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【5分で・恋愛小説】それ、どこがフィクションやったん?


居酒屋で「フンフン」と相槌マックスで聞いていた話が、店を出て別れ際に
「あ、さっきの話、だいぶとフィクションやねん」
「フィクションて、嘘ってこと?」
「いやぁ、虚構であって嘘じゃないよ」
「なんやそれ、新しい禅問答か、大喜利のお題か?」
「うまいこと言うね」
「どこがフィクションやったん?」
「それは……あ、終電近いから、また今度」

そんな感じで、その夜は悶々とするも、翌日には二日酔いで目を覚ます。あ、今日は土曜日か、と二度寝して腹が減って渋々起きる。冷凍チャーハンがあるのを思い出して、チンしながらコーヒーを飲みながら煙草に火をつける。一袋は流石に多すぎたかと軽く後悔しながらも、一気に食べ尽くす。エビチャーハンは鉄板だと不動の評価を手渡し、すっかり冷めたコーヒーをすする。

溜まっていたLINEの通知を解く。由美から今日のデートキャンセルの連絡だった。こっちもすっかり忘れていたし、待ち合わせが生きてるならもう二時間遅刻だ。既読にすらなってなかったせいで、待ち合わせ場所に行ってることはない。それなら、電話でも連絡するはずだ。

その夜、由美から近くまで来ているから会えないかと電話で告げられる。なじみの鳥居酒屋を提案するも、隣の喫茶店を希望される。
待ち合わせの十分前に店に入ると、既に由美は座っていた。何か食べる? と聞いたが、すぐ帰るからとそっけない。

嫌な予感は的中する。「もう別れた方がいいと思うんだよね」と切り出される。不思議と悲しくも辛くもない。驚きもなかったが、「えっ」と驚いてみせる自分が嫌になる。

薄々感じていた。別れにはサインがある。去年の夏あたりから、由美に男の影を感じ始めていたからだ。かれこれ半年、並走されていたのは仕事の忙しい僕にも都合が良かった。比較されても、その影の男に負ける気はしなかったからだ。

だが、半年は状況を覆すには十分すぎる時間だった。少なくとも、その影の男にとっては。
「これ、返すね」と明菜ちゃんのCDがスタバの紙袋に入っていた。
由美は泣いていないし、僕も泣いていない。
「別れないよ」とゴネても状況が変わるとは思えない。恋愛にゴネ得なんてものは存在しないのだ。
しかし、涙一粒でないのは二人とも、付き合い始めの僕たちに随分と失礼な話だ。
「絶対別れないよ」「ずっと一緒だね」「結婚しようね」「先に死んじゃいや」
魔法が解けた男女というのは、同性の友人よりもドライだ。
会計を先に済ませて、店を出た。一緒に出るのはイヤだと言われたからだ。

そうだ、あいつに連絡してみよう。二日連続で飲むのは気恥ずかしいが、僕は少し弱っている。それに、あいつ下の名前、明菜だっな。ちょうどいい土産がある。たぶんご両親は中森明菜好きなんだろうと想像を巡らす。

《いいよ、昨日の店に行こう》
すぐLINEに返事が来た。

僕はスタバの紙袋をリュックに入れて、待ち合わせ場所に急いで向かった。

あの話、どこまでがフィクションだったか聞いてみよう。その前に、僕の別れ話も、アイツにしてみよう。最後に、「少しフィクションだけどね」と言いたい。しかし、遅いな。突き出し二つ目の前に、僕は瓶ビールを冷え冷えのグラスに注いだ。

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