次の発明は、製品ではなく挑戦する人かもしれない。
こんにちは、入江展親です。発明家・起業家として、技術開発やスタートアップへの挑戦、AI・DX、そしてキャンピングカーや旅を通じて得た気づきまで、「未完成の設計図」として日々発信しています。
私はこれからも、機械や製品、サービス、新しい工法やビジネスモデルをつくり続けていきたいと思っています。
ものづくりは、今でも私が最も夢中になれる仕事の一つです。
誰かが困っている。
今の方法では時間がかかりすぎる。
作業する人に負担や危険がある。
経験や勘だけに頼っていて、結果を客観的に残すことができない。
そうした課題を見つけ、技術によって解決方法を考え、まだ世の中にないものを形にしていく。私は長い間、この仕事に没頭してきました。
建築補修工事に携わる会社から、建築補修の工法や製品を開発するメーカーへ。そして現在は、宇宙技術、測位技術、AI、センシング、ロボティクスを建築やインフラの課題に結びつけるため、ネクスフォージというスタートアップを立ち上げています。
これまでとは異なる分野へ進んだことで、知らなかった技術や、さまざまな専門性を持つ人たちと出会う機会が増えました。
その中で、最近あらためて気づいた大切なことがあります。
新しい製品も、新しいサービスも、新しい産業も、その最初にいるのは人だということです。
どの技術も、最後には人につながっている
自動車は、乗る人が安全に、快適に移動するためにつくられます。
電動工具は、作業する人が持ちやすく、疲れにくく、確実に仕事ができるように設計されています。
ソフトウェアは、使う人が迷わず目的を達成できるように、画面の見やすさや操作の流れが考えられています。
建物も、AIも、ロボットも、宇宙技術も同じです。
技術そのものが目的なのではありません。
人の暮らしを支える。
負担を減らす。
困っている人を助ける。
危険な仕事を安全に変える。
社会を少しでも前へ進める。
そのために技術があります。
あまりにも当たり前のことなので、普段はわざわざ言葉にすることもありません。
しかし、技術開発に夢中になればなるほど、高い精度や優れた性能、画期的な機能に目を奪われ、その先にいる人の姿を見失いそうになることがあります。
私自身も、設計や発明を始めると、周囲が見えなくなるほど没頭するタイプです。
それでも、最後には必ず一つの問いに戻ってきます。
「これは、誰の役に立つのか」
そして最近、その問いをさらに掘り下げるようになりました。
優れた製品を一つつくることは、もちろん大切です。
しかし、社会の課題に向き合い、新しい技術やビジネスを生み出そうとする人が増えれば、そこから生まれる可能性は一つではありません。
一人の挑戦者から、一つの事業が生まれる。
一つの事業から、新しい技術や雇用が生まれる。
その技術が別の分野と出会えば、さらに新しい産業が生まれるかもしれない。
そう考えた時、製品やサービスをつくることと同時に、もう一つ挑戦できることがあるのではないかと思いました。
挑戦したい人が集まり、学び、さまざまな技術と出会い、まだ形になっていないアイデアを事業へ変えていく。
そのための環境や仕組みそのものを設計できないだろうか。
私自身がものづくりや事業づくりを続けながら、同じように何かを生み出そうとする人たちと一緒に考え、一緒に試し、一緒に成長していく。
そんな場所をつくることも、一つの発明なのではないか。
そう考えるようになりました。
原石が集まり、一緒に磨かれていく場所
最初に頭に浮かんだのは、「人をつくるファクトリー」というイメージでした。
まだ磨かれていない原石が入り、知識や経験、技術という道具を使って磨かれ、やがてビジネスという宝石になって社会へ出ていく。
そんな工場のような場所です。
しかし、考えていくうちに、少し表現が違うと思うようになりました。
人は製品ではありません。
誰かが人をつくり、あらかじめ決めた完成形へ加工するものでもありません。
一人ひとりの中には、すでにそれぞれの経験、技術、発想、問題意識があります。
ただ、それがまだ言葉になっていなかったり、どのように社会へつなげればよいのか分からなかったりするだけです。
技術は持っているけれど、事業へのつなげ方が分からない人。
アイデアはあるけれど、誰に相談すればよいのか分からない人。
新しいことを始めたいけれど、最初の一歩を踏み出せずにいる人。
自分の専門分野が、ほかの技術と結びつく可能性に、まだ気づいていない人。
そうした原石が集まり、互いの知識や経験を持ち寄りながら、自分たち自身を磨いていく。
私がつくりたいのは、人を生産する工場ではなく、挑戦が育つ環境です。
そして、私自身も完成した指導者として外から教えるのではありません。
