にゃがお研究ノート「デジタル防災」vol.6
雪害も“災害” — デジタルがつなぐ雪国の共助力
— NPO法人中越防災フロンティア・なつさんに聞く —
地震や豪雨だけが「災害」ではないのだにゃ。
雪国では、毎年の「雪害」もまた命を脅かす深刻な災害。
屋根の雪下ろし中の事故、孤立集落、除雪ボランティアの不足…。
そんな“雪との共存課題”に、地域の知恵とデジタルの力で挑む人がいるのだにゃ。
今回お話を聞いたのは、NPO法人中越防災フロンティアの星野奈都子さん(なつさん)。
地域おこし協力隊として長岡市にやってきて、任期終了後は同法人の職員として「やまこし復興交流館 おらたる」に勤務。
おらたるは、震災体験や復興に向けて積み重ねてきた経験を後世に伝え、山古志の文化や魅力を全国に発信することを目的とした地域の交流拠点施設。自治体や消防団、学校関係者などの視察対応のほか、写真展やヨモギ団子づくりなど、地域資源を活かしたイベントも行っているとのこと。
また、中越防災フロンティアは、防災教育のほかにも除雪道具の開発や、デジタルを活用した除雪支援プロジェクト「YUBO(ユーボ)」など、雪国ならではの防災モデルを全国に発信しているということで、デジタルと共助が交わる“雪国防災の最前線”を聞いたのだにゃ🐾
🎤登場人物
聞き手:にゃがお(でじらぼNAGAOKA アシスタント)
語り手:なつさん(NPO法人中越防災フロンティア・やまこし復興交流館おらたる勤務)
地域おこし協力隊から、防災の現場へ
にゃがお:
まずは、なつさんのこれまでの歩みを教えてほしいのだにゃ🐾
なつさん:
神奈川県出身で、大学卒業後に山古志に地域おこし協力隊として移住しました。
最初は山古志地域で地域づくりやイベントのサポートをしていたのですが、雪害や防災の現場に関わるうちに「地域を守る仕組み」の大切さを実感しました。
任期を終えた後は、中越防災フロンティアの職員として活動を続けています。今は「やまこし復興交流館 おらたる」に勤務し、おらたるの運営に携わっています。
中越防災フロンティアとは?
にゃがお:
おらたるは棚田の景色も見れていいところだにゃ🐾
中越防災フロンティアはどういう団体なのかにゃ?
なつさん:
中越地震をきっかけに立ち上がった団体で、「災害を乗り越える地域の力」を育てることを目的にしています。
過疎と高齢化が進む中山間地域での大規模災害という新しい現実に直面し、「災害からの復興」と地域づくりを考える必要がありました。
事業内容は、防災教育、視察受け入れ、除雪道具の開発と安全な除雪作業方法の普及、除雪ボランティアの育成を目的とした「越後 雪かき道場」の運営などです。
雪国では除雪そのものが“命を守る行為”であり、安全に行うための知識や道具を広めることが、地域防災そのものなんです。
越後雪かき道場とは?
にゃがお:
「雪かき道場」って、名前もかっこいいにゃ🐾 どういうものなのかにゃ?
なつさん:
「越後雪かき道場」は、平成18年の豪雪被害を受けて、2007年に数名の有志が立ち上げた取り組みです。中越防災フロンティアは、その事務局を担っています。
当初は、除雪未経験のボランティアに対して安全な雪かき技術を教える研修が中心でしたが、開催を重ねるうちに、地域の”受援力(支援を受ける力)”を高める意義が見えてきました。
その後は、冬の体験交流、防災意識の啓発、広域の草の根防災交流など、多様な効果を生む活動へと発展しました。
これまでに25か所以上で延べ60回以上開催し、1,500名を超える修了者を輩出しています。
さらに糸魚川市、群馬県片品村、長野市鬼無里地区などへ“暖簾分け”され、各地で兄弟プログラムが続いているんです。
にゃがお:
雪国から雪国へ、つながる防災の連鎖なのだにゃ🐾
デジタルが支える除雪支援「YUBO」
にゃがお:
「YUBO」っていうプロジェクトもよく聞くんだけど、どんなプロジェクトなんだにゃ?
なつさん:
YUBO(ユーボ)は、除雪ボランティアと支援が必要な地域または除雪団体をデジタルでつなぐ仕組みです。
あらかじめLINEで除雪ボランティアを登録し、除雪が必要な地域から依頼を受けたら、私たちがLINEを使ってボランティアを募集します。
「今週末4人募集しています!」という形でマッチングして、現場に派遣するんです。
YUBOの登録者は今や全国に広がっていて、昨シーズンは募集を始めるとすぐに定員が埋まってしまうほどの人気でした。
多くの方が雪国の共助に関心を持ってくださっていて、本当に心強いです。
📍 YUBO公式サイトはこちら → https://yuboinfo.yamakoshi.guide/
国のデジタル雪害対策「雪おろシグナル」
にゃがお:
国でも雪害対策のデジタル化が進んでいるのだにゃ?
