ロジックだけでは現場は動かない。関係構築×データ分析で業務改善が動き出す。〜外資フォワーダーからスタートアップに転職してからの挑戦と学び〜
1. 大企業で感じた人の手の限界
株式会社Shippioのオペレーション通関チームの鈴木 なつみです。
私は前職、大手外資系フォワーダーで通関業務に従事していました。物流業界の右も左も分からない状態で飛び込んだからこそ、必死に食らいつく精神で知識を吸収していきました。
社内システムを使用して月に200件以上の申告書を作成し、他法令が絡む複雑な書類作成や、課内のペーパーレス導入の仕組みづくりなどを経て、大企業のスピード感の中で「通関実務のプロ」としてがむしゃらに走り抜けた4年間でした。
仕事自体は非常に充実していましたが、ある時、大きな壁にぶつかりました。
それは「人の手による処理の限界」です。
大企業ならではの仕組みとして、データ入力や一部の通関業務を外部に委託してはいたものの、膨大な通関件数に自社の通関部だけでは到底捌ききれない状態でした。社内の営業チームがどんなに新規顧客を獲得してきても、すでにキャパシティの限界を迎えており、各地の通関部が連日のように残業に追われる毎日だったのです。
「このまま他の企業に転職しても、同じ構造の課題にぶち当たるだけだ。国際物流業界そのものを、システムやAIの力で根本から変えなければ、この業界に未来はない」そう痛感していた時に出会ったのがShippioでした。
単なる自社の効率化だけでなく、「国際物流業界の在り方を根本から進化させ、データ産業へと変革する」という壮大な展望に深く共感し、20代後半というタイミングで事業づくりにコミットしたいと、飛び込む決意をしました。
2. 入社直後に思い知ったスタートアップの泥臭さ
入社前の私は、「デジタルフォワーダーなら、自社システムが完備されていて、過去実績もすべて綺麗にデータ化され、スマートに業務が回っているんだろうな」というイメージを持っていました。
しかし、実際に飛び込んでみると、そこには「業界特有の複雑な現実」と向き合う日々が待っていました。
Shippioの自社システムは、顧客に対して圧倒的な物流の可視化を実現する素晴らしいプロダクトです。しかし、私が入社した当時の「通関チームの裏側」は、まさに事業の急成長に伴う過渡期にありました。
システムで事業全体がスケールしていく一方で、各国・各社でバラバラのフォーマットで届く複雑な情報を、どうシステムに繋ぎ込んでいくかという課題がありました。
そのため、当時は通関チームが抱える案件の細かなステータスが完全には一覧化されておらず、リアルな貿易データをシステムに落とし込むまでの「繋ぎ」として、独自のスプレッドシートを駆使して管理せざるを得ない部分があったのです。
また、過去の膨大な紙ベースの情報をデジタルで正確に紐づける土台がまだ完成しきっておらず、該当する過去実績を正確に探すために、一つひとつファイルを確認して20分ほどかかることもありました。
「システムがあれば魔法のようにすべてが解決する」わけではなく、事業の成長スピードに合わせて、アナログで複雑な貿易データをデジタルで滑らかに動かせる土台を自分たちの手で創り上げていく。それこそが、スタートアップの泥臭くも熱い部分でした。
前職の大手システムの方が「すでに完成されている」部分もありましたが、この現実を知ったとき、私は落胆するどころか「未完成だからこそ、自分の手で創り上げる余白がある。難しいからこそ面白い」と、自身のチャレンジ精神に火がついたのを感じました。
3. 「何もない土地に家を建てる」〜実務現場との泥臭い対話〜
当時の通関チームにとって、1日の業務の中で「問い合わせ回答」にかかる工数は非常に大きな課題でした。書類不備や品目・価格の確認などの問い合わせが発生することで、通関で貨物が止まってしまい、納品日の遅れやデマレージの発生に繋がってしまうからです。
スタートアップという、どんなことにもスピードと最大値が求められる環境。かつ、ミスが許されないオペレーション部門にいるからこそ、私は「間違えたくない、非効率なことはしたくない、最短ルートで完璧を求めたい」と強く思っていました。
大企業での仕事は、例えるなら「すでに建っている家の中」をどう快適に過ごせるかを考えること。性能の良い家具を買い揃えていくようなイメージです。しかし、スタートアップの仕事は「どの土地に建てるか」という場所選びから始まり、何も建っていない更地にどんな資材を使って家を建てようかと考えるところから始めるようなものです。