私も一つの原石として、その中に入り、一緒に考え、一緒に失敗し、一緒に磨かれていく。
そんなファクトリーでありたいと思っています。
スペースビジネスファクトリーという構想
その一つとして、今考えているのが「スペースビジネスファクトリー」です。
宇宙ビジネスというと、ロケットや人工衛星をつくる人たちだけの世界に見えるかもしれません。
しかし、宇宙から得られる測位、観測、通信などの技術は、農業、建設、物流、防災、環境、観光、医療など、地上のさまざまな課題と結びつく可能性を持っています。
私自身も、もともとは建築補修の分野で技術開発を続けてきました。
そこに宇宙測位、AI、ロボティクス、センシングといった技術を組み合わせることで、これまでとは異なる建築・インフラ診断の仕組みをつくろうとしています。
だからこそ感じるのです。
宇宙産業の中にいる人だけで、宇宙ビジネスを考える必要はありません。
建設を知っている人。
農業を知っている人。
物流を知っている人。
観光や防災、医療、教育を知っている人。
それぞれの分野で課題を知っている人が、宇宙技術と出会うことで、新しいビジネスが生まれる可能性があります。
重要なのは、宇宙技術を使うこと自体ではありません。
自分の専門分野に宇宙技術を掛け合わせた時、誰のどのような課題を解決できるのか。
そのアイデアを、どうすれば継続できる事業へ変えられるのか。
必要な仲間は誰なのか。
技術、顧客、資金、知的財産、会社設立、実証実験、事業計画など、実際に一歩を踏み出すためには、さまざまなものが必要です。
それらを一緒に考え、実際に試し、単なるアイデアをビジネスへ近づけていく。
それが、私の考えるスペースビジネスファクトリーです。
私が助けてもらった経験を、次の人へ
私がネクスフォージを立ち上げることができたのも、多くの人に助けてもらったからです。
技術について教えてくれた人。
事業の考え方を一緒に整理してくれた人。
会社設立や資金調達について助言してくれた人。
まだ実績のない会社の話を聞き、可能性を信じてくれた人。
一人で考えているだけでは、今の場所まで来ることはできませんでした。
だから今度は、私が受け取ったものを、次の挑戦者へ渡す仕組みをつくりたいと思っています。
そして、そこで新しい事業を生み出した人が、次の挑戦者へ経験を伝える。
成長した人が、今度は知識や技術、人脈、資金によって、新しい挑戦を支える。
一度宝石になった人がファクトリーを離れて終わるのではなく、次の原石を磨く側として戻ってくる。
そんな循環が生まれれば、挑戦は一度きりで終わりません。
完成してから始める必要はない
ただし、私はまだ完成していません。
ネクスフォージも、スペースビジネスファクトリーの構想も、まだ始まったばかりです。
分からないことも多く、これから失敗することもあると思います。
以前の私なら、もう少し実績をつくり、自分自身が完成してから始めるべきではないかと考えたかもしれません。
しかし、よく考えてみると、人が完全に完成することなど、おそらくありません。
完成するまで待っていたら、いつまでたっても始めることはできません。
むしろ未完成だからこそ、同じ目線で一緒に考えることができます。
完成した先生が、未完成の生徒を一方的に教える場所ではない。
それぞれ異なる原石を持った人たちが集まり、互いに磨き合いながら、それぞれの宝石になっていく。
私もその一人です。
ものづくりをやめるわけではありません。
これからも私は、機械や製品、工法、サービス、ビジネスモデルをつくり続けていきます。
そのうえで、新たな発明として、挑戦が生まれ、育ち、次の人へ受け継がれていく仕組みもつくってみたいと思っています。
それが今、私が考えているスペースビジネスファクトリーです。
強い日本をつくるという言葉は、少し大きすぎるかもしれません。
しかし、日本を本当に強くするものがあるとすれば、それは特定の一つの技術だけではなく、自分の専門性を社会の課題に結びつけ、失敗を恐れず動き出す人の数ではないでしょうか。
計画はまだ未完成です。
私自身も未完成です。
だからこそ、一緒につくる余白があります。
次の発明は、製品ではなく、挑戦する人かもしれない。
正確に言えば、人そのものを誰かがつくるという意味ではありません。
人の中にすでにある可能性が動き始め、原石が少しずつ磨かれ、挑戦として輝き始める場所を設計するということです。
皆さんの中にも、宇宙技術と自分の仕事を結びつけてみたい、新しい事業に挑戦してみたい、誰かの挑戦を支えてみたいという思いがあるでしょうか。
この未完成のファクトリーを、どのような場所にすれば面白いのか。
ぜひ、皆さんの考えをコメントで聞かせてください。
入江 展親
ネクスフォージ株式会社 代表取締役
Jfp株式会社 常務取締役
