風に吹かれて

風に吹かれて』(原題:Blowin' in the Wind)は、アメリカのシンガーソングライター、ボブ・ディラン1963年に発表した歴史的な名曲です。 

彼のセカンド・アルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』に収録され、シングルとしても発売されました。1960年代の反戦運動や公民権運動のシンボル(アンセム)として、世界中で歌い継がれています。 

どのような曲なのか?

アコースティックギターの弾き語りと、哀愁のあるハーモニカの音色が特徴的なフォークソングです。

  • 歌詞の内容:「人が一人前と認められるまでに、どれだけ道を歩まねばならないのか?」「大砲の弾が禁止されるまでに、どれだけ飛び交わねばならないのか?」という、人間の尊厳や戦争への問いかけが繰り返されます。

  • 答えは風の中に:すべての問いかけに対して、ディランは「その答えは、風に吹かれている(The answer is blowin' in the wind)」と歌います。

  • 言葉の意味:このフレーズは「答えは簡単には見つからない」とも、「答えはすでに目の前に(風のように)存在しているのに、みんな気づかないフリをしている」とも解釈されています。 

歴史的な影響とエピソード

  • 大ヒットしたカバー:ディラン自身のバージョンだけでなく、フォークグループの「ピーター・ポール&マリー(PPM)」がカバーしたことで、ビルボードチャートで2位を記録する大ヒットとなりました。 

  • サム・クックへの影響:黒人のソウルシンガー、サム・クックはこの曲を聴いて激しい衝撃を受けました。「白人の若者がこんな歌を作ったのに、自分が作らないわけにはいかない」と奮起し、公民権運動の名曲『チェンジ・イズ・ゴナ・カム』を書き上げました。 

  • ノーベル文学賞への道:ボブ・ディランは2016年にノーベル文学賞を受賞しました。その際も、この曲に代表される「詩的な表現の素晴らしさ」が大きく評価されました。 

ボブ・ディランが『風に吹かれて』のなかで、すべての問いかけに対して「答えは風に吹かれている(The answer is blowin' in the wind)」と言った理由について、彼自身の言葉や歴史から迫ってみましょう。

ディランは曲を発表した当時、この言葉の意味についてこのように語っています。

1. 答えはすでに目の前にあるから

ディランは「答えは本の中にあるわけでも、テレビの討論番組の中にあるわけでもない」と言いました。

  • 空気や風のように、答えはすぐそこにある

  • みんな気づいているのに、気づかないフリをしているだけ

  • つまり、「何が正しいか(戦争はいけない、差別はいけないなど)は、本当は誰もが肌で感じて分かっているはずだ」という意味が込められています。

2. 簡単に捕まえられないから

風は、目に見えなくて、手でつかむこともできません。

  • 平和や平等への答えは、すぐに手に入る簡単なものではない

  • 時代や状況によって、風のようにひらひらと形を変えてしまう

  • だからこそ、私たちは問いかけ続けなければならない、というメッセージです。

3. あえて「はっきり言わない」ため

この曲が作られた1960年代、アメリカでは黒人差別への抗議や、ベトナム戦争への反対運動が激しくなっていました。

  • ディランは「おい、戦争をやめろ!」「差別をなくせ!」と直接叫ぶような歌にはしたくなかったのです。

  • あえて「答えは風の中にある」とあいまいにすることで、聴いた人それぞれが「自分にとっての答えは何だろう?」と自分で考えるように仕向けました。

ボブ・ディランは、お説教をするのではなく、「みんな、そろそろ風の音(目の前にある真実)に耳をすませてみようよ」と伝えたかったのだと言われています。

先ほどは「なぜ “答えは風の中” と歌ったのか」という言葉の理由をお話ししましたが、もしかしたら「なぜ、この歌が作られたのか?(時代背景)」「なぜ、あんなにたくさんの問いかけ(なぜ大砲の弾が飛び交うのか、など)をしたのか?」という疑問かもしれませんね。

ディランがこの曲で激しい問いかけをした「なぜ」には、当時のアメリカが抱えていた2つの大きな問題が関係しています。

1. なぜ「大砲の弾」や「山が海に流される」と歌ったのか?

