風な舞踊なのだと思います。

 お父様を向こうに回し、萬太郎丈も健闘はしているのですが‥
 若手の役者さんではなかなか味わい深い舞踊を期待するのは酷なことかもしれません。

 子連れ狼(コヅレオオカミ)

 見物の中には、萬屋錦之助丈のテレビドラマを見ていた世代の方も多くいらっしゃるのでしょうか。

 〽しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん‥」という歌を聴くと、子供心に感じていたあのドラマのもの悲しさが蘇ってきて自然と胸にしみるものがあります。

 中村獅童丈の拝一刀と中村夏幹丈の大五郎という今しかないような配役で、それを歌舞伎座の舞台で拝見する日が来るとは‥
 叔父様もさぞ喜んでいらっしゃるでしょう。

 好配役の上に、周りをベテランから後輩までがしっかりと支えて歌舞伎座ならではの充実した舞台になっているのも嬉しいところです。

 中村七之助丈のお浜が非常によく、殺陣の見せ場だけでない芝居としての面白さを味わわせてくださるのに大いに貢献していらっしゃいました。

 また、澤村精四郎丈が振杖の殺陣で奮闘していらっしゃるのがとても印象に残りました。
                      2026.6.21

 

 

 

 

  

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