最短ルートで完璧を求めてしまうがゆえに、大きすぎる目標を描いてしまい、最初は自分のアイデアをどう進めればいいのか頭を悩ませていました。
ここで向き合うことになったのが、実務で連携をしているグループ会社の通関業者(協和海運)の皆さんとのコミュニケーションでした。
入社当初の私は「早く課題を解決したい」という思いが先行するあまり、長年確実な実務を築き上げてきたベテラン社員の考え方や手順を十分に汲み取りきれず、コミュニケーションのすり合わせに苦労する時期がありました。
そんな時、協和海運の社長の松本さんからこうアドバイスを受けました。
いきなり大きなことをやろうとしない。スモールスタートをする
スキルや知識だけで物事を進めようとせず、まずは信頼関係を構築する
ここから、私のアプローチが変わりました。協和海運の社員の皆さんと一緒にご飯に行くなどをして、少しずつ対話の時間を増やしていきました。そうするうちに、スムーズにコミュニケーションが取れるようになり、より深い業務の相談ができるようになっていった手応えがあります。
この関係構築によって初めて、「協和海運の社員が、過去のどの実績(データ)を基に質問をしてくれているのか」「どういう手順で書類を作っているのか」というリアルな実務の解像度が上がり、双方の実績統一や事前チェックの仕組み作りに向けて足並みを揃えることができるようになりました。
4. 感覚を数字に変える。SQL習得と問い合わせ50%削減
現場との対話が進む一方で、私自身の業務改善のアプローチにも進化が必要でした。
日々の膨大な業務に追われる中、つい「こういう問い合わせが多い気がする」という感覚値に頼りがちになっていました。しかし上長からの「感覚ではなく数字で明確に表すことで、自分の進めたい方向に正しく舵を切ることができ、周囲の納得感も得やすくなる」とアドバイスを受けたことが、自身の取り組み方を見直すきっかけになりました。
そこから一念発起し、必要なデータは自らSQLを学んで取得・分析するようになりました。
「全体の問い合わせ件数は〇〇件、そのうち書類不備は〇〇件。前月比〇〇%減」と、現状(As Is)を徹底的に数値化しました。
さらに、いきなり全体を改善するのではなく、抽出したデータをもとに「書類内容に関する問い合わせが多い上位3社」にターゲットを絞り、ミニマムスタートを切りました。
具体的には、書類がShippioにアップロードされた時点で一次チェック(スクリーニング)を行う」「評価・価格・品目に関する問い合わせは、過去の履歴からリスト化して特定する」など、現場のヒアリングとデータ分析を掛け合わせた地道なPDCAを回し続けました。
自身の業務のアウトプットが顧客に与える影響度が大企業よりも大きいスタートアップにおいて、「地道なアプローチは本当に正しいのか」と常に緊張感や不安がありました。
しかし、ターゲットを絞った事前スクリーニングと、協和海運との目線合わせを徹底した結果、「通関業者からの問い合わせ件数を50%削減」という大きな成果を達成することができました。
更地に家を建て、それが「本当に長く住める家なのか」を数字で検証し、結果を出す。この経験が自分への自信につながりました。
5. 作業者から仕組みの創り手へ。変わったやりがい
Shippioに入社して、仕事におけるやりがいが大きく変化しました。
大手外資系フォワーダー時代は、目の前の「膨大な書類を捌くこと」や「難しい他法令の書類をこなすこと」に個人の達成感を感じていました。
しかし、今はデータ分析を基にチームのペインを減らすためのサイクルを回し、「いざ結果が出た時の達成感」や「業務が以前よりも確実に楽になっていると実感した時」に、何よりも強いやりがいを感じるようになりました。作業者に留まらず、事業と仕組みを作る役割としての道を走り始めたことを実感しています。
6. 終わりに
オペレーションは、ともすれば「決められた作業をこなす部署」と思われがちです。しかしShippioでは、私たちが直面する地道な実務の課題こそが、業界を根本からアップデートするための一番の原動力になります。
今の環境で、自分の手で変えられる範囲に限界を感じている
完成されたシステムを使うだけでなく、その土台から仕組みを創り上げる面白さを味わいたい
難しい課題にこそ燃えるタイプだ
もし、過去の私と同じようなもどかしさや野心を持っている方がいたら、一緒に創り上げていきませんか?
国際物流の未来を自分たちの手で創り出す。そんな挑戦をともに楽しめる仲間をお待ちしています!