当時は、いつ世界戦争が起きてもおかしくない冷戦(れいせん)という張り詰めた時代でした。

  • 核戦争の恐怖:アメリカとソ連(いまのロシアなど)が大量の核兵器を競って作り、世界中が怯えていました。

  • ベトナム戦争への足音:アメリカが泥沼の戦争に巻き込まれていく直前で、若者たちの間に「なぜ僕たちは戦わなきゃいけないんだ?」という不満が溜まっていました。

ディランは「山が海に流される(国が滅びる)前に、人間はいつになったら気づくんだ?」と、破滅に向かう世界へ危機感を持っていました。

2. なぜ「人が歩む道」や「人が顔を背ける」と歌ったのか?

もう一つの大きな理由は、当時アメリカ国内で激しくなっていた人種差別(じんしゅさべつ)への抗議です。

  • 人間として認められない恐怖:黒人の人々は、バスの座席、学校、レストランなど、あらゆる場所で理不尽に分けられ、市民としての権利を奪われていました。

  • 見て見ぬふりをする大人たち:ひどい差別や暴力が目の前で行われているのに、多くの白人たちは「自分には関係ない」と顔を背けていました。

「人が一人前(人間)と認められるまでに、どれだけ道を歩まねばならないのか?」という最初のフレーズは、自由を求めて戦う黒人たちの苦難の道そのものを表しています。

つまりディランは、「戦争への恐怖」と「差別への怒り」、そして「それを見て見ぬふりをする世間へのあきれ」から、この曲を書かずにはいられなかったのです。

まさにこの『風に吹かれて』という曲自体が、「なぜ? なぜなんだ?」という終わらない疑問だけで作られている歌だからです。

ボブ・ディランがこの曲で、答えを出さずに「なぜ」と問いかけ続けた本当の理由は、「人間は、ダメだと分かっていることをなぜ繰り返してしまうのか」という、人間の心の弱さにあります。

ディランの歌詞に隠された、3つの「なぜ」をさらに深くのぞいてみましょう。

1. なぜ、大人は見て見ぬふりをするのか?

歌詞の中に「人は何度首をめぐらせ、見えないフリをするのか?」という言葉があります。

  • ひどい差別があることも、戦争で人が死んでいることも、みんな知っています。

  • でも、自分が傷つきたくないから「関係ない」と顔を背けてしまうのです。

  • ディランは「なぜそんなに冷たくなれるんだ?」と、人間の心のズルさを責めています。

2. なぜ、いつまでも気づけないのか?

「どれだけ耳を持てば、人々の泣き声が聞こえるのか?」という問いかけもあります。

  • 人間には耳があるのに、自分に都合の悪い悲鳴や叫び声には、フタをして聞こえないふりをします。

  • 悲しい歴史から何も学ばず、同じ間違いを何度も繰り返す人間へのあきれが、この「なぜ」にこめられています。

3. なぜ、自分で考えようとしないのか?

一番の理由は、ディランが「答えを教える先生」になりたくなかったからです。

  • もしディランが「戦争はダメだ!」「差別をなくそう!」と答えを言ってしまうと、みんな「ふーん、そうだね」と聞き流して終わってしまいます。

  • あえて「なぜ?」と問いっぱなしにすることで、曲を聴いた人が「あぁ、これは自分の問題なんだ。なぜなんだろう?」と、自分で悩み、考えるようになります。

ディランは、世界を変える特効薬のような「答え」を持っていたわけではありません。ただ、「みんなで『なぜ?』と考え続けることこそが、平和への第一歩なんだよ」と、歌を通じて私たちにバトンを渡したのです。

『風に吹かれて』の歌詞には、合計で9つの「問いかけ」が出てきます。それぞれの言葉が、当時(1960年代)の社会のどんな問題やメッセージを意味しているのか、分かりやすく解説します。