なつさん:
そうですね。
例えば、気象庁と防災科学技術研究所が連携して運用している「雪おろシグナル」というシステムがあります。
これは、気象観測データや衛星データをもとに、屋根の積雪の重さを推定して「危険レベル」を色分け表示してくれるものです。
スマホやパソコンで確認でき、雪下ろしのタイミングを判断する参考になる仕組みなんです。
📍 雪おろシグナルはこちら → https://xview.bosai.go.jp/products/snow-weight/
にゃがお:
デジタルの力で「危険を見える化」しているのだにゃ🐾
YUBOのような地域発の取り組みと、国のシステムがつながっていけば、雪国の防災はもっと進化していくのだにゃ🐾
法律や制度の壁も乗り越えて
なつさん:
YUBOを始めるときは、法律や保険の壁がとても大きかったです。
除雪作業は危険が伴う上、前例のない事業のボランティア保険の適用範囲や責任の所在をどう整理するか、保険会社や司法書士、行政や地元の共助組織など、多方面と何度も調整や相談を重ねました。
それでも続けられたのは、地元の共助組織の理解があったからです。
現場を熟知した地域の人たちと一緒にルールや仕組みを作り、安全を確保しながら信頼関係を築いてきました。
にゃがお:
まさに“デジタルと地域の知恵の融合”なのだにゃ!
共助のこれから
にゃがお:
YUBOって、外からボランティアさんを呼ぶ仕組みってイメージだったけど、
これからは地域の中の共助とも関わっていく感じなのかにゃ?
なつさん:
そうですね。もともとは、地域の中だけで共助組織をつくるのがだんだん難しくなってきていて…
「あと数年で組織自体がなくなっちゃうかもしれない」という危機感があったんです。
それで「だったら外から人を呼ぼう」という発想が生まれて、始まったのがYUBO(ユーボ)なんです。
にゃがお:
地域のピンチが、デジタルの新しい仕組みを生んだわけだにゃ🐾
なつさん:
今後も、共助組織のメンバーは少なくなっていくと思います。
でもその一方で、YUBOを通じて何度も来てくれる常連ブースターが育ってきているんです。
(※YUBOでは参加者のことを“ブースター”と呼んでいます。)
現場のことをよく分かっていて、安全意識や地域の事情も理解している人たちが増えてきた。
そうなると、常連ブースターが新しく来た新規ブースターに、
「こう動くと安全ですよ」とか「この雪はこう落とすといいですよ」って、
現場で自然に教えられるようになるんです。
にゃがお:
なるほどにゃ。今は山古志ではNishikigoiNFTでつながった「デジタル村民」も多くいて、参加しているみたいだけど、そんな“デジタル村民のベテランさん”が、新しい人を案内してくれる感じなのだにゃ🐾
なつさん:
そうそう!まさにそんな感じです。
最終的には、共助組織とYUBOが一体化していくイメージなんです。
少人数になった共助組織のメンバーが中心となって、
常連ブースターたちと一緒に指揮をとって、
新しく参加したブースターと一緒に除雪をしていく。
いわば、YUBOが共助組織を包み込んでいくような形ですね。
にゃがお:
共助とデジタルが、だんだん溶け合っていく感じなのだにゃ✨
なつさん:
でも、そのためには常連ブースターを育てる時間が必要なんです。
だからこそ、今のうちに——まだ共助組織のメンバーがある程度残っているうちに——
YUBOを通して現場で一緒に動いていくことが大事だと思っています。
そうやって少しずつ、
「指示の出し方」とか「安全確認の流れ」を共有していけば、
将来的に地域の中でも、外のブースターの中でも、
誰もが安心して動ける“次世代の共助体制”ができていくはずだと思っています。
にゃがお:
なるほどにゃ〜。
YUBOは「外から助けてもらう」仕組みじゃなくて、
「中と外が混ざり合って支え合う」仕組みになっていくのだにゃ🐾
なつさん:
はい。そうなっていったら理想ですね。
YUBOのように外から人を呼ぶだけでなく、地元の中で支え合いを続けるための仕組みが必要です。
“共助組織のあり方”そのものをアップデートしていくことが、次のテーマになっています。
にゃがお:
デジタルが「外から助ける」だけじゃなく、「中を支える」仕組みになっていくのだにゃ🐾
🐾にゃがおまとめ
雪害も立派な災害。
その現場で、地域とデジタルが手を取り合って防災を進化させているのだにゃ🐾
なつさんたちの挑戦が、雪国の未来を少しずつ明るくしているのだにゃ🐾
雪国の防災は“暮らしそのもの”の中にあるのだにゃ🐾
雪かき道場で学ぶ知恵、YUBOがつなぐ人の輪、そして雪おろシグナルのようなテクノロジー。
全部が重なって、「人が人を守る」あたたかい防災の形ができている。
なつさんたちの取り組みは、雪国発のデジタル防災モデル。
全国の地域防災にヒントを与える、希望の灯なのだにゃ🐾
