退院後3ヶ月で差がつく。TKA後の退院指導──自主トレ5種目と生活指導を「伝わる言葉」で届けるための型
はじめに──「伝えた」と「伝わった」は別物だ
退院指導を「パンフレットを渡して説明した」で終わらせているPTは少なくない。しかし退院後の患者に「何か自主トレやっていますか?」と聞くと、「もらった紙、引き出しの中に入ってます」という答えが返ってくることがある。
TKA後の機能回復は術後3ヶ月が最も大きく変化する時期だ。この3ヶ月間に自主トレと適切な活動量を確保できた患者とそうでない患者では、筋力・ROM・歩行能力に明確な差が生じる。Fortier et al.(2021, PMID:33337819)は、TKA・THA後の系統的レビューで、適切な自主運動プログラムはすべての患者に推奨されるべきであり、一部の患者では監視下のリハビリと同等の効果を示すことを報告している。退院後の主戦力は「患者自身の動き」だ。
PTの仕事は、その動きを支える知識と習慣を退院前に届けることだ。「渡した」ではなく「できるようになった」を確認して送り出すことが、退院指導の本質だ。
退院時 自主トレーニング5種目

「退院後は活動量が増える」という現実を患者に伝える
病院では「リハの時間以外は寝ている」状態だった患者が、退院後は家の中を歩き回り、トイレへの往復・家事・買い物と日常の動きが増える。この活動量の増加自体が、筋力回復とROM維持に貢献する。
だからこそ、退院指導で「自主トレを1日◯回必ずやらないと回復しない」とプレッシャーをかけすぎることには注意が必要だ。疼痛が強い日・疲れた日には「クアド・セッティングと足関節ポンプだけでいい」というセーフティネットを明確に伝えることで、患者の継続率が上がる。
Florez-Garcia et al.(2017, PMID:27401004)の系統的レビューとメタ分析では、TKA後の自主トレーニングと監視下外来リハは、短期的な機能・ROMにおいて有意な差がないことが示されている。自主トレを「補助的なもの」ではなく「退院後のリハビリの中心」として患者に位置づけることが重要だ。
退院時 生活指導チェックリスト

膝立ちと正座:「Drに確認した上で伝える」が鉄則
退院指導でよくあるのが「膝立ちしていいですか?」「正座はできますか?」という質問だ。これはPTが独断で答えてはいけない項目だ。
膝立ちについて、Yoo et al.(2020, PMID:30602194)のレビューでは、TKA後に膝立ちが可能な患者は約68%に上り、多くのPS型インプラントでは膝立ちは生体力学的に許容されるとされている。しかし「可能かどうか」はインプラントの種類・固定方法・軟部組織の状態によって異なり、術者の方針も施設によって差がある。退院前にDrの指示を確認し、「◯先生からは膝立ちは△△とのことです」と根拠を持って伝えることがPTの役割だ。
正座・和式生活も同様で、深屈曲(120°以上)が必要な動作はインプラントへの負荷が増す。退院時点での屈曲ROMと合わせて、Drの見解を確認した上で患者に伝える。
ここから先は有料パートです。
購入することで、以下の内容が読めます:
・杖を持つ側の原則と「対側変形が強い場合」の例外 ・自主トレを「やってもらえない」患者への関わり方 ・家族が過保護になりすぎた場合の対応 ・外来リハ・訪問リハへの橋渡しの型 ・退院サマリーに必ず書く5項目 ・ミニケーススタディ:退院後に自主トレをやめてしまった患者への再介入
ここから先は

TKAのリハビリって何するの?
急性期病院でTKAを担当し始めた新人PT(1〜3年目)向けの実践ガイドマガジンです。「今日何をすればいいかわからない」「フェーズごとの介入…
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