📥 1番:人間の「自由」と「尊厳」

最初のパートは、主に人種差別に苦しむ人々(黒人など)の自由をテーマにしています。

  • 「男が一人前と認められるまでに、どれだけ道を歩かなければならないのか?」

    • 意味:どれだけ努力して、どれだけ苦しい道を歩めば、黒人は白人と同じ「一人の人間」として認めてもらえるのだろうか。

  • 「白いハトが砂浜で休めるようになるまでに、どれだけ広い海を飛ばなければならないのか?」

    • 意味:ハトは平和のシンボルです。平和や安心が訪れ、人々が心から休める日はいつ来るのだろうか。

  • 「大砲の弾が永遠に禁止されるまでに、どれだけ飛び交わなければならないのか?」

    • 意味:これ以上どれだけ戦争を続ければ、人間は兵器の愚かさに気づいて戦いをやめるのだろうか。

🌊 2番:社会の「無関心」と「限界」

2番のパートは、不条理な世の中と、それに気づかない(あるいは気づかないフリをする)人間の冷たさを批判しています。

  • 「ある山が海に洗い流されて消えてしまうまでに、何年存在し続けられるのか?」

    • 意味:どんなに頑丈に見える国や社会(権力)も、間違ったことを続けていれば、いつかは終わりが来る。

  • 「ある人々が自由を許されるまでに、何年生きなければならないのか?」

    • 意味:生まれながらに不自由を強いられている人々は、あと何年待てば本当の自由を手にできるのだろうか。

  • 「男が何度も首をめぐらせ、ただ見えないフリをしていられるのはなぜなのか?」

    • 意味:目の前でひどい差別や苦しんでいる人がいるのに、なぜ多くの大人は「自分には関係ない」と顔を背けていられるのだろうか。

😢 3番:悲しみへの「気づき」

最後のパートは、苦しんでいる人の声に耳を貸さない世の中への強い怒りとあきれです。

  • 「男が空を見上げて、本当の空が見えるまでに、何度見上げなければならないのか?」

    • 意味:人間はいつになったら自由な世界(真実)に目を向け、自分の視野の狭さに気づくのだろうか。

  • 「人々の泣き声が聞こえるようになるまでに、男はどれだけの耳を持たなければならないのか?」

    • 意味:戦争や差別で泣いている人たちの悲鳴が、なぜ普通の人たちには聞こえないのだろうか。

  • 「あまりに多くの人が死んでしまったと気づくまでに、どれだけの死者が必要なのか?」

    • 意味:これ以上どれだけの尊い命が失われたら、国や指導者たちは「もう戦争はやめよう」と気づくのだろうか。

🍃 サビ:答えは風の中に

そして、すべての問いかけのあとに、有名なこのフレーズが流れます。

「友よ、答えは風に吹かれている。答えは風に吹かれているんだ」

ディランは「答えは誰かが教えてくれるものではない。空気や風のようにすぐ目の前にあるのに、みんなが目をつぶっているだけだ。そろそろ自分で風の音(真実)を聞きなさい」という意味を込めて、この歌を締めくくっています。

ボブ・ディランが歌った「風(Wind)」には、いくつかの深い意味が隠されています。

ディラン自身は当時、「答えは本の中にあるわけでも、テレビの討論番組の中にあるわけでもない。それは風の中に吹いているんだ」と語っていました。 

この「風」が何を例えているのか、3つの視点で分かりやすく解き明かします。

1. 「すでに目の前にある空気」という意味

風や空気は、いつでも私たちのすぐまわりに存在しています。

  • 誰もが本当は知っている:「戦争はいけない」「差別は間違っている」という答えは、特別な勉強をしなくても、誰もが肌で感じて分かっているはずです。

  • 気づかないフリをしているだけ:あまりにも当たり前にまわりにある(風のようにつかめない)ものだから、みんな見て見ぬふりをしているんだ、という皮肉が込められています。

2. 「時代の変化」という意味

英語には「風向きが変わる(The wind is changing)」という言葉があるように、風は時代の大きなうねりや流れを表すことがあります。

  • 1960年代のアメリカでは、若者たちを中心に「社会を変えよう」という大きなエネルギーが巻き起こっていました。

  • ディランは、古く固まった大人の社会に対して、「新しい自由の風が吹き始めているぞ、お前たちにはそれが聞こえないのか?」と問いかけているのです。

3. 「はっきりと目に見えないもの」という意味

もしディランが「答えはこれだ!」と紙に書いて渡してしまったら、それはただのルールになってしまいます。

  • 風は目に見えないし、手で捕まえることもできません。

  • 平和や自由への答えも同じで、「簡単に手に入る答えなんてない。だからこそ、みんなで風の音を聴くように、ずっと考え続けなければいけないんだ」というメッセージです。 

ディランは「風」という言葉を使うことで、お説教をすることなく、聴いた人それぞれに「君にとっての風の音(答え)は何だい?」と優しく問いかけているのですね。

ボブ・ディランが「答え(The answer)」という言葉に込めた最大の秘密は、「正しい答えは、誰かから教えてもらうものではない」ということです。

彼はこの曲で、差別や戦争について「これが正しい答えだ!」とは一言も言っていません。なぜディランがあえて答えを言わなかったのか、その理由をひもといてみましょう。

1. 答えは「本」や「テレビ」の中にはない

ディランは曲を発表した当時、このように語っています。

「答えは本の中にはない。映画やテレビ、討論会を見ても見つからない。それは風の中に吹いているんだ」

これは、「偉い学者や政治家がまっとうな答えをくれるのを待っていてもダメだ」という意味です。政治やニュースがどんなに複雑な言い訳をしても、「人が死ぬのは悲しい」「差別は間違っている」という本当の答えは、もっとシンプルで、誰もが心の中で分かっているはずだと伝えています。

2. 答えは「みんなの目の前」にある

風は、誰のまわりにも平等に吹いています。

  • 答えは隠されているわけではなく、すでに空気のようにみんなの目の前にある

  • なのに、大大人たちは自分に都合が悪いから、目をつぶって「答えが分からない」と言い訳をしているだけ。

  • ディランは「答えがない」と言っているのではなく、「目の前にある答えから逃げるな」と言っているのです。

3. 「自分で考えること」こそが答え

もしディランが歌の中で「戦争をやめよう!」と答えを言ってしまうと、聴いた人は「良い歌だったな」と満足して終わってしまいます。

  • あえて答えを「風の中」にあいまいに放り投げることで、聴いた人は「自分にとっての答えは何だろう?」と考えざるを得なくなります。

  • この「一人ひとりが自分の頭で悩んで、考えること」こそが、ディランが私たちに用意した本当の「答え」だったのです。

つまり、この曲の「答え」は、曲を聴き終わったあなた自身の心の中に浮かんでくるものなのです。

ボブ・ディランは『風に吹かれて』の歌詞だけでなく、人生や音楽、世界についてハッとさせられるような深い名言をたくさん残しています。

彼の言葉は、どれも飾っ気がなくて少しひねくれていますが、本質を突いています。代表的なものをいくつか紹介します。

1. 「生きる」ことについての名言

「生まれることに忙しくないやつは、死ぬことに忙しい」
(He not-begun-born is busy dying.)

  • 意味:人間は、毎日新しい自分に生まれ変わるつもりで、前を向いて新しいことに挑戦していかなければいけない。それをやめてしまった瞬間から、人はただ死に向かって歩んでいるのと同じになってしまう、という強いメッセージです。

2. 「成功」についての名言

「朝起きて、夜寝る。その間に自分のやりたいことをやれている人が、成功者だ」
(A man is a success if he gets up in the morning and gets to bed at night, and in between he does what he wants to do.)

  • 意味:お金持ちになるとか、有名になることが成功ではありません。自分の時間を、自分の意志で、自分の好きなことのために使えていることこそが、最高の幸せであり成功なのだと教えてくれます。

3. 「自分らしく生きる」ための名言

「誰の真似もするな。自分の真似もするな」

  • 意味:ディランは、過去の大ヒット曲(『風に吹かれて』など)と同じような曲をファンから期待されても、いつもそれを裏切って新しいスタイルの音楽に挑戦し続けました。他人のマネをしないのはもちろん、過去の自分の成功にすら縛られるな、という彼らしい生き方が表れた言葉です。

4. 「批判」に対する名言

「君の立場が何であれ、君が批判するものを理解した方がいい。そして、君がノーと言う前に、それがどんなものかを知るべきだ」

  • 意味:何かに反対したり、誰かを悪く言ったりする前に、まずはその相手や仕組みをしっかり勉強して理解しなさい、という言葉です。感情だけで怒るのではなく、冷静に物事を見ることの大切さを伝えています。

ディランの言葉は、まるで『風に吹かれて』の歌詞のように、私たちに「君はどう生きるんだ?」と問いかけてくるようなものばかりです。

ボブ・ディランがこれほど多くの「ハッとさせられる名言」を残した「なぜ(理由)」について考えてみましょう。

ディランがこのような言葉を語った背景には、彼の「絶対に誰の言いなりにもならない」という強い生き方があります。

1. なぜ「過去の成功」すら捨てろと言ったのか?

ディランは『風に吹かれて』が大ヒットしたあと、世界中から「フォークの神様」や「若者のリーダー」と崇められました。

  • 期待されるのが大嫌いだった:まわりから「次も社会を批判するフォークソングを歌ってくれ!」と期待されると、彼はそれが息苦しくてたまらなくなりました。

  • エレキギターを持った事件:ある日突然、アコースティックギターを置いてエレキギターを持ち、ロックを歌い始めました。ファンからは「裏切り者!」と大ブーイングを受けましたが、彼は平気でした。

「自分の真似もするな」という名言は、「ファンが求める『昔のボブ・ディラン』のフリをするなんて真っ平ごめんだ。俺は常に新しく生まれ変わるんだ」という強い決意から生まれたのです。

2. なぜ「自分でやりたいことをやるのが成功」と言ったのか?

ディランは、有名になって大金を手に入れても、ちやほやされるスターの暮らしには興味がありませんでした。

  • 自由を奪われる恐怖:マスコミやファンに追いかけ回され、自分の言葉ひとつで世界が騒ぐことに、彼はうんざりしていました。

  • ただの旅する音楽家でありたかった:彼にとって一番大切なのは、誰にも縛られずに、ただ歌を作ってステージで歌うことでした。

だからこそ、お金や名戦(めいせん)ではなく、「朝起きてから夜寝るまで、自分の時間を自分の意志で使えることこそが、本当の成功者だ」という言葉が心の底から出てきたのです。

💡 結論:なぜディランの言葉は心に刺さるのか?

ディランは、誰かを感動させようとしてカッコいいセリフを狙ったわけではありません。

世間が作った「常識」や「ルール」、そして「自分への期待」という鎖(くさり)を必死に引きちぎり、「俺は俺のままで生きるんだ!」と戦い続けた男のホンネの言葉だからこそ、何十年経っても私たちの心に深く刺さるのですね。

ボブ・ディランは2016年にノーベル文学賞を受賞しましたが、その受賞をめぐって「なぜ歌手が文学賞をもらうんだ?」という大論争と、彼が起こした前代未聞のドタバタ劇が世界中で大きな話題になりました。

ディランとノーベル賞の間に起きた、おもしろい歴史を分かりやすく紹介します。

1. なぜ「歌手」なのに文学賞をもらえたのか?

ノーベル文学賞は、ふつう小説家や詩人に贈られる賞です。歌手が受賞するのは歴史上で初めてのことでした。

  • 選ばれた理由:ノーベル賞の委員会は「アメリカの偉大な歌の伝統の中に、新しい詩的な表現を作り出したため」と発表しました。

  • 歌詞は「詩(文学)」である:彼の書く『風に吹かれて』などの歌詞は、単なるアイドルの歌ではなく、何百年も読み継がれるべき「一級品の詩」として認められたのです。

2. 受賞が決まったあとの「大沈黙」

受賞が発表されると、世界中が大騒ぎになりました。しかし、主役のディランは完全に無視を決め込みました。

  • 電話に出ない:ノーベル賞の偉い人たちが何度電話をかけても、ディランは一切出ませんでした。

  • ライブでも一言も触れない:受賞発表のその日の夜もいつも通りライブを行いましたが、ステージでノーベル賞について一言も話しませんでした。

  • 世界中がハラハラ:あまりの無視っぷりに、委員会の一人が思わず「無礼だ」と怒ってしまうほどで、「もしかして受賞を拒否するのでは?」と世界中がハラハラして見守りました。

3. ようやく口を開いた理由

発表から約2週間後、ディランは突然「賞をもらうよ。驚きのあまり言葉が出なかったんだ」とあっさり受け入れました。

  • 授賞式はドタキャン:しかし、12月にスウェーデンで行われたきらびやかな授賞式には「先約(スケジュール)があるから」という理由で出席しませんでした。

  • 代わりに友達が歌う:ディランの代わりに親友の歌手パティ・スミスが出席し、ディランの曲を歌いましたが、緊張のあまり歌詞を忘れて途中で止まってしまうというハプニングもありました。

4. 賞金をもらうための「宿題」

ノーベル賞をもらうには、「受賞記念の講演(スピーチ)」をしなければならないというルールがあります。これをやらないと、約1億円の賞金がもらえません。

  • ギリギリで提出:ディランは期限のわずか数日前になって、こっそり録音したスピーチの音声を提出しました。

  • スピーチの内容:その中でディランは「自分の歌が『文学』なのかどうか考えたこともなかった。でも、僕の歌を文学だと認めてくれてありがとう」と語り、大人の対応で締めくくりました。

まわりがどんなに歴史的な偉い賞を用意して大騒ぎしても、ディランは決して自分からすり寄ることはしませんでした。「賞をもらうからといって、俺は偉そうな態度もしないし、自分のペースは崩さない」という、どこまでも自分を貫くディランらしいエピソードです。

ボブ・ディランと彼の名曲『風に吹かれて』、そして彼の生き方について、これまでの内容をギュッと分かりやすくまとめました。

1. 曲のまとめ:『風に吹かれて』とは?

  • 歴史的なアンセム:1963年に発表され、戦争や黒人差別へ抗議する人々のシンボルとなったフォークソングです。

  • 9つの問いかけ:「なぜ大砲の弾が飛び交うのか?」「なぜ見て見ぬふりをするのか?」と、人間の弱さを責める「なぜ」が繰り返されます。

2. 言葉のまとめ:「答えは風に吹かれている」の意味

ディランが「答えは風の中にある」と、あえてはっきり言わなかった理由は3つあります。

  • 答えは目の前にある:空気のように当たり前にある真実から、大人は目を背けているだけ。

  • 簡単にはつかめない:平和への答えは、風のように形を変えるから、考え続けなければならない。

  • 自分で考えさせるため:お説教をせず、聴いた人それぞれに「君はどう思う?」とバトンを渡しています。

3. 生き方のまとめ:なぜディランの言葉は響くのか?

  • 自分を貫く名言:「自分の真似もするな」「やりたいことをやれる人が成功者」など、世間の期待やルールを嫌い、常に新しく生まれ変わろうとしました。

  • 前代未聞のノーベル文学賞:2016年に歌手として初めて受賞。しかし、連絡を何週間も無視したり、授賞式をドタキャンしたりと、世界中の偉い人たちに一切こびない姿勢を貫きました。

ボブ・ディランは、「答えを教えてくれるリーダー」ではなく、「私たちに『なぜ?』と考えさせる風のような表現者」だからこそ、今でも世界中で尊敬されているのですね。

ボブ・ディランがこれまでに作った曲(作詞量)は、公式に発表されているものだけでも600曲以上にのぼります。 

未発表のスケッチや、若い頃に書いた断片的な詩なども含めると、実際には1,000曲から2,000曲近くの歌詞を書いているのではないかと言われています。 

彼の凄まじい「作詞量」と「言葉の特徴」を、わかりやすくいくつかのポイントで紹介します。

1. 圧倒的なボリューム

1962年のデビューから60年以上にわたり、彼はひたすら言葉を書き、歌い続けています。 

  • アルバム数:スタジオアルバムだけでも40枚以上を発表しています。

  • 文字数の多さ:普通のポップス(歌謡曲)のように「同じサビを何度も繰り返す」ことがほとんどありません。まるで物語や小説のように、次から次へと新しい言葉が溢れ出てくるのが特徴です。 

2. 代表作に見る「言葉の洪水」

ディランの作詞量の凄さは、曲の「長さ」にも表れています。

  • ライク・ア・ローリング・ストーン:当時の常識を打ち破る6分以上の長い曲で、ノートに何ページもびっしり書かれた言葉がそのままメロディに乗せられました。この手書きの歌詞ノートは、のちにオークションで約2億円で落札されました。 

  • 『ハイウェイ61リヴィジテッド』や『悲しみは果てしなく』:まるでマシンガンのように言葉を詰め込んだ、セリフだらけの曲がいくつもあります。

3. 未発表の歌詞が「別のバンド」のアルバムに

2014年、ディランが1968年頃に地下室の靴箱に残していた大量の「未発表の歌詞(セットにされなかった言葉たち)」が発見されました。 

  • ディラン自身はメロディをつけず、歌詞だけを書き残して忘れていたものです。

  • その作詞量があまりに素晴らしかったため、他の有名ミュージシャンたちが集まり、ディランの歌詞に新しく曲をつけるという特別なアルバム(『ロスト・オン・ザ・リヴァー:ザ・ニュー・ベースメント・テープス』)が作られたほどです。 

4. 2020年にも「17分の超大作」を発表

70代後半になっても彼の作詞のエネルギーは衰えませんでした。2020年に発表された『Murder Most Foul(最も卑劣な殺人)』という曲は、ケネディ大統領の暗殺事件をテーマにした約17分間、言葉が途切れることなく続く超大作です。

ボブ・ディランがノーベル文学賞をもらった最大の理由は、この「圧倒的な作詞量」のなかに、ギリシャ神話、聖書、アメリカの歴史、そして現代の事件にいたるまで、ありとあらゆる文学の要素がぎっしりと詰め込まれていたからです。

答えは風の中にある。

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小川孝 Takashi Ogawa Internetで執筆活動を重ねていき世界を席巻したいです。多様なジャンルの執筆を重ねていきますので是非支援頂ける方は宜しくお願いします